第3話 入学

ノーチェ魔法学園の入学試験は魔法基礎六十分、白魔法と風魔法と火魔法、岩魔法と水魔法と黒魔法の六色を2つに分けてそれぞれ六十分ずつと歴史六十分、更に算術六十分、四試験の間にそれぞれ二十分の休憩を加えた計六時間の筆記試験となっている


六時間後、長きに渡る試験が終了し、やがて受験生たちが校門からゾロゾロと出てくる。


その様子は十人十色、手応えを感じ笑みを浮かべるもの、調子が出ずもっとやれたはずだと悔やみながら帰る者、全て出し切った魂の抜けた様な表情でフラフラと歩く者。


少なくとも十数分前まで書いていた答えの数々で多少なりとも人生が左右されたのである。


三名は互いに顔を合わせることなく、宿に戻りその日は寝た。


そして当日、多くの受験生が己の氏名と受験番号の書かれた受験票を手に、未だ何も張り出されていない掲示板の前でひしめき合っている。


やがて職員が簀巻きにされた紙を脇に抱えて現れ、受験生達の間に溜まっていた僅かなざわめきを消し去った。


そして職員が紙の四隅を板にめ、受験生たちはその紙を食い入るように見つめ、数瞬の後誰かが叫んだ。




「満開の桜、木々の新緑、雲ひとつない青空から降り注ぐ陽の光が新入生を祝うこの日に……」


キューション・アルメタジオーネ、ミーティア・シュバレリィ、コスタルジオーネ・F・クローバーノーチェ魔法学園入学試験、合格。


「魔法暦四千年という節目に〜……」


現在はその入学式の最中、学長先生の長い話でさえ新入生にとっては説法と同じほどの有難みを持つ。


と、この辺りでノーチェ魔法学園について解説していくのぜ、よろしくお願いするわ、ゆっくりしていってね!


と、冗談パロディも程々に、ノーチェ魔法学園は三国の国境の境に存在する魔法関係最大の教育機関である、今年で初代学長のラーディクス・クレアシオンがノーチェ魔法学園を創立してから3990年経っておりここまで来るとおじいちゃん校というよりのじゃロリ校の域である(残念ながらこの物語にのじゃロリは出す予定は無い!)


とさっき喋っていたのがこの学園の現学長、大魔法使いのヴォリジェント・ヴェーQ・ウォーモ、この学園の元生徒であり当時は最強の魔法使いなどと呼ばれていたが、現在は70歳を越えたおじいちゃんである。


総生徒数は約二万人、十五歳から十九歳までの約五年間を過ごす、全寮制の学校である。(飛び級制度有り)


魔法学園を囲む三国、オーラダディストロジャーレ帝国、ルナピエナ宗教国家、ヴェステダルジェント王国というのだが、それらについての説明はまたの機会に。


そして学長の祝辞が終わり、新入生代表の挨拶、学長の孫で実力が高すぎて入学試験をスキップしたウォーペという新入生、他の新入生の中には納得がいかないものも居るが、自分には関係ないとそれを堂々と口に出すものはいない。


新入生達は魔力測定に移り、その後通称的当てと呼ばれる皆様ご存知のあれを行う。


ノーチェ魔法学園の魔力測定は先ず一つ目の水晶玉で白魔力と黒魔力の比率を測定し、次に二つ目の水晶玉で魔力量を測定する。


二つの水晶は魔力を受けると発光する性質があり、一つ目の水晶玉の色を測り、二つ目の水晶玉はその光量を測る。


新入生達は何列かに分かれた魔力測定の列に並ぶ、最初はミーティアから。


ミーティアが水晶玉に手をかざすと水晶玉は一秒程黒と白の光を織り交ぜて発していたかと思うと次第に色が安定し在校生と思わしき水晶玉の向こう側に座っている人物がカメラのような装置で色を記録する。その後ミーティアを二つ目の水晶玉へと案内した。


クローバーも同様に。


そしてアルメタ、アルメタが手をかざすと、今起こったことをありのまま書くのなら水晶玉はみるみる黒く染まり、辺りに黒色の光を撒き散らす、ブラックライトだとかそんなちゃちなもんじゃ断じてなく、周囲の明るさを全て連れ去っていくような、黒色、何を言ってるな分からねぇと思うが、俺も何を言ってるのかさっぱり分からねぇ、日本語の恐ろしい片鱗を味わったぜ。


「わっ凄い、ほんとに黒色だ〜!」


生徒会の腕章をつけた在校生が反応する。


「いやー黒魔力しか持たない子が入学してくるって話題だったんだよー。」


「えー!そうなんですね、嬉しいです!」


アルメタが見事なまでの営業スマイルで返す。


隣の水晶玉を担当しているこちらも腕章をつけた在校生がへーどれどれと覗き込んでくるが、先輩仕事してください!と一括され、そそくさと戻って行った。


アルメタは奥へと進み、そこにある水晶玉に手をかざす。すると水晶玉は強く光り、水晶玉がセットされている機械の数値が水銀入りの体温計のように上がっていく。


「すごいね、ここまで多い人は結構珍しいよ。」


アルメタはそれに嬉しそうに返す。


ちなみにアルメタは黒魔力しか持たない代わりに、その量が多く一般的な魔法学園生徒の約4.5倍であり、これは魔法学園生の上位15%に当たる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『オーラダディストロジャーレ帝国』


ノーチェ魔法学園の東に位置し、北にドワーフ族の住む山岳地帯があり、ドワーフとの関係も良好、南東にエルフの住む森があるが、250年程前の戦争により、関係は最悪

実力主義、努力主義の面が強く、見た目や人種での差別はあまりない。

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