呪い4 永遠【MOMENT】

 マリーです。

 意を決してみた。

「陛下。僭越ながら」

「申してみよ」

「人狼を倒した男の噂、確かめてみたいのです」

「ほう」

 うん。

 ドラゴン? どうやって。

 デュラハン? 亡霊では。

 ゾンビ?

 いや、屍の魔法使いを野放しにしてるだろ。

 だけど。

 人狼?

 これ、嘘だったら洒落にならん。

 人々に不審の種をいた。

 処刑。

 私が王様だったら。


 +


 アネッティア。

 潜入2日目。

「お主、名前は?」

「サリー=アリーです……」

「ほう」

「姫様たちのことは、お噂で」

「そうか」

 興味を失くしたらしい。

 男って。


 +


 ?

 犯罪者かも知れない男がいる?

 マリーが調べて来る?

 ん。

 あの。マリー。

 怪しい。お前。

 メイドって気品があるし。

 マルセリータがついて行こうか。

 親子か姉妹にしよう。

 怪しまれないよ。

「姫様、天才だったのね……!」

「陛下……!」

「キャサリヴェール……。仕方ないわ。こんな聡明な妹」


 +


 ?

 兵士さん?

「人狼を倒した男というのは、お前か」

 あ。

 正確には、仲間の光の魔法使いです。

「ふむ?」

 多分、俺が頼んでも、魔法は見せてくれないのですが。

「…………」

 王宮から?

「見れば分かろう」

 んー。

 エリスノートたちのお父さん、軍人だったらしいけど。

 誰も憶えていないだろうな。

 どうする?


 +


「どうも。姫様」

 ?

 知らない人。

「サリー=アリーと言います」

 はあ。

「あのね」

 うん。

「ああ、失礼。お部屋、掃除します」

 あ。

 この人、冒険者だと思う。

 ザック様の知り合いかな?


 +


 ふーん。

 あの方の叔父、殺されたのか。

 犯人不明。

 子爵夫人?

 そんな偶然あるか。

 15年前?

 亡霊が怖くなる頃だな。

 私の歳なら娘かな? と邪推してもおかしくない。

 あの御方シロ。

 単なる、おしゃべり。


 +


 ザックだ。

 人殺しを、どうやって捕まえるか?

 …………。

 亡霊が出たと噂を流す。

 んー。

 これは駄目だろうな。

 んー。

 殺し屋なんているのか?

 うーん。

 俺には分からん。

 それも古い殺人事件だったら?

 あー。

 年寄りは暇してるから、片っ端から聞き込みかな。

 昔のアレを調べている奴がいる。

 近付いて来た所を捕まえる。

 まあ、俺は強いから、こう言える。

 どうなるんだ。


 +


 キャサリヴェールである。

 人殺しの何が悪いのか。

 労働者は社会の公共財だからである。

 もう働いていない?

 かつては働いていた。

 見殺しにしては示しがつかん。

 子供だった?

 これから働く。

 今は教育中だ。

 女だった?

 子供を産む。

 将来の労働者だ。

 結婚していない?

 運が悪かったのかも知れない。

 本人の有責には出来ぬ。

 こんなもの……。全ての犯罪者に、いちいちやっていられるか。

 神が「人殺しは罪」とおっしゃられた。

 これで良いのだ。

 神を真に受ける阿呆が出て来るが。

 基本、無害。

 阿呆なだけで。

 トータルでは得しているから、これで良い

のだ。


 +


《暇な年寄りに聞き込みせい》

 ?

 あれ。

 何だ。

 私としたことが幻聴を聴くとは。

 青い。

 だが、良いかな。

 嫌われたら若い者に話しかけよう。

 親から何か聞いていないかと。


 +


 ルミスティア。

 ザックが、お城に連れて行かれそうだ。

 あー。

 私がついて行きたい。

 友達だ、でいい。

 父さん。名前借りるぞ。

 少将って、ふかしじゃないよな?


