♯02(後編)魔女の末裔 Ⅱ
俺は入り組んだ裏路地に入り込んで行く、相手はまだ後を追って来ている…その姿が一瞬だけ見えた。フードを被っていて顔は良く見えないが…女、だよな?……
「…お嬢さん、出てきて良いよ。どうせバレてるんだ」
「ふふ、気付いてましたか…貴方は一般人ではない様ですね」
曲がり角から姿を表したのは、やはりフードの女性だった。だが、潔く出てきたとなれば暗殺者ではなく、同業者か?…
「…誰に依頼された?…目的は俺か?」
「今日は下調べのつもり、だったのですが…」
ふと違和感に気付く、初めて会った気がしないのだ。何処かで会った事があるのか?まさか日本にいた時の…いや、それは無いよな…俺の顔も、声だって変わってるんだ。
「…俺、お嬢さんと何処かで会ったかな?」
「さぁ、会ったかも知れませんし…会った事が無いかも知れません。まぁ、どちらにせよ、貴方は此処で死にますが、ね?」
女は懐から銃を取り出し、俺の
「おいおいっ、随分とせっかちじゃないか!」
俺も懐から二丁の銃を取り出す──超高駆動式銃『
その銃口から放たれた弾丸は女の両肩を撃ち抜く…──筈だった。
「なっ…──そんなのアリかよ!?…」
女は早撃ちの弾道を外れ、逆さに宙を舞い、俺の身体に弾丸を撃ち放つ。
慌ててそれも躱す。銃弾は俺の横にあったパイプ管に風穴を空け、水を吹き出させた。
見た目は普通のスマートガンだったが、躱す時に右目で補足した弾丸は一般的なショットガンと同口径だ。その銃声は普通の拳銃と大差無く、重弾だと気付かなかった。
「…ふふっ凄いでしょ?音は余り出ない様にしてあるのですよ」
そう言いながら、噴水の様に吹き出る水の隙間から女が銃を構えるのが一瞬見えた…──吹き出る水の音に掻き消された銃声は3発、正確な位置は頭、左胸…最後は分からなかったが2発を躱し、更には脚に飛んで来た弾丸もギリギリで躱し足を掠めた。
「貴方は右目の視力と聴力を拡張しているのですね、それを除いても見事な身体能力で素敵です」
俺は組織に居た頃に身体の色んな箇所を拡張している。あのチンピラの不意打ちの弾丸躱したり、
…だが、何故か今日はいつもより身体が軽かった。それでもやはり3発目を躱しきれず拡張した脚が少し削れていた。
「お褒めに預かり光栄だよ。ついでに、その素敵な男を見逃してくれると嬉しいかな?」
「ご冗談を、こんな素敵な方を殺さないなんて…失礼ではありませんか」
…流石に話し合いは無理そうの手合だ。しかし、何故コイツは俺を狙って来るんだ?あまり揉め事は起こしたくないが、命を狙われてんだ…そうも言ってられない。
「仕方ない…なら今度はこっちの番だ。悪いけど、次こそ当てさせてもらうぞ!」
俺の放った銃弾の一発は女に向かって一直線に軌道を描いていく──……。
「そんな単調な射撃で私が仕留められるとでも?…」
当然、女は何無くと弾丸を躱すが…もう一発の弾丸が女の横腹に命中する。
「ふっ…ハハッ!
