第6話:リベンジのはずが……
5月に入り、念願の初デートを果たした。
場所は映画館。絵星が観たい作品があり、夢叶も興味を持ち同行することになった。連休中なのもあってか、映画館は多くの人で賑わっている。
「人、いっぱいだね。今朝テレビでやってた、映画ランキングで新作1位になったのも頷けるよねぇ……」
「そうだな。早くしないと、いい席取られるぞ?」
チケット購入の列に並び、隣になるようにチケットを買った2人。買い終わると、後ろから聞いたことがあるような声がした。
「あれれ~? 偶然ですねぇ。そちらのカップル様」
その声の主は、月輝だった。
「ん? 何だ月輝かよ……。本当に偶然だなおい」
「月輝くんまさか……席、私たちの隣……とか?」
「夢叶さん、勘が鋭いねぇ。そうだよ~? 後ろの方が見やすいからさ」
「そりゃ、俺らもそうだけど」
夢叶は絵星の言うことに黙って頷いている所、月輝は2人を睨んでいるように見えた。
月輝が乱入し、デートとは言い難い雰囲気になってしまったが、そのまま3人で映画鑑賞した。夢叶が買い物で席を外している間、月輝の本音がこぼれる。
「君らが羨ましいんだよ、正直」
「何でさ?」
「夢叶さん、めちゃめちゃ可愛いじゃん。前ばったり会った時、そう思ったよ。そして、めちゃめちゃいい子じゃん。あんな人が、絵星の初めての……彼女」
「何か文句あんの?」
「ないよ。LINEでもけっこう話してきたけど、そう思っただけだよ。夢叶さんが戻ってくるまでに、これだけは言う」
「何だ? 夢叶には黙っとくから、教えておくれよ」
「……夢叶さんのことが、好き。でも、叶わないの分かってるから、君らのこと応援するよ」
夢叶が戻ってきた。3人揃って昼食をとることに。
絵星と月輝がさっき観た映画の内容について盛り上がっている中、夢叶は注文したご飯が届くのを待ちながら、スマホを見てため息をついていた。
(いつまで付きまとってくるんだろう……)
絵星に肩を叩かれ、我に返った夢叶。
「夢叶? 映画、面白くなかったか?」
「ううん、とっても面白かった! ハッピーエンドになって、ほっこりした作品だったよ!」
「そうだよね! 夢叶さん見る目があるねぇ?」
「そうかな? また、観てみたいかも?」
夢叶は一旦スマホから離れ、届いたご飯をゆっくり味わって、絵星と月輝の2人といっぱい話して、何とかその場を乗り切った。
昼食後、夢叶と絵星はゲームセンターへ向かうが、月輝の同行はここまでのようだ。
「2人の邪魔しちゃ悪いし、俺はここまでとするよ。映画観れて満足してるし」
「そうか。なら、気をつけて帰れよ」
「……夢叶さん、絵星。これからずっと、君らのこと応援する。こうして出会えた仲間だから。その1人として、応援するのは当然でしょ?」
「ありがとうね、月輝くん。それじゃ」
こうして月輝と別れた夢叶と絵星は、ゲームセンターへ向かうのだった。
ゲームセンターに入ってすぐ絵星が目についたのは、とあるアニメキャラクターの寝そべりぬいぐるみだった。
「夢叶、こないだ新登場したやつあるよ。確か、推しだったよね?」
「あ、そうそう! うーん……クレーンゲームあまり得意じゃないんだけどなぁ」
「1回俺やってみるか?」
絵星はそう言って100円玉を1枚投入し、ぬいぐるみを目がけてクレーンを動かした。ぬいぐるみを一瞬掴めたように見えたが、すぐ定位置へ落ちてしまった。
「……あぁ、いいところだったんだけどなー」
「次、私やるよ」
得意じゃないと言っていたにも関わらず、夢叶は100円玉2枚でお目当てのぬいぐるみをゲットしたのだ。
「えっ!? すげぇ……200円で取っちゃうなんて」
「い、いやぁ……これは偶然だよ、偶然。ね、絵くん」
その後一緒にリズムゲームをやった2人が次に向かった先は、アニメのグッズ屋さんだ。
「あ、これじゃないかな? 絵くんが欲しいって言ってたもの」
「そうだよー。事前予約できなかったから、もう手に入らないんじゃないかと思ったよ……」
「私の推しもあるから、ついでに買っていこうかなぁ」
夢叶と絵星はキャラクター違いのストラップをそれぞれ手に取り、隅から隅までゆっくり中を回ってから購入した。
初デートは天気に恵まれ、何もトラブルなくこのまま終わりそうだ。
「今日はありがとう。月輝とばったり会うなんて思ってなかったけど、まぁそんなこともあるよな」
「そうだね。こちらこそありがとう。すごく楽しかったよ!」
こうして、別れるまで手を繋ぐ。
しかし、夢叶が目に見えるところまで、SNSにある人物の影が見えてきてしまっている――
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