1.「うん、楽しそう」


身体が硬い

ほぼ地球の裏側から座りっぱで帰ってきた身体はどうやら…というか想像通り固まってたらしい



「あ"ぁ"マジ眠いし身体痛いし…これだから外出嫌いなんだっての」



欠伸とともに身体を伸ばす。うん、すげえパキパキいってる



prrrr



「ん、誰?」


『繋がった!ってことは時間通り帰って来れたんすね、日本におかえりなさい先輩〜』


「あぁ茉白か、たでま〜」



名前も確認せずに開いた携帯から聞き馴染みのある声…ってかこんなジャストで電話掛けれるとか気持ち悪



『先輩今絶対「うっわこいつ気持ち悪っ」って思いましたよね!?アタシは単にゲームの状況報告をすぐにでもって思っただけですからね!?』


「思ってない思ってない。お前が気持ち悪いとか元々知ってたし、今更何も思ってねえよ」


『ちょっと!?』



うっるっさ…こちとら寝不足だってのに…



「で、報告ってーと…この前発売されたあれか?」


『はい、ゲーム名【Unlimited】

販売前から予約が殺到し、3ヶ月前の販売初日に速攻でどこの店舗からも売り切れ、未だに躍進し続けているゲームです』


「ふーん…"数値評価がない"なんて思い切ったゲームだし好き嫌い分かれそうって評価だったのに随分と高評価っぽいな」


『想像以上、ですよ。世界観,ストーリー,遅延,モーション,映像,音響…どれを取っても"正にリアル"って感じです。

発売初日のプレーヤーたちの反応は中々見物でした!』


「それはゲーム大会と被ったせいでスタートダッシュ切れなかった俺への当て付けか?」


『ぁ…ち、違いますって!高評価だったって話です!"メンバー"もほぼほぼ全員既にやってるんで先輩も早く!』


「分かってるっての…たく、大会さえ被ってなけりゃ俺もスタートから遊べたってのに」



…まあ、こればっかりは仕方ない。こちとらゲーム賞金で生きてる人間だ、大会で勝てなきゃゲームどころか人生終わる。…それでも3ヶ月は長すぎだろ…



『だから向こうで買えばって言ったんですよ〜?』


「海外からのデータ移しはめんどくせえ。それに…」



見上げた先は、帰国までに20回は見た壮大な煽り文句

《もう1つの世界へ、もう1人の自分へ、飛び込め》



「こんな盛り上がってるゲーム、別ゲームの時間潰しにやるなんざもったいねえだろ?

やるならとことん、だ。帰って仮眠取ってからじっくりやらせてもらうわ」


『はーい。ちなみに最初はソロで動きます?迎えに行ってギルド作ります?』


「は?お前らでギルド作ってねえの?」


『先輩いないのに作る奴いないですよ。ゲーム内で会うことはあってもプレイはソロですよ。だからその辺は先輩が必要になったら作ってくださーい』



相も変わらず主体性がないというか協調性がないというか…まあ集団戦得意な奴のほうが少ないしな…そういう奴らだからイイんだけど


でも、せっかく楽しいゲームに道案内は必要ない。



「あっそ、じゃあ遠慮なくソロで遊ぶわ。ギルドは…気が向いたらな」


『りょーかい、じゃあまたなんかあったら連絡お願いでっす』



嬉々とした声で通話が切れる…これ速攻プレイしに行ったなあのバカ



ま、リアルに近いもう1つのファンタジー世界ってのがあるならそりゃ沼るか。

さて…バスも来たし軽い説明文読みながら帰るか〜




「リアルファンタジー、ね…うん、楽しそうじゃん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る