第9話 飲み水を確保しましょう
私は
幸い、危険な生物にも毒を持つ虫にも襲われなかったようだ。
もっとも昨日から生き物どころか虫すら見つけていないのだが……。
因みに不確定な時間に起きたのは音を出すことの危険性を考えアラームを掛けなかったことと、思ったよりも疲れていたことが原因だ。
とりあえず腕時計を見ると12時を回っていた。
私は木の上でペットボトルのスポーツドリンクを一口飲み、ハッカ飴を一つ口に入れる。
因みに何故お茶ではなくスポーツドリンクかというと、エネルギー補充にはスポーツドリンクの方が効果的だと判断したのと、圧倒的に水分が足らなかったからだ。
吸収がお茶よりも圧倒的に早い。
人間は1日2~3ℓの水分補給が必要だと言われている。
それを100mlに満たない量で補おうとしたのだ。
単純に考えれば危険域を超えている。
まあ、改造された肉体が地球での肉体の常識に合うかどうかは別としてだが……。
ただ、身体に相当負担がかかっており、喉の渇きも地球での肉体と変わらないくらいなので、地球の肉体と構造は近いのだろう。
正直、十分水分補給が出来る場所を探さない限り詰む。
この段階で未だに倒れていないのは身体が強化されてるおかげだろう。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
とりあえずエネルギーの補充を終えた私は
今日はこの場所から更に移動する予定だ。
水を求めて、である。
特に何も用意をするものもないので、私は軽く身体をほぐした後、杖替わりの棒を片手に森の中を歩きだした。当然蔦梯子は外して確保済みだ。
目についた物を拾ってゆくことも忘れない。
私は森の中を湿気の強い方へ歩いてゆく。
今朝になって気が付いたのだが、森のとある方角から僅かに水気を含んだ空気が流れてきていたのだ。
野宿した場所にたどり着いた時には気が付かなかったが、一晩寝て冷静になったのか気が付くことが出来た。
水気を含んだ空気があるということは水辺が近いか、もしくは洞窟らしいものがあると思われるからだ。
「み、みず……」
いや、まだストックはあるんだけれどね。
私は森の中を水気を追ってさまよい続けた。
歩いて歩いて時間は腕時計で18時。
どこをどのように歩いたのかは憶えていないが、ついに私の耳は聞きなれた音を捉えることが出来た。
出来たんだけれどなぁ。
音を聞きつけ更に3時間ほど転がるように歩き、目の前が一気に開けた。
今私の目の前には真っ赤に染まった湖らしきもの?がある。
大滝の水が流れ落ちるような
降りかかる冷たく赤い
そして目の前には色も十分におかしいのだが、流れがないはずの湖に大渦が渦巻いていた。
何故か空に向かって……。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
「はぁ、すごいな……」
私は天高く昇る赤い渦を見ながら呟いた。
正直どれくらいの高さまで上がっているのか分からない。
上から落ちてくる流れが見えないところをみると底?は無いのかもしれない。
しかしなぁ、この湖、あれだけ湖の中心から空に向かって水が昇っているんだけど、減っているように見えないんだよなぁ。
因みに湖?の広さは250m×250mくらいだろうか。
湖の中心以外はいたって普通の湖である。
もっとも赤い色を見なかったことにすれば……だが。
水辺に関しては流れが速くなり始めているのは5m程先からである。
岸辺に関しては本当に穏やかだ。
水は赤いと言ったが絵具を水に溶かしたような赤ではなく、ルビーのような色、いわゆるピジョンブラッド《鳩の血》と呼ばれる透明で濃い
昔ネットで見たサンライズ・ルビーに匹敵する。
私は喉の渇きも忘れ、宙を舞う紅にしばらく見とれることしか出来なかった。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
「さて、問題はこの水が飲めるのかどうかだけれどね」
私は周囲を一通り見渡すと宙を舞う霧雨に手を
水は
「……さすがに、いきなり飲んでみる勇気はないな」
私は鑑定を使う。
【濃縮魔力水】
成分 水 魔力
数千年濃縮された魔力を含む水で、飲むだけで自らの持つ魔力保有限界値を増幅し、また減少した魔力を急速に回復することが出来る。
限界値の上限は
魔晶石の限界を超えて飲むと
うん、突っ込みどころ満載だ。
てか思わず鑑定結果にツッコミを入れてしまった。
普通の水?
普通ってなんだろうな……。
飲みすぎ注意?
どこかのキャッチフレーズか?
限界値の上昇?
どこかで見たようなネタだな。
魔力に特化した上位互換か?
これも一応チート……なのか?
「折角見つけたし害はないとあるから、飲んでみるか。
問題は副作用の飲みすぎ注意かな?
この鑑定も
特にゴロゴロピーは勘弁してほしい」
私は覚悟を決め、湖の
一口。
はぁ……、うまい。
水分不足を抜きにしても美味すぎる。
水を含んだ瞬間、凍るような冷たさだった濃縮魔力水は少し冷たいと思われる程度に緩和された。
そして口の中に広がるミントのようなさわやかな香り。
思わずそのまま飲み込んでしまう。
水分が身体の中を通り抜けていくのが分かる。
「これは……、これは
私はさらに数口分魔力水を飲むと、名残惜しかったが拠点になりそうな場所を探して湖の周りを歩き始めるのであった。
元売れっ子?ラノベ作家、異世界へ行く 艶 @fireincgtm
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。元売れっ子?ラノベ作家、異世界へ行くの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます