呪い2 観光【SPY】

 運命の旦那か。

 大衆先導能力【FOLLOW ME】って本当かな。

 位置しか分からんらしいな。マルセリータ殿下。

 この退屈な日常な。

 いや。そんな場合じゃ無いんだよ。

 モナガン国王の機嫌が悪ければ、4人処刑される。

 うーん。

 いや。

 私の独断で、殿下に継承権放棄させるとかねーよ。


 +


 てなわけなんだけどさ。

「うん」

「まあね」

 殿下のお守り疲れ申した。

「こら」

「死ぬ?」

 いやさ。

 運命の夫の話。

「うーん」

「教えられないよ。外国に」

 あー。

 あのさ。

 東西南北分かる?

「?」

「は?」

 いや。この城から見て。

「あー」

「分かった」


 +


「にし!」

 なのです。

 ドパーレ陛下。

 我らがマルセリータ殿下が、街の西に我々の運命の夫がいると。

「そればかりでして……」

「仕事に支障が……」

「ほう」

 威厳があるなあ。

 ウチの陛下たちには無かったな。

 にこにこ、お祈りしてばっかりで。

 あー。

 駄目なのか。

 信仰を持つって。

 リーダーが。

「見張り付きで構いませんので外出の許可を……」

「その給料は誰が出す?」

 ぐえー。

 これが外交かいな。

 メイド3人ごときには手が余るよ。

 魔法なんて無いし。

「恐れながら……」

「ならば黙れ」

 ぐへっ。

 嫌だ。

 王って、これなのか。

 長くないな。故郷。

 うーむ。

「その大衆先導能力【FOLLOW ME】は本当か?」

 いやー。

 それを確かめたいと。

「ふん!」

 うん。

 知らない物は知らない。

 嘘は無い。

 金銭の移動も無い。

 ここだけは勝ち。

 どうしよう。

「陛下。恐れながら……」

「ふん!」

 陛下とつければ良かったのか。

 あ。

 それが作法っぽい。

「聞き込みをさせてみては?」

「良かろう」

 西って、どれだけ広いと思ってるんだ。

 そっちの出費の方が、でけえよ。

 あーあ。

 金より面子か。

 この隙に敵兵攻めて来ねえかなあ。

 ねーし。


 +


 マハエルだ。

 子爵家から、お招きとな。

「あなた。あの恥知らずのグエーグエー伯爵に、一泡吹かせたんですって?」

 いやー。

 同じルンルンダンパ国の、重臣同士ではありませんか。

 御無体な。

「おっほっほ!」

 帽子かい?

 ここ室内。

「いいわねえ。あのね。フワタリ男爵って知ってる?」

「あー。それほど功績のある御方なので?」

「ぜーんぜん! あのね……」

 いやー。

 気に入られた。子爵夫人に。

 記憶力は良いんだ。

 金になりそうな情報か。

 庶民の噂で裏を取ってから。

 1人から聞かせてもらった話だけで、突っ走るのは危険だ。


 +


 俺たちがフランと出会うのは、まだ先だ。

 ひでえな。イフリートから情報もらえるって。

 魔法具化は無理。

 盗まれる。

 戦争起きる。

 ヤバ過ぎる。


 +


 ギズーファウスよ。

 あなたは教えてくれませんでした。

 魔物に出会ったら、どうすればいいのかを。

 声を、

 お聞かせください。

 でなければ改宗いたします。

《にゃりーん♪》

 ?

 気のせいか。


 +


 参ったな。

 結局、聞き込みしてねえし。

 と言うか。

 始まりの魔法使いか。

 本当かよ?

 姫様。

 困るんだよな。嘘言われると。

 国王陛下に何と言われるか。

 どういう育て方したんだって。

 あー。

 運命の夫な。

 あれ?

 フレオーライの教えだけは、ひたすら遠ざけたはずなのに。

 一夫多妻なんて誰が教えた?

 エリー? サリー?

 どっちかが裏切っている?


 +


 ふぅ。

 フタクビイノシシの、お肉を食べる、か。

 婚礼で。

 …………。

 あー。

 責任者として、味見した方が良いのかしら。

 地獄のように不味かったら、どうしよう。


 +


 んー。

 お勉強、飽きた!

 マリーとエリーとサリーの花嫁姿見たい!

 んー。

 あー。

 んー。

 分かんない。

 何でマルセリータ、こんなお城にいるの?