俺が放った銃弾は壁を反射し女の身体に命中したのだった。しかし……
「あははっ、凄いですよ!貴方ァ!その銃の腕は認めて差し上げますっ!」
全く効いている気配が無いぞ…まさかコイツも
「…という事で私も本気で貴方を殺さなければならない様です、ねっ!」
そう言って女はグッと距離を詰めて来る。その手に握られているのはコンバット仕様のナイフだった。
マズいな…距離を詰められたら正確な射撃が出来ない。
「あははっ、その銃はORUBAの品ですかぁ?」
コイツ、俺の組織を知っているのか!?道理で動きが尋常ではない訳だ。しかし、それならこれは何処かの組織絡みの依頼か?まさかORUBAが俺が生きてる事を知って…──。
女は正確にナイフを打ち込んで来る。俺はそれに対応して女のコンバットナイフを蹴り飛ばす。
「ふっ…これで、丸腰だなッ!」
「甘いですよ!ORUBAのワンちゃんッ!」
向けた銃口をギリギリで逸らされる。そして正確な攻撃が俺の腹にねじ込まれ、俺は咄嗟に距離を取り地面に膝を着く。
「ッ…痛いじゃないか…あんまり乱暴すると、男にモテないぞ?」
「私はこの逢瀬だけで間に合っています。さぁ、愛し合いましょう」
コイツは銃の腕だけではない、CQC…──近接戦闘の技術も心得ている。寧ろ俺にとってはそっちのは方が堪える。
「…一つだけ訂正させてもらって良いか?」
「何ですか?ORUBAのエージェントさん」
「俺はもうORUBAの所属じゃない…今は一人の心優しい少女のお節介焼きさ」
「…はぁ、愛し合っている女の前で他の女の事を口にするのは感心しません、ね…」
女は再び銃を構えて俺の頭に放つ。俺はそれを咄嗟に躱し、横に移動するが…その弾丸は俺の左肩に命中する。
「…──貴方、それは?…」
女の目線の先は俺が撃たれた左肩に集中していた。撃たれた傷口から黒い煙が上がっている。そして、その傷は黒煙の消失と共に再生していた。
驚きはしたが、事故の怪我が修復した事もあり、すんなりと俺は受け入れていた。
これが使い魔になった結果なのか…気づけば抉られた脚の拡張部位も新品同様だった。なるほど、人間を辞めたのに相応しい恩恵じゃないか…
「まぁ、じゃあ今度はこっちから行かせてもらうかな…」
俺は女に向けて銃弾を撃ち放つ──そして更に壁へと二つの跳弾を図る。
「あははっ!貴方、最高ですよッ!」
しかし、女はアクロバティックにそれを躱して、再び俺との距離を縮めて来ようとするが…今度はそうはさせない。俺も足元に弾丸を配置する様に撃ちながら距離を取る。
「っ…貴方の名前を聞いておきましょう!」
「橘晴一郎…──ジャパニーズガンマンってやつだよ」
それでも距離を詰められた俺が放った弾丸は女の腹と脚を撃ち抜いた。
「がはぁっ…──あぁ、貴方の愛…確かに受け取りました……」
…──そして、バランスを崩した眉間にトドメの一発を打ち込んだ。
頭を撃ち抜かれた女は後ろに吹き飛んで地面に叩き付けられる
「…たくっ、モテる男は辛いなぁ…」
その身体がもう動く事はなく、俺も崩れる様に膝を着く…でも、ここにたらマズい。いくらここの警察がロクデナシとは言え、これは言い逃れできない。
直ぐに立ち上がり、その場を後にする前に女の顔を確認しようとした時…
「ぐがぁぁ!?……」
腹部に強烈な痛みを覚える。自分の胸を見ると長い刀身が身体を貫いていた。それが引き抜かれたと同時に俺は膝を着いた。
「…はぁ、まさかまさかでしたよ…貴方も同類だったなんて驚きですね。」
振り返ると手からスラッと長刃を生やした女のフードは脱げて、素顔が
「お前っ…あの時の、ウェイトレスだったのか……」
あの時とは違い、後ろで結んでいた髪は下ろしているが…間違えない、レストランVaiorettoで最初に俺を迎え入れてくれたウェイトレスの女性だった。
「顔もバレてしまいましたし、もうあの店にはいられません…ねッ!」
「ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
女は刀身の生えた腕を振り下ろし俺の右腕を切り飛ばした。耐えきれず叫び声を上げて倒れ伏す。
「あはっ、これは運命という奴でしょうか?本当は別の目的があったのですが…少し貴方のせいで興奮してしまいましたよ。はぁ、これは失敗です…ねッ!」
女はそう言いながら俺の左脚に刃を突き刺して、ニヤニヤと俺を見て
「くあぁぁぁッ!…生憎と、運命の出会いは間に合ってるって…」
「あははっ!それは残念です橘晴一郎!…お別れは寂しいですが…今、楽にしてあげますね?」
そう言って女の刀身が俺の首に掛かる。このまま首を
「さようなら、橘晴一郎…──。」
そこで俺の意識は完璧に途切れてしまった。只、そこには暗闇が広がっていて…──しかし、そこに一筋の光が見えてくる。
「あら、貴方は晴一郎じゃない」
「お前は…マリアなのか!?」
「あら、見て分かるでしょ?貴方の知ってるマリア・ヨルベッタよ」
「…つまり、俺は死んだのか?」
目の前に一面の小麦畑が広がっていて、夕日で照らされたそれはオレンジ色に輝いている。ここは何処なのだろうか?…
「いいえ、まだ貴方は生きているわ」
まだ、生きている?…つまり、ここはあの世では無いのか?…だったら此処は?…
「…それで、ここは何処なんだ?」
「ふふっ、貴方は私との約束をちゃんと守ってくれたのね」
「…俺はここが何処なのか知りたいんだが?」
「…それは言えないわね。でも、私は貴方達のすぐ側に居るわ」
「マリア、それはどういう意味なんだ?」
「大丈夫、また会えるわ…──。」
光は遠ざかって行き、再び暗闇が支配した。しかし、直ぐに視界には光が照り付ける。
「…良かった、目を覚ましてくれた…」
「ん?これは……」
目を覚ますとミリアちゃんの顔が真上にある。どうやらさっきの路地で膝枕をされている様だ。
「使い魔の反応が消えて、慌てて外に出て、その場所に向かったら…そしたらお兄さんが倒れてて……」
「…あぁ俺、死んでいたのか……」
…だが、あの女に斬り飛ばされた首も腕も、傷も全て完治していた。
何となく事故の件もあったから、俺は不死身なんじゃとは思っていたが…これで確信に変わった。これじゃ人間辞めたというより、本当に化物だな……
「…大丈夫だ、もう立てるよ…」
俺はミリアちゃんの膝から身体を起こし、立ち上がる。それに合わせて彼女も立ち上がる。
「良かったんですか?一生に一度…してもらえるか分からない私の貴重な膝枕でしたが?」
「マジか、惜しい事をしたな…もっかいだけ……」
「もうダメで〜す。それにそんな軽口が叩けるんなら、本当に大丈夫そうですね?」
「え〜、そんなぁ……」
どうやらあの女は俺を殺して、あの場を後にしたのだろう…しかし、ミリアちゃんとあの女が鉢合わせなくて良かった。
「…で、誰にやられたんですか?」
「分からないが、Vaiorettoってレストランで働いてたウェイトレスだよ」
「何故、あの有名店であるVaiorettoのウェイトレスさんがお兄さんを狙うんです?」
「何か他に目的あると言っていたが…でも彼奴、頭に銃弾を撃ち込んでも動けたんだよ」
普通はORUBAが俺の生存に気付き差し向けた刺客があの女と考えるべきだが…あの女には別の目的があった。
それにあの女、頭や腹部、足に弾丸を撃ち込んだ筈なのに傷は治っていた。いったい何者なんだ?絶対に人間技じゃなかった…しかし、それには心当たりがある。
「…もしかしたら、彼女も使い魔なのかも知れません…」
「俺も同じ事を考えたんだが…つまり、ミリアちゃん以外にも魔女がいるのか?」
「…現状では分かりません、でも他にそんな事が出来る理由に心当たりがありません」
そう言えばあの女、俺と自分を同類と言っていた様な…まさかミリアちゃんの言う通り、やはりあの女も使い魔だったって事か?
