迷路の中の目
ミエリン
迷路の中の目
ある小さな町に住む少年・太郎は、幼い頃から不思議な才能を持っていました。彼は迷路を見ると、ただ一つのルートが浮かんでくるのです。その才能を活かし、太郎は町の人々から「迷路の王子」と呼ばれる存在となりました。
ある日、太郎は町の外れにある古い廃墟で事件が起こったという噂を聞きました。好奇心旺盛な太郎は迷路を作る楽しさを忘れ、その廃墟へ向かいました。
廃墟に到着すると、太郎は様々な謎めいた光景が目に飛び込んできました。廃墟の中には奇妙な模様や絵が描かれ、さながら巨大な迷路のようでした。
太郎は興味津々で廃墟を探索し始めました。廃墟には奇抜なカラーリングの扉があり、太郎はその一つ一つを開けていくことにしました。
廃墟の迷宮の中に足を踏み入れると、次第に懐かしさを感じるようになりました。どこかで見たことのある光景、あるいは聞いたことのある音が彼を包み込んでいくのです。
しかし、太郎が楽し気に迷宮の中を進んでいくと、迷路の壁に幽霊のような独特な存在を見つけました。それは窓から見えるような人の顔ではなく、何か違うものでした。
太郎は驚きながらも、その存在を追いかけることにしました。次第に彼がたどり着いた場所には、つい先ほどまで彷徨っていた「幽霊」が立っていました。彼は太郎に向かって微笑みかけました。
太郎は幽霊と話し始めました。「あなたは何者ですか?なぜこの迷宮にいるのですか?」
すると、幽霊はしんみりと語りました。「私はこの廃墟で亡くなった者たちの魂です。彼らはこの迷宮に閉じ込められ、進むべき道を見失ってしまったのです。」
太郎は驚きながらも、迷宮自体が彷徨っている人々の魂で成り立っていることを理解しました。
幽霊は続けました。「あなたの迷路の才能を使って、私たちを導いてくれませんか?私たちは迷路の中でただ彷徨うだけではなく、選ばれし者が導いてくれることで救われます。」
太郎は恐怖と戸惑いを感じつつも、幽霊の言葉に心を動かされました。彼は迷宮の中の目として、救われるべき魂たちを導くことを決めました。
それからというもの、太郎は廃墟の迷宮に足繁く通うようになりました。彼は見失った魂たちを一つ一つ救い出していきました。
迷宮の中を歩き回り、足跡を残していくうちに、太郎も次第に自分自身の正体を見失っていくのです。彼はやがて自分が本当に何者なのかわからなくなってしまいました。
しかし、迷宮の中の目、迷路の王子としての役割を果たしながらも、太郎は心の奥底で迷宮に囚われていた自分自身を模索し続けました。
迷宮の中で出会った魂たちも、太郎の努力によって少しずつ光を取り戻していきました。そして、最終的には彼らが救われ、平穏な日々を取り戻すことができるようになったのです。
太郎は自身の存在意義を見つけられずに迷っていた頃から、この迷宮の中で託された使命を果たすことができたことで、自己の確立を得ることができました。
廃墟の迷宮は太郎にとって苦難の場ではありましたが、同時に彼の成長と希望の場でもありました。彼は迷路の王子として町の人々から讃えられるだけでなく、自己の探求と成長の旅を経験したのです。
迷路の中の目 ミエリン @mie0915
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