 出たい。


 +


 んー。

 王家の弱味をイフリートに訊く?

 駄目なのよ。

 正々堂々、お姫様5人をザック様に、お嫁入りさせるの。

 んーと。

 ザック様の近況を教えて。

 あー。

 駄目。

 どうやって知った? と返されるに決まってる。

 ザックの容貌を説明してみよ。

 これもアリだ。

 と言うか。

 私たち、お姫様から見れば愛妾扱い。

 裏切られたと思うはず。

 私たちも顔は知らないんです。

 これで目線を合わせる必要がある。

 と言うか、こんな、ちょいエピソード。

 マリスティー王家では、もう忘れてる可能性あるな。

「魔神交渉【WISH】」

『何用だ』

「マリスティーのお姫様5人が、まだザックを好きか教えて」

『5人とも内心では超らぶらぶだ』

「さんくす!」

 イフリートは消えた。

 そうね。

 お姫様の気持ちが最優先だったわ。

「良くやった。フラン。ありがとう」

 団長直々の、お褒めの言葉。

「ありがとう! 賢い仲間を持てて誇り」

 ルクツォーレ副団長。尊敬します。

「やったな!」

 ブレシー。

「ありがとう。組んで良かった!」

 セシリア。

 皆、愛してる。

 アネッティアとエリカは無言だった。


 +


 心と心【HONEST】を盗む悪党魔法使いはいねえよ。

 自分も嘘を付けないって仕様が痛過ぎる。

 過去の悪事を、黙ってるしかないってことなんだ。

 口先で誤魔化せない。

 私のような正義の味方以外には、無用の長物。

 青い。


 +


 さて。

 魔法具の商談。

 これは普通の魔法使いの独占なんだなあ。

 鑑定士だし。

 うーん。

 官憲に顔繋ごう。

「何だ」

「しばらく滞在する予定の冒険者です」

「何だ」

「嘘を見抜く魔法具を持ってます」

「はあ」

「嘘を1つ、本当のことを2つ言ってください」

「昨日はババンバを食べた」

「本当です」

「俺が1番好きなのはガンガラドンだ」

「本当です」

「……おい」

「あー」

「いや、信じる」

 横から声がかかる。

「だよな」

「1秒もかけてない」

「顔色読んでないな。本当だ」

「これ被ってみますか? 売れませんが」

「あー」

「帽子か」

「やっぱりか」

「ふんふん」

 ダガーくらいは持ってる。

 逆に持ってないと怪しい。

 身体能力の高さを隠す擬態だ。

 ザックは青い。


 +


 そうか。

 一般論というものを理解した。

 私以外の妹も、お姉ちゃんには張り合うのか。

 ルミスティア。

 お前はエリスノートに勝つの無理だ。

 どげしっ!

 ぐえー!


 +


 んー。

 ピーチは市井しせいが見たい。

 お城の中で死ぬなんて嫌。

 ログバモスか。

 敵国。

 だけど。

 ザック様の故郷。

 行ってみたい。

 駄目なの?

 駄目なのね。

 私たち、何を楽しみに生きて行けば――


 +


 はあん。

 お姫様たちが、ログバモスに行きたいと言い出した?

「それだけなの」

 と。フラン。

 ふうん。

「噂って、そういうもの」

 アネッティアの意見に賛成。

 裏面を知っているのは、私たちだけ。

 ふむ。

 あ、私ルクツォーレ。

 そう。

 王様ですら、娘がザックさんLOVEだとは知らないはず。

 うん。

 フォルティマ団長なら、1回くらい面会出来る。

 旅の冒険者から、お宅の国宝を買ったって。

 何かの縁なので、仕事はありませんか?

 うーん。

 お姫様を預けてもらう?

 滅茶苦茶。

 うーむ。

 何か手は?


 +


 面会、断られると思うよ。

 ブレシーちゃんに言わせれば。

 金目当てなの見え見え。

 こちらが儲け話を持ち込むんだよ。

 でなければ帰れ。

「1票……」

 あ。

 8本腕様の意見は重い。

 ルクツォーレ、それ没。

 コイツは元王宮勤めだ。

 黙った。

 怒ってない。

 素直は、よろしい。

 まあな。

 ブレシーちゃんもアネッティアに負けるのは仕方無いなと思う。

 セシリアやフランはアレだが。

 エリカか。

 多分格上なんだが。

 魔法で勝負になるな。

 多分、一撃必殺。相手も。

 詠唱速い方が勝ち。

 ギャンブラーは侮蔑。

 ギャンブルに命を張るな。


 +


 あー。

 団長として面会には行かない。

 このマント着けてたら、

 辛子問答【PEPPER LIFE】と風呂場劇場【VINEGER】だったか。

強請ゆすりに来たと思われる」

 アネッティアらぶ。

 私の目に狂いは無かった。


 +


 私、アネッティア。

 うーん。

 盗賊ね。

 いたのかしら。

 盗賊に仕事依頼するアホ。


 +


 うーん。

 マリー。

 陛下に会わせて!

「えーと」

 お願い。

「駄目です」

 うー!


 +


「あのな」

 ?

「マルセリータはだれとけっこんするの?」

 あ。

 あー。

 困った。

 これならギリギリお耳に届けられる。

 どうしよう。

 私たちのお給金、モナガンが出してるんだよな。

 王様、私たちを狙ってるのか。

 若い好青年が私たちを攫ってく?

 あ。

 40男が不機嫌なわけよ。

 あー。

 魔法王国モナガンなら、いい気もするんだけど。

 あー。

 あの不機嫌親父の愛人か。

 3人でか。

 あー。

 1人なら許すが2人以上は許せん。

 あー。

 どうするかな。

 姫様より私たちが上かな。

 しかしな。

 実在するのか? そんな金持ち。

 嫁3人なんて。

 しかもコブつきなんだ。私たち。

 義理の娘に手を出したら殺す。

 と言うか、ログバモスが兵を出す。

 あー。

 逃げられないのか。


 +


 サララよ。

 妹が魔法使い。

 くだらないけど。

 うーん。

 あー。

 コンプレックスだ。

 獣か。

 草とかいたら笑うわ。


 +


 客かい。

 来ないねえ。ワータリ村には。

 何で全ての村に宿があるかって?

 お役人が不便だからだよ。

 私が貧乏なのも税金。

 いいけどね。

 おかげで義理の息子が結婚出来たから。

 ザック。

 お前には、もったいない位の、超美人だった。

 黒髪なんて初めて見たね。

 ギズーファウス様の教えに従って、生涯彼女1人だけを大事にするんだよ。


 +


 婆ちゃん。

 俺、何か悪いことしたか?

 10歳児と婚約って。

 フレオーライ様が、一夫多妻の教えを撤回しないか?

 俺は直々に殺されないか?

 ヤバいよ。

 10歳児。


 +


 ふーん。

 私の封絶魔眼【MAGICIAN HUNTER】含めて手札は多い。

 だけど、オープンしたら死ぬ。

 不便だなあ。冒険者が軽蔑される、この時代。


 +


 アネッティア=サリーカです。

 ザックさんと婚約か。

 9歳児3人貢ぐ。

 13歳2人も。

 12から14歳、他にも一杯いるらしいけど。

 19人だっけ?

 15から19歳が24人だったかしら。

 18歳の私、大丈夫よね?

 子供産めるし。

 23歳の団長、大丈夫かしら。

 きっと平気。

 ルルラルカが22歳か。

 800年前と同じなのね。

 19歳のシャクーセルも、どこかに。

 あ。

 フラン!

「魔神交渉【WISH】!」

『19歳のマハエル=ズツェンという女に転生している。記憶はないが、容貌も背丈も同じ。カザーネード公爵の隠し子。ズツェンはモナガンの男爵家で、魔導学院所属になった彼女の仕送りで、跡取りの弟を育てられた』

 やられた。

 転生は「生き残り」とは言わないか。

 嫌い。このイフリート。


 +


 妹が生意気になった場合は、どうすれば良いと思いますか。

 旦那。

「あー……」

 私だけなんだな。

 この人から、魔法具なんかもらったの。

 ふん!