 +


 フランです。

 えっと。

 イフリートは予言者では無いの。

 王様が、どうしたら心変わりするかとか。

 当の王様にも分からないわ。

 物や魔法や能力だけ。

 うーん。

 王様が1番信頼している国か。

 あるわけ無い。

 まあ。

 逆説的にログバモス。

 うーん。

 伝言法【VOICE BOX】で連絡が無い以上、動けないわね。

 宿も変えちゃ駄目。

 フォルティマの大金、何なんだろう?


 +


 ラッキー=カザーネードだ。

 街で殺人事件が起きただと?

 ふむ?

 そんな大騒ぎなのか。

 領主の我の耳に入れるほど。

 つまり名士か。

 女癖は?

 使用人に聞き込みせい。

 うむ。

 ご苦労だ。

 金目当てなら商人を殺す。

 やる瀬ないな。

 だが、男と男の勝負に負けたものは仕方無い。


 +


《にゃりーん♪ アルローニャの予言である》


《ログバモス王国は滅びる》


《しかし、王家はカザーネード公爵家にかくまわれ、王子は公爵の養子になるであろう》


《以上であるよ。お兄ちゃん。うにゃん》


 +


 え。

 ログバモスの人なのか。

 その人狼を倒した、お兄さん。

 分かった。マリー。

 エリー。サリー。

 故郷の人間を招いたのに、私に謁見させてくれなかったら、このマルセリータの顔が立たん。

 王女なのだ。

 ログバモスに戻ったら戦争だ。

 それはいかん。

 一撃でヒュドラ殺しという奴だ。

 代わりに話を聞こう。

 陛下と謁見などという名誉、与えるわけにもいかん。

「姫様!」

「ああ、ああ!」

「私たち、この方のために……!」

 ?

 あれー。

 運命の旦那様が、お城に来たぞ。

 え。


 +


 ルクツォーレよ。

 ついに伝言が来たわ。

『竜喰飛翼【TURBO WING】で1人ずつ運ぶ。今晩、裏手の門に来て』

 ふん。

 アネッティアを信用する。

 兵士たちは抱き込み済ね。

 シナリオも、あるんでしょう。

 練った奴が。

 仲間を信じる。

 脅されてたなら何か符牒を隠す。

 信用か。

 この官憲の人殺しを暴いて、逆に追放された、ルクツォーレ=セニ様がね。


 +


 ノノです……。

 顎が外れそう。

 4歳のお姫様に、市井の生活を見せたい?

 王宮など、どこも同じだから?

 メイド3人?

 15歳、15歳、16歳?

 へー。

 懐かしい。

 私も15歳だった時がありましたわ。

 ええ。16歳だった時も。


 +


 ルミスティアだ。

 ザックに同行したこと、猛烈に後悔している。

(15+15+16+4)÷4。

 平均年齢12.5歳の婚約者4人か。

 かろうじてミルティーミルより上だな。

 良かったな。妹。

 お姉さんが増えるぞ。


 +


 キャサリヴェールである。

 ガンダディス信仰はふるいだ。

 堂々とギズーファウス信仰に敵対する阿呆がおるか。

 最大大手なのだ。

 センスが無い。

 早急に死ね。


 +


 アネッティアよ。

 翌朝に旅立つ隊商まで買収しちゃって、まあ。

 団員全員、兵士の妹だって嘘ついて。

 目指すは遠いデルハエル。モナガン王国の。

 ルルラルカがいるはずなの。会いたい。

 マハエルだっけ。新しい名前。

 シャクーセルの住まいでもあるの。

 記憶が無いのか。

 再会したら何を言おう。


 +


 あ。

 フランです。

 他の8本腕の転生いないか、訊くの忘れてた。

 でもなー。

 男なんだよなー。

 女の目から見れば浮気。

 男の子なら、ヒーローに会いたいのかな? と思うだろうけど。

 うーん。

 男って、やっぱりアホ。


 +


 引っ越ししたら、4歳の王女殿下が婚約者になった。

 王家にふしだらな真似をさせるなと、銀の指輪を着けさせることになった。

 ふしだらの意味、分かってるのか?