「…まぁ何はともあれ、何とかなって良かったよ」
「全然良くないでしょ、お兄さんを狙った女は気になるし…相手の目的は分かってない。お兄さんが生きてるなら、また襲って来るかもしれません」
確かに他に目的があるなら、また何かアクションを起こして来るかも知れない。
ミリアちゃんの言う通り、俺が生きてると分かったらまた襲って来るかもしれない…何にせよ、常日頃から用心するに越した事は無さそうだな……
「大丈夫、注意はするからさ。それに俺って不死身みたいだし、ミリアちゃんは心配しなくて良いよ」
「…お兄さん、何でそんなにお気楽なんですか…少なくとも一度は死んだんですよ?」
「確かに死ぬほど痛かったけど…それよりミリアちゃんが無事良かった」
「はぁ、何言ってるんですか…あんな事があったんですから自分の心配をして下さい」
「ははっ、分かったよ。取り敢えず俺は日用品を買わなきゃ行けないから財布取りにマンションに戻るけど、ミリアちゃんも一緒に戻るよね?」
「はい、行きます。お兄さんを一人にはできませんから」
「じゃあマンションまで一緒に帰ろうか」
「あの…意味理解してますか?私も買い物に付き合うという意味なんですけど…」
「…つまり、デートって事か?」
「違いますが、たださっきみたいな事があった後なので…」
「ありがとう、ミリアちゃんは優しいね」
「優しくないし、恥ずかしい事を言うんじゃないです…」
まぁ優しいミリアちゃんが、俺を心配して着いて来てくれるらしいので、お言葉に甘えておいた。
「ミリアちゃん、疑問に思ってた事があるんだけど…」
俺は二人で並んで買い物に向かう際、気になっていた事をミリアちゃんに聞いてみた。
「お兄さん、何ですか?」
「俺はミリアちゃんの使い魔を代償にして助かったって聞いたけど、ミリアちゃんの使い魔ってどんな生物だったんだ?」
「…それが、私も見た事は無いんです。何と無く傍にいる事だけは分かるんですが…私には姿を見せないんですよ」
「私には見せないって…どういう事なんだ?」
「実は元々は母の使い魔で…その使い魔は私を守ってくれていると、幼い頃に母から聞かされました」
お母さんって事は、マリアから聞いたのか…って事は、やっぱりマリアも魔女の末裔だったって事だよな?…まったく、不思議な縁だよなぁ…
「…だから、見えなかったって事か?」
「いえ、先程も言いましたが、見せなかったんだと思います…私を使い魔さんは認めでいなかった。それに、使い魔さんには申し訳無い事をしたとは思っています…」
「…そうか、使い魔を代償にしたんだよな…」
「はい、人の命を助ける為とはいえ、自分を幼い頃から守ってくれていた使い魔を犠牲になんて…」
「…きっと大丈夫だよ、使い魔は別にミリアちゃんの事を恨んじゃいない。使い魔になった俺が言うんだから間違えない!」
「…そうなの、かな?」
「そうなんだよ。それより、魔女ってやっぱり魔法が使えるんだな?」
「まぁ、私が使えるのは少ないんですが…それに、お兄さんを助ける為に使った魔法は、本当に賭けだったんです…」
「…失敗する可能性も十分に有り得た訳か?」
「…はい、一回きりの賭けでした。私はこの魔法を使うのは初めてでしたし、私の使い魔が不死性をもっていなければ、お兄さんを助けられませんでしたから…」
「…ミリアちゃんは使い魔の正体を知らなかった訳だから、成功する可能性はかなり低かったって訳か…」
「はい、なのでそんな賭けにお兄さんを巻き込んでしまって…本当にごめんなさい」
「だから気にしないって、失敗しても恨まなかったし、実際に俺は助かってる訳だからな」
「…それでも、やっぱり気にしてしまうんですよ…あれは最善の策のつもりでしたが、もっと良い方法があったのではないかと……」
実際に俺はあのままじゃ、10分も経たずに死んでいただろう。早めに病院に運ばれても恐らく助かってはいなかった。
…だから、ミリアちゃんのとった行動は間違えなく最善だった訳だが……
「…考えても仕方ないさ、そんな結果論を模索しても生産性は無いよ」
「そうですね、お兄さんの言う通りです…」
さっきまで落ち込んでいたミリアちゃんの顔が少し明るくなった気がした。
「…ふと思ったんだけど、ミリアちゃんはどうやって魔法を覚えたの?」
「父と母と住んでた家の本棚に、魔法の使い方の記述された本があったんです。小さい頃は何気なく眺めていたんですが、気付けば内容を覚えてて…」
「じゃあ他にも…あれ?少ししか使えないって言ってたっけ?」
「はい、使い方は分かるんですが…何度試しても出来なくて…後、今使える魔法は幾つかだけです」
へぇ、魔法が載った本があるなんて、マリアもやっぱり魔女の末裔だったのかぁ…
「あのさ、前から言おうと思ってたんだけど…俺の事ずっとお兄さんって呼んでるけど何で?」
「私、人の名前とか覚えるの苦手で…それに他になんて言えば良いのか分からないんで、多分ですが歳上だろうしお兄さんで良いかと…」
「俺とミリアちゃんは、そんなに歳は離れてないと思うけどな」
「私、十八ですよ?お兄さんは何歳なんですか?」
「…ちなみに、何歳に見える?」
「…28歳くらいですかね?何となくですが…」
「…えっと、25なんだけど…俺そんなに老けて見える?」
「いや、25も28も変わらないでしょ。それにやっぱりお兄さんじゃないですか」
「俺はミリアちゃんに晴一郎さんって呼んでほしいな?」
「…はぁ、良いですよ」
「そうだよな、嫌だよな…──えっ?マジで!?」
「ふふふ、私が明日まで覚えていたらね!」
不敵に笑ったミリアちゃんと、それから何気ない会話をしながら以前に行ったショッピングモールに向かった。
「ん、そういや彼処に見えるデカい建物って…」
「あれですか、ラグナロクコーポレーションですよ。武器製造とかで世界的に有名な大企業ですね」
「へぇ、ヴィルべスタにもあったのか…」
「むしろヴィルべスタのラグナロクこそ本社ですからね!あそこの武器は素晴らしいので…ふふっ」
「そっ、そっか……」
意外とミリアちゃんって武器好きだったりするのかな?まさかガンマニアとか?……
その後は、会話をしながら日用品を買ってマンションに帰って来たのだが…何やら、上機嫌な蘭羽が入口の前で鼻歌を歌っていた。
「どうしたんですか蘭羽さん、機嫌が良いですね」
「いやね、こんな短い期間で入居者が2人も増えればねぇ…」
「ん?2人って…誰か新しい入居者が見つかったのか?」
そんな話をしていると、入口から誰かが出てくる。その人は俺の方をチラッと見て……
「ああ!テメェ、あの時のっ!」
「ん?お前は……」
出て来た女は初めて俺がヴィルべスタに来た時にゴロツキに絡まれていた少女だった。
「お前、こんな所で何してるんだ?」
「お前こそっ…あん時はアタシを良くも子供扱いしやがったな!」
「…お兄さん、知り合いですか?」
「あぁ、こっちに来たばかりの時に港の方で偶然会ってな…」
「おい、無視してんじゃねぇ!」
「もしかして、入居者ってこの子の事か?」
「あぁ、家出して来たらしくてな!他に行く場所が無いんだとよ」
「だからって、保護者の知らないうちに勝手に入居させるのはどうかと思うぞ?」
「まぁ、そうなんだけどねぇ〜…金払いが良さそうだったし…」
蘭羽のやつ…確かこの子、こう見えて上流階級の人間だっけ?…それより家出とか言ってたが、初めて会った時から思ってたが、ますます不良少女感が増したな。本当に勝手に入居させて大丈夫なのか?…治安が悪いんだから、誘拐と勘違いされたりしないだろうか?……
「お前、大丈夫なのか?親御さんが探してるじゃないのか?」
「あのクソ親父がアタシなんかを心配するかよ!てかお前、またアタシを子供扱いしただろ!」
「いや、だって子供じゃないか…見た感じ」
「お前、よっぽどブッ殺されてぇみたいだな…」
「…二人とも、同じ入居者同士仲良くしろ」
「その子の入居は確定してるんだな…」
すると、さっきまで話を聞いていたミリアちゃんが口を開く。
「…では自己紹介ですね。初めましてツインテールさん、私はミリア・ヨルベッタです。よろしく願いします」
「あ?ツインテールちゃんってもしかしてアタシの事か?…」
「俺は橘晴一郎だ、よろしくな、ツインテールちゃん」
「おいっ…アタシの名前はツインテールちゃんじゃねぇぞ…」
プルプルと身体を震わせた少女は、下を向いていたが俺達の方を睨み、口を開いた。
「アタシの名前はローラだ。ラグナロクウェポンズコーポレーションの次期CEOになる、ローラ・フランローズ様だ!」
ラグナロクウェポンズコーポレーション──それは先程、話題に出た世界屈指の大企業な名前だった。
♯02(後編)魔女の末裔 Ⅱ…──[完]
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