2.「名前…クロナっと…」



―うん、良い目覚め


やっぱちゃんとベットとか布団で寝るべきだわ、寝心地がレベチ。てか寝起きがレベチ。飛行機で何時間寝てもやっぱ休めねえんだよなぁ


帰って風呂入って寝て、休みまくった身体と脳は随分スッキリした。これならゲームに浸れるっ!



「15時か…ゲームは昼飯食ってからだな。弁当は、と…」



え、昼飯の時間じゃない?知るかんなもん。こちとらニートゲーマーだぞ?食いたい時に食って寝たい時に寝てそれ以外はゲーム尽くしじゃこの野郎


コンビニ弁当をレンジに放り込んで次にするのは、家の食料の確認

お菓子にスイーツ、パンにおにぎりに栄養ゼリーetc...ゲーム中に腹減ったらすぐ食べてすぐゲームに戻れるよう、軽食をベット横の机に置いておく。ゲームって意外とカロリー使うんだよなぁ


で、弁当を箸で啄きつつDLしたゲームを開いて準備。美味かったご馳走様!よしゲームの時間だ!



ヘッドギアを装着してベットに寝転がる。カチリとスイッチを押せば、真っ暗な眼前に光が刺した。



《ゲーム:Unlimitedを確認しました》


《初めてのワールドワーカー確認しました》


《プレーヤーネームをご登録ください》



真っ白な部屋の中、ピピッとゲームパネルが表示される。ってかワールドワーカー?世界中で働く…世界的社畜ってか?どんなブラック企業だよ



「名前ね…"クロナ"っと…」



ゲームに没頭するからこそゲームの中では全く違う別人になりたい…そういうプレーヤーも一定数いる。それはわかる。でも俺からすればなんじゃそりゃ、と言ったところだ。


ゲームに没頭するからこそ、ゲームという夢に浸れるからこそ、ゲームの中で生きる俺は"俺"でありたい!他でもない"俺"自身がゲームの中にいたい!

…それに"なんかそれっぽい"名前考えるのめんどくさいし



《クロナ様、アバターを制作してください》



名前を入力すれば、次に目の前に広がったのは無数のアバターパーツ画面。顔のパーツの種類はもちろん大きさ、位置、色etc...ありとあらゆるパーツが存在している。ここまで多くても誰も目を通さな……あぁいや、まあいるっちゃいるな…まあ凝る奴は凝るんだろうけどこちとら知らん。



「つっても名前はともかくアバターを自分にする気はさすがに起きねえんだよなぁ」



『戦う男のポニーテールはロマンでしょ!』とマイルールを振り翳すバカ

『黒髪に白メッシュめちゃ映えで似合いすぎじゃありません?』とか宣うバカ

『瞳は黒か白に逆色のハイライト!銀とか灰色でも…あ、オッドアイもあり!』とか厨二病全開バカ

『カッチリした服装で戦うギルマスまじイケメン!あでもゆるダボも良き!』とか結局結論出せねえバカ

『ジャラってるのは嫌だけどかっこいいアクセは必須!』とか意味不明なバカ

『バトルスタイル的に絶対紙装甲になるギルマス草なんですが』とかニート臭漂うバカ

『とりあえず全身黒一色だよね』とかなんかムカつくバカ



いつも通りバカどものバカな言葉を基準に適当なアバターを作る。ポニテ黒髪白メッシュの黒目に光…オッドアイは痛い。んで初期装備の服はそんな種類ないし…まあ黒で動きやすそうなのっと。

はい完成。所要時間5分



「ん、アバターいい感じ。あのバカどもセンスはあるんだよな」



《初期武器を選択してください》



次に出てきたのはステータス…ではなく武器設定

…なるほど、固定役職も初期役職もないから武器の固定もされないのか。自分のバトルスタイルに合わせてどんな武器を使ってもいいよ〜と…最高に俺好みじゃん



「ラインナップは…長剣,短刀,タガー,槍,棍棒,杖,銃,弓,日本刀,ハンマー,斧,両手剣,爆弾,トンファー,ナックル,針,魔導書…まじでなんでもありだな。どんなバトルスタイルでも歓迎ってか?」



ここまで多いとむしろ困る。バトルスタイルにこだわりが強いうちの奴らならまだしも、俺はなぁ…



「アイツらと被りたくはないし…てかアイツらの専属武器ドンピシャでありまくるのキモイし……ん、もういっその事王道の片手剣でいいか」



考えるの放棄!どうせどれもやってはみるんだし、まずは補正なしのゲームスキル依存バトルをじっくり味わうのもアリだろ



「名前OKアバターOK武器OK…ようやくスタートか」



目の前には《設定完了》の文字

白い設定部屋が、照明が落ちたように真っ暗に塗り変わる


その中で輝く新しい文字と、暗闇の奥から差し込む光



どんなゲームだって、この未知の世界が広がる感覚は胸踊る

さあ、"もう1つの現実"と呼ばれるまでのゲーム…スタートだ!




《Unlimited World へ ようこそ!》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る