 えーと。

 他の子たちも、もう我慢出来ないと。

 街中で無かったら、ノノさんが魔法ぶっ放していそうだ。

 全員に指輪を着けた。

 皆、泣いていた。

 あー。

 この上、赫嵐響奇アネッティアさんまで来るのか。

 ルルラルカは何も言わない。

 彼女の指にも銀の指輪だ。

 千閃万華ルルラルカ。


 +


 ルクツォーレよ。

 ふーん。

 買収は逆効果だな。

 商人たちの目が怪しい。

 ねえ、団長。

 そのマントを売れ。

 珍品。

 プロの商人なら、もっと高く売る。

 由来は言うな。

 謎のままがいい。

 OK。

 商談成立。

 私も成長した。あの頃からは。


 +


 ワータリ村は、いい所だよ。

 よそ者が死んでも、誰も気にしない。

 あの冒険者の荷物、どうしようね。

 銀貨80枚か。

 うん。

 大切に仕舞っておこう。

 帰って来たら、いつでも返す。

 もう何週間だろうねえ。

 そんなに山の幸が美味しいのか。


 +


 エリスノートです。

 とうとう指輪、着けられちゃった。

 姉妹も。イシュリアちゃんも。

 マルセリータ=ログバモス様?

 こういうのを、ヤドカリ変異タニシと言うのですね。

 それにしても。

 本当にザックさん、育ちが良いなあ。

 どんな人に育てられたんだろう。


 +


 ルクツォーレよ。

 長い長い旅の果て、ついにモナガンの王都デルハエルに。

 9歳の三つ子なんて、結婚してくれるかな……? と不安だったけど。

 4歳児の左手薬指に、銀の指輪が輝いているのを見た時の、私たちの気持ち分かる?

 あー。

 私たち12名も婚約者に。

 良いのよ。

 お姫様たち、ヤドカリ居留守団を一緒に倒した戦友だから。


 +


 ラッキー=カザーネードだ。

 若い頃の話をしよう。

 男爵家から妻を迎えた。

 しかし、それはヤドカリ居留守団の用意した、偽者の令嬢だった。

 メイドだった今の妻と相談して、謀殺するしかなかった。

 残党は逃げた。

 今は、どこで悪事を働いているか。

 彼奴らを一掃することが、残り少ない余生を使って行うべき使命であろう。


 +


 ユーノアです。

 神よ……。

 祈りを聞き届けください。

 ヤドカリ居留守団の犠牲となった魂たちに冥福を。

 何て非道いの……。世界は。

 ミシャハートでいられるのも後少し。

 マハエルさんの帰り待ち。


 +


 キャサリヴェールである。

 光か炎。

 他は見習い止まりだ。

 ふふ。

 山歩きカワウソ団は強かった。


 +


 ノノです。

 赫嵐響奇アネッティアね。

 あー。

 どうやら私、「闇」の自分が最強だと自負していたようでした。

 内心で。

 ふふ。

 あの団長と副団長。

 何を隠してる。


 +


 ルミスティアだ。

 虚ろにほへと【SLEEP】、同性にも効く。

 7人か。

 ルクツォーレ以外、全員魔法使い?

 アネッティアは、あのアネッティアなのか。


 +


 エリカだ。

 やっぱり能力らしい。

 メリクツェルの弓は、普通の弓だったそうだ。

「どうして私に?」

 いや、ルルラルカ。

 アネッティアに訊くとな。

「あ」

 デキてたのか?

 これになる。

「それはそうだ」

 美人だな。

 えーと。

 女同士か。怖いのだが。

「エリカ=ライオダルクね」

 う。

 新鮮な響きだ。

 もうすぐなのだな。

 フタクビイノシシの肉か。

 あー。

 君は?

「え」

 バケツプリーヌの姓に未練は?

「いや……」

 無いのか。

 コンソメ=バケツプリーヌだろう?

