第4章:三角関係勃発

第11話:一緒にいるために

 9月に入ったある日、市内の水族館でデートをしていた夢叶と絵星。一通り回ってからイルカショーを見ることにした。


 絵星の大学生活最後の夏休みは来週いっぱいで終わる。お互いに都合がつくうちにゆっくりお話するのも兼ねて、水族館へ行くことになったのである。


 だが9月になっても、まだまだ暑い。涼しさを求めにたくさんの人が見に来ていた。


「平日なのに、けっこういるんだな」


「だねー。子供連れもいっぱいいるし」


「いい天気になったのはよかったけど、暑いねぇ。早く始まらないかしら」


 汗ばむ陽気の中、イルカショーが始まった。水しぶきが少しかかり、多少は涼しく感じた2人だった。ショーが終わり水族館を後にしてから、カフェで昼食をとることに。


 注文したものが届くまでの間、先に口を開いたのは絵星だ。


「そういえば月輝が、やっと夢叶に告ったって言ってたんだよな」


「そうなのさ。びっくりしちゃって……。何て言えば分からなくて、そうなんだぐらいしか返事できなかった」


「いずれは夢叶本人にはっきり言って、思いっきり当たって砕けようって決めてたんだと。月輝がホントに砕けたのかは分からんけど、決して邪魔はさせないし夢叶に指1本触れさせないから」


「ふぅ……言われてからずっと気になってたんだけど、絵くんのおかげですっきりした!」


「あの時は月輝にも怒られたよ。何してんだって」


「そうだったんだ……でもまあ、当然だよね。本気で心配してくれるがいてよかったね、絵くん」


「ああ、そうだな」


 今日は平日だし、月輝は仕事で日中は何も連絡がないのは当然だ。この時夢叶は何も心配いらないと思っていた。絵星も同じだ。


 昼食を食べ終わってから、2人は近頃話題の新作アニメ映画を鑑賞するため、映画館へと向かった。前の時のように、月輝と出くわすこともない。


(絵くんについていけば、なんてことないよね……!)


(月輝が何か企んでる可能性も否定できない。夢叶と一緒にいるために、全力で守らんと……!)


お互いに新たな決意を込め、手を繋ぎ歩みを続けていく――


☆☆☆


 その後も月輝ともLINE上で話すことが続いたが、夢叶は特に態度を変えることなくやり取りを続けていた。そんな生活が続き、絵星の夏休みが終わろうとしている。絵星は明日1限目から行くため早々と寝たが、それを待ちわびたかのように月輝からLINEが来た。


『夢叶さん、今大丈夫?』


「うん、絵くん明日朝から大学行くからってさっき寝たけど」


絵星が寝たと知って、月輝は小さくガッツポーズをしていた。


『絵星って寝るの早いよねー。夢叶さんも思ってるかもだけど。それは置いといて少し……電話してもいい?』


夢叶が返事をしたと同時に月輝から電話がかかってくる。びくっとしたが落ち着いて電話に出る。


『やっほー、突然ごめんね』


「大丈夫、寝るまでまだ時間あるし。それで、どうしたの?」


『……やってないよね? 絵星と寝落ち通話』


夢叶は痛いところを突かれたと思ったが、確かに絵星は寝るのが早い方だ。どうしようもないのだが、1度はやってみたいとは思ってはいた。


 夢叶は一呼吸おいて、やってないことを認める。


「やってないね、寝るの早いし」


『そうだよね。練習相手として……俺とする?』


「れ、練習相手……分かった、そうします」


電話を繋げたまま、先に寝てしまったのは夢叶だ。寝たのを確認して、月輝はこう呟き、眠りにつく。


『……大好きだよ、夢叶さん』


 翌朝、夢叶が起きると既に電話は終わっていた。


『おはよう。俺のお願い聞いてくれてありがとう。これから仕事行ってくるから、また後でゆっくり話そうね』


月輝からのメッセージには、こう残されていたのだった。


 その一方で、夏休み明け初日を迎えた絵星は、佑仁と共に大学へと向かう。


「今日からテストが返ってくるだろ? 今回はわりと自信あるんだよねー。絵星はどうだ?」


「おう、俺もそうだな」


 だが、これまで順調に単位を重ねてきた絵星に危機が迫る。


(何で? 全然点数悪い。毎回欠かさず講義出たはずなのに……)


初日で4科目のテストが返ってきたが、この時点でもう、雲行きが怪しい……。

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