第16話:浮気されて…
この頃、既読無視し他のことをやるようになってきた絵星。当初、夢叶はほっといてゲームをしたり、アニメを観たりしていた。だが、たまにははっきり言わないと本人のためにもならない。そう思った彼女は、その時が来るまで待っていた。
1月中旬。その時は、間もなくやってきたのだ。普段と変わらずLINEで会話していたが、既読がついたまま暫くの時間、絵星から返事が来なくなった。
(またかよ……っ)
夢叶はそう思い、LINEから離れTwitterを開く。そうすると、絵星が今開催中のスマホゲームのイベントに参加し、現状報告をしていた。
(みーつけた)
LINEに戻り、説教の始まりだ。
『ついさっき、Twitterにいたよね? こっちよりゲームの方が大事? まだ話終わってないんだけど。終わったら好きにしていいから』
LINEを送って約1時間後、絵星から返事が来る。
『ごめんなさい……』
絵星はこれ以上、何も言えなかった。自分が監視されているように見えて。
そんなことが度々ありながら、1月の終盤を迎える――
☆☆☆
ある日夢叶は今晩、絵星にゲームの協力プレイをやろうと約束をしていた。
『これから仕事行く。帰ってくるまで待っててね』
行く前にLINEを送り、家を出た。絵星は分かったと返事したが、その後夢叶が仕事中にまた、失態を起こすことになる……。
夢叶はいつもと変わらず、仕事をこなしていた。バレンタインまであと半月ぐらいと迫っており、多くのお客さんがスーパー内の特設コーナーにて足を止め、興味津々な様子が見受けられた。
(去年は付き合う前だったから何もしてなかったけど、今年は何か作ってあげなきゃ)
お客さんの様子を見て、今から楽しみにしていた夢叶。この日の仕事が終わり帰宅すると先にTwitterを開いた。最近LINEより先にTwitterを開く癖がついてしまった。
(……はい? 何で?)
そこに見えたのは、信じがたいものだった。
かつて『夢叶さんが羨ましいです!』なんて言っていた学生バイトの子が、
『夢叶さんの代わりに、私と組みませんか?』
と誘い、絵星が快く承諾して一緒にゲームをしたという報告が彼女のTwitterアカウントから流れていた。というのも、大学の多目的ホール内で絵星とばったり会っていたみたいだ。彼女は現在大学2年生で同じ大学に通っていることは知っていたが。
それに、誰かに撮ってもらったのか腕を組んでいる写真もアップされていた……。
LINEを開くと彼女から謝罪の言葉が来ていた。
『大学で夢叶さんの彼氏さんと偶然会ったんです。寂しそうにしていたので何かお力になれないかと、ついこんなことに……。分かっていながらこんなことしてしまって、本当にごめんなさいっっ!』
彼女は正直に話してくれたから、すぐ許す気になれた。だが絵星から『分かった』の返事以降、案の定何も来ていなかった。誕生日以来の怒りがこみ上げてくる夢叶。
「待っててねって言ったよね? 何で私の可愛い後輩に手出してんの?」
だが、夕食中なのかすぐには絵星から返事は来ない。仕方なく夢叶も夕食にすることにした。
絵星から返事が来たのは、夢叶がお風呂を終えてからだった。
『遅くなってごめん。夢叶の後輩の女の子とあれやったのは事実だ。待つの我慢できなくてごめん。あと……浮気して、ごめん』
これは間違いなく浮気ともとれる行動だった。絵星自身も認めていたが、夢叶は2度も同じことはないと信じ、ある提案をする。
『明日休みだから、時間見つけて一緒にやろっか。約束守ってくれたら許す』
誕生日の件もひっくるめて、夢叶は優しすぎるかもしれないと思っていた。でも、初めて本気で好きになった男、絵星との関係を続けていきたかったのだ。
――絵星という、《大切な存在》を失いたくないからだ。
数日後、絵星に悲劇が起こる。間もなく春休みに入るタイミングで、卒業に必要な単位の合計数が足りず、留年という措置を取られてしまったのだ。
絵星はそうなるだろうと覚悟はできていた。かっこ悪くてもいいという夢叶の優しさがあったからここまで来れていたが、逆に甘えすぎていたのではないかと考えるようになってしまった。
(今まで、夢叶に甘えすぎていたんだ。だから、何やらかしても許してくれると思ってた。そんなんじゃ俺自身がダメになってしまうかもしれない――)
絵星は苦渋の決断を強いられることに。
「これ以上夢叶に迷惑かけたくない。だから、別れた方がいいんじゃないか?」
LINEを送り返事を待つ間も、絵星にとっても辛すぎるものだった。
――それだけ、夢叶を愛しているからだ。
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