あの日々のみどり色
タチ・ストローベリ
あの日々のみどり色
あの頃の日々はそれぞれに違った小さな鈴がついていて、ほんの数日だけの鮮やかな緑色は特に印象的だった。一方で、そっと独りぼっちになれば目の前の草原は若いのに皆スーツを着て、シリアスな妄想にふけっていたし、ピンクパンサーのお化けみたいな
でもさ、ほんの
彼は今居る場所を出て行くところだった。
そして、あれはあの歳の秋の事だった。
すっかりもぬけの殻になったこの場所が生まれる遥か以前、彼は大変に困惑していた。愛するという水道管がバカになり、蛇口は出来損ないの
戸惑いの頂点につっ立って、自分の歴史のひもじさに冷や汗でべちょべちょのパンツになってしまった、ちょうどその時、運命を
そこには彼以外に、愛らしい
彼はここで絵を描き、鶴はせっせと
朝は
鼻を
チカチカした星が電球になったり、太陽のゲロが暖炉の
風がクルクル走った。
玄関がスースー息をした。
そして次の季節を呼び込んだ。
ある日、目覚めるとフィンセントは独りぼっちだった。ぐらぐら揺れる陽光が、消えかけて透明になったコテージを通してシャトルのいなくなった湖を伝えている。
予兆はあったのだろうか、気付くことは出来たのだろうか。一つだけわかるのは、これからはそれぞれでやって行けるし、やって行かなければならないという事だった。
すっかり暖かくなった外気の中で、誰かは笑い、誰かが泣いている。
フィンセントは外へ出て、彼女の飛び立った湖を一口すくって飲んだ。
それはとても美味しい、春のワインだった。
あの日々のみどり色 タチ・ストローベリ @tachistrawbury
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