「え」

 ?

 知らないのか。

 勇者ブラックホリデイに仕えた親友。

 勇者の血統は絶えたが、親友の家系は残っていたのか。

「はあ。いいよ。古い話は。ルルラルカ=ライオダルクか……。別に良いかな」

 そうか。

 その日の会話は、それまでだった。


 +


 ピーチです。

 どうして、こうなったかな。

 あー。

 指輪か。

 うーん。

 ザック様か。

 んー。

 ザックお兄ちゃんと呼ぼう。

 まだ恋人早いな。

 うん。

 お兄ちゃんが妹を守ってくれるのは当然だよね。

 結婚か。

 後6年。

 マルセリータ殿下は10歳になっているのですね。


 +


 あの冒険者、家族いたのかねえ。

 こちらは、しがない村人なんだ。

 捜索隊なんて出せないよ。ごめんね。


 +


 マルセリータだ。

 うーん。

 お姫様か。4歳なら良いか。故郷ログバモスの姫か。

 仕方ないか。

 マリスティーのお姫様か。

 13歳2人と9歳3人か。

 トゥーニーちゃん14歳は人狼に狙われたな。

 ミルティーミルちゃん10歳も求婚されたらしい。

 男って、あの年頃の女の子に欲望を持てるのか。

 うん。

 総合すると、こういうことっぽい。

 誰に相談すれば良いんだ?


 +


 フランです。

 どうして、こんなにギスギスしているのか私には分からないの……。

 サメの杖? 触らせてない。


 +


 マハエルだ。

 ふむ。

 あなたが信用出来るか確かめたい?

 あー。

 ふん。

 密告が怖いなら指文字で。

 おや。

 家に招いてくれるのか。

 ふーん。

 お前だな。


 +


 イシュリアです。

 ハーレムが無い理由が分かった。

 だけど。

 皆、ザックの子供が、幾らになるか分からないから、産みまくるつもりなの。

 そうね。

 今更、引き返せない。

 タニシの殻は割られたのよ。


 +


 フランです。

 どうして?

 どうして、いがみ合うの?

 私たちは、同じザックさんを愛する姉妹じゃない!

「あの……面識無いんですが」

 こっちは良く知ってるの!

 ああ、マハエルさん。シャクーセル!

「? シャクーセル?」

 帰って来て!

「シャクーセル=ギガ……?」


 +


 ノノさん。

「?」

 情報収集が出来る魔法って何属性だ。

「? 風……」

 いや。

 不可能だ。

 どこだよ。ガンバルンダ王国って。


 +


 ザックさん。

 こんな相談……。

 私が正妻で、よろしいんですの?

 指輪は8番目でしたけど……。


 +


 エリカだ。

 幸せの粉【HAPPY DREAM】という魔法具が昔あったらしい。

 植物を媒介にして造ったらしいが、セシリアなら分かるだろうか。

「んー。初耳」

 そうか。

 ありがとう。

 親友のコイツが嘘つくはずが無い。


 +


 セシリアです。

 エリカ。

 それはアレクラルク王が、原材料のポピーを根絶やしにしたと伝えられる、御禁制のやくだ。

 どこで知った。

 あー。

 草か。

 コイツなあ。何だかんだで、お嬢様っぽい。

 暗殺依頼のことを「包丁研ぎ【NEW LIFE】」と呼んでいたとか知らないだろうなあ。


 +


 アムリタです。

 セシリア=エミルルが魔導学院に所属したいと。

 草か。

 かつりょくそう【FARMER SKILL】か。

 お百姓さん、めっちゃ喜ぶけど、買えないし。買っても、2代目が売って、お酒に換えちゃうなあ。アウト。


 +


 セシリアです。

 うー。

 儲け損ねた。

 我が最強魔法が、ぼろくそに言われた。

 どこで使うのよ! って。


 +


 アネッティアなんだけど。

 ルルラルカに、シャクーセルがマハエルとやら19歳って言えないのよね。

 お前、ちゃんと記憶ある?

 という意味になるの……。

 きつい。

 帰って来い。

 トゥーニーちゃんの伝言魔法は、面識無いから無理か。


 +


 ウチの妹が馬鹿にされている。

 悪かったわね。

 それ以下の姉で。


 +


 ふーん。

 書庫なら見て良いか。ゲスト扱いで。

 アムリタ、話が分かるぅ。

 ?

 ユーディル=ローレンツ将軍、跡取りがいないため爵位を辞退?

 ?

 ユーディリス=ローレンツじゃなくて?


 +


 あー。

「何、アムリタ」

 ユーディルとラルナって閃剣挽歌ユーディリスだったのね。

 大発見よ、セシリア!

「へ」


 +


 ふむ。

 へー。

 父の遺していた〝ピー〟で〝ピー〟な蔵書を、どうすれば良いか相談したかったのか。

 あー。

 故人を悪く言う人はいない。

 君が産まれて来たことまで侮辱する。

 あー。泣くな泣くな。

 世間の人間が気付かなかったんだから、お父さん、良い人だよ。

 そうだなあ。

 あの、おしゃべり子爵夫人は論外として。

 劇作家になりたくて、紙代で破産しそうなフワタリ男爵。

 彼に、こっそり売りに行くと良いかも。

 最高傑作を書くための、参考資料になればと。

 本なんて流通しないからね。

 お父さん、どこで買ったんだ、これ。

 いやいや。

 では。

 …………。

 はー。

 金にならん。

 人にアドバイスするだけで、報酬もらえる職業って無いかなあ。


 +


 えっと。

 ユーディルとラルナ?

 わたしも魔法使いですけど……。

「あー、学院には無い」

 ですか。

「個人的に持ってるから、貸してあげる」

 ありがとう。

 アムリタさん好きだ。

 お父さんの前世……?


 +


「タニシ料理です!」

 祟りがある!

「神の審判を受けたくて!」

 俺とお前の、どっちが正しいか。

「食べますか? 食べませんか?」

 料理屋に行こう。

 何でも注文していい。

「へへー!」

 困った妻だ。

「この料理は、どうすれば?」

 お前の失くした極悪ごくあくそう【BLOODY COMBAT】を拾って来てくれた、あの奴隷に振舞え。

「おお! その手が」

 報いてやれ。

「分かりました。せっかくだから、武装して料理屋行きましょうか」

 強盗するのか。

「はい。フォアグラを、詰められるだけ袋に詰めろ」

 帰って来た時には冷めてるだろう。

「やっぱり一家に1匹、レッドドラゴンですね」

 餌が大変だ。

 奴隷って高いんだぞ。

「本当ですね」


 +


 これが……お父さん?

 あの。

 アネッティアさん。

 泣かないで……。

 わたしの方が泣きそびれた。


 +


 フランです。

 ああ。

 秘密を明かして楽になりたい。

 でも、駄目なの。

 踏ん張るの。

「タニシにもスパイは務まる」のたとえもあるし。


 +


 ラッキー=カザーネードだ。

 女神あり 竜に仕える タニシたち。

 うむ。

 古い詩だ。

 何故か皆、知っているが。

 竜か。

 うむ。

 ドラゴンとは伝承ではないのか?

 分からぬ。

 我が育ての親はニナゼナと言った。

 博識な老人であった。


 +


 ザックだ。

 タニシか。

 あー。

 サジド婆ちゃんの両親は、タニシタニシ病にかかって死んだと言っていた。

 子供は要らないらしい。

 婆ちゃん。

 ごめんな。

 俺にも伝言法【VOICE BOX】が使えたらいいのに。

 あの世で会えたら自慢させてくれ。

 婆ちゃんが厳しくしつけてくれたおかげで、王女殿下と結婚出来たよって。


 +


 ルクツォーレ=セニよ。

 伝説の9色タニシか。

 あー。

 怖い物知らずね。

 この私でも、どうしてタニシが、こんなにことわざになっているのか知らないの。

 でも、良いわ。教えてあげる。

 紙は自分で買って来なさい。奢らないわ。

 紙って、1枚で銀貨20枚くらいするのよ。


 +


 レッドタニシ

 パープルタニシ

 ブラックタニシ

 グリーンタニシ

 ブルータニシ

 ピンクタニシ

 イエロータニシ

 オレンジタニシ

 ホワイトタニシ


 +


 9色揃えると、何かが起きるとされているわ。

 ただね。

 謎の呪文があるの。

 コンプガチャンコ。

 この言葉を唱えると、9色タニシの祝福は消えると言われている。

 意味不明だわ。

 コンプはコンプリートの略だとは思うの。

 だけど、ガチャンコが何を指しているのかは、諸説あり過ぎて……。


 +


 ライオネル=ダルである。

 いいか。息子ユシュラエルよ。

 金の亡者という言葉がある。

 罵倒語だ。

 人民を不幸にしてはならない。

 彼らが、金を使いたくなるような娯楽を提供せよ。

 支配者の勤めだ。

 良いな。


 +


 マルセリータである。

 考えた。

 ザックと結婚していいのか。

 うん。

 ザックは、お兄様と同じくらい優しい。

 お兄様より年上だが。

 こんな狒々ひひ野郎と結婚した。

 これで王位継承権放棄だ。

 お兄様も、ザックに会えば認めてくれる。

 これでいい。

 マリー、エリー、サリー。

 私は5歳にして叔母さんになるのだな。

 あはは。


 +


 ピーチです。

 泣きました。

 ポニーもペルシャもプーカもパルフェも。

 お父様。

 どうかご無事で。

 お命だけはまっとうください。

 愛してます。

 ああ。

 ガンダディス信仰は傍流に過ぎないのですね。

 信念のギズーファウスの。


 +


 ノノです。

 金持ちになりたかった。

 駄目なのですね。

 金を持つとは、人民から収奪しているということなのです。

 それに見合うリターンを与えれば良し。

 これは支払いなの。

 支払いがとどこおれば殺される。

 金。

 最悪の魔物。

 だけど戦って勝つしかない。

 これが冒険なの。


 +


 ユーノアです。

 ユーディルとラルナの物語の続き。


「ドラゴンってどこで買えます?」

 知らん。

「はー。それでも我が夫か」

 何を言う。

 つまりビジネスチャンスということだ。

「おお!」

 ドラゴンが、どこで売っているか誰も知らない。

 つまり市場で売れば幾らになるか。

「お供します!」

 よろしい。

 それでこそ妻である。


 …………。

 えーと。

 後世の脚色であると願いたいです。

 願いたいなあ……。


 +


 アムリタです。

 アネッティアは分かるんだけど。

 ユーノアさんは、どうしてここまでユーディルに肩入れするかなあ?

 閃剣挽歌?

 うーん。

 はあ。

 怖いと言うか。

 若造じゃん。

 メリクツェル様とかに比べれば。

 浮気では無いっぽいから広めないけどね。

 アムリタ=ローズハート。

 薔薇って、花びらが幾重にもなっているでしょう?

 簡単には心を明かしません、ってことなんだ。


 +


 ピーチです。

 あの。ザックお兄ちゃん。

 魔法使いじゃないピーチたちが、お嫁でいいの?

「あー……」

 あの。

「あのな」

 はい。

「全員魔法使いのお嫁さんだと、最強決定戦が始まる」

 あ。

 あー。

 凄い。

 好きだ。この人。

 6年か。

 子供産むのか。

 うん。

 いいの。

 マリスティー王家を、誰が継ぐか揉めるより。この人のお嫁さんが幸せなの。

 お父様に伝えたいな……。


 +


 私はリアナ=リスシッポ。16歳。

 炎の魔法使いだ。

 使える魔法は「よわ【COOKING】」のみ。

 強くなりたい。

「契約をするか? 人間」

 え。

 私は悪魔に出会った。

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