 助けられちゃった。

 強い。虚ろにほへと【SLEEP】。

 嬉しい。

 けど、お姉ちゃんを蹴落とせない。

 分かって。

 愛してるの。

 だけど、お姉ちゃんを1番にして。

 私、2番。

 あのアホ、3番。

 心はカンザレー家の婿ですと言って。

 言って。

 …………。

 金出してるのイシュリアかよ。

 アイツが1番偉いのか。

 喧嘩するぞ。嫁同士。

 怖くないか? 女の戦い。

 本当に喧嘩するぞ。いいんだな。

 やっちゃうぞ。

 馬ー鹿馬ー鹿! とか言うぞ。

 内容は、どうでもいいんだ。

 公衆の面前で侮蔑されても、言い返さないような女だと思われることが、問題なんだ。

 次は男が慰めに来る。

 いいか。

 クソ男を押し付け合うのが、女の戦いだ。

 お前は、ババ抜きのババではないと認められたんだ。

 約60人に。

 これが、どんなに凄いか分かるか。

 男は、女のけしかける犬なんだよ。

 女はそれを分かってて、犬と結婚するんだ。

 コイツだけは狼だって。

 そして、自分が何をして来たか知るんだ。

 ザック。

 お前は虎だ。

 虎の子供なら産んでやる。

 ミルティーミル抱いても許す。

 だから謝れ。

 何で黙ってるんだ、おい。

 私の心、伝わってないのかよ。


 +


 うーむ。

 大国ログバモスが怖くて、私たち3人も王様も、状況動かせない。

 んー。

 国が滅んだら、金返せで愛人か。嫌だよ。

 あー。

 姫。おいたわしい。

 どうしよう。

 運命の旦那か。

 3人で共有って何だよ。

 違う家だし。

 マリー=ブルースター。

 エリー=イエローライン。

 サリー=レッドマーク。

 色の名前が入ってるつーだけで、縁戚でも何でも無いが。

 むしろ敵だったりしないか。太古では。


 +


 我が名はラッキー=カザーネード。

 娘よ。

 俺に跡取りはいない。

 俺は勇者になりたい。

 妻は止めるが。

 子供は、お前1人でいい。

 あんな賢明なお前の後に、第2子など愛せるか。


 +


 イシュリア=ジルナード。

 結婚したらライオダルクになるのね。

 伝説があるの。

 勇者ブラックホリデイは、3人の子供を作った。

 名前はレタスとポテトとトマト。

 誰も結婚出来ずに、勇者の血統は途絶えた。

 次に魔王が現れた時が、人類の最後だと。

 本当に、魔王なんているのかしら。

 分からない。

 ジルナード商会の情報網をってしても。


 +


 エリスノートです。

 カンザレー家にも、こんな伝承があります。

 アアアアという名前だけは付けてはいけない。

 神の怒りに触れると……。


 +


 神か。

 髪の毛1本動かせない弱者。

 労働奴隷こそが宝だ。

 裏バイブル。

 これだけは流出させてはならぬ。

 我ら教皇は、これを次代に受け継がせることが使命。

 我が名はキャサリヴェール。


 +


 アネッティアです。

 うーん。

 お姫様を盗むか。

 無理。

 どうしよう。

 お姫様の暗殺依頼が出ていると噂を流す?

 あー。

 兵士たちが張り切るだけ。

 勤め人の経験として言わせてもらうと。

「頼りになるなあ。お姉ちゃん」

 誰がよ。ブレシー。


 +


 イシュリアよ。

 うーん。

 ザックなあ。

 商会の皆に夫を慕って欲しい。

 商売の才覚はなさそうなのよ。誠実過ぎて。

 民衆に金を持たせても娼館通いするの。

 不幸になる女が増えるの。

 無くなれば良いのに……。


 +


 マリーだ。

 ブルー、イエロー、レッドか。

 ドルフィン、タイガー、フェニックス。

 うーん。

 炎の魔法使いは、「不死鳥契約【RESURRECTION】」って魔法が使えるって、本当かなあ。

 生贄を捧げないといけないらしい。

 人を殺した数×10人。

 0なら5人。

 怖いよ。

 炎なんて、普通の魔法使いに思えるのに。


 +


 闇魔法か。

 知りたいですか。


 黒縛鎖【SLAVE OF DESIRE】

 希望殺生【LITTLE MOON】

 保管倉庫【GATE DEMON】

 暗黒哀歌【BLINDNESS】

 黒雲結界こくうんけっかい【BLACK TENT】

 あっそう【LANCE NOIR】

 死体溶解【MAN EATER SHADOW】

 影踏かげふみゆう【NEVER STEP】

 骨切包丁【GUILLOTINE】

 血吸黒牙【DHAMPIR RAT】

 かみてっ【BIND EACH】


 ふん。

 所詮は護身用魔法。

 弱いんです。私。

 バレたら破滅。

 見合ってないわ。


 +


 風の魔法リスト?

 いいけど……弱いよ。


 しょうじん【SMALL KNIFE】

 突風張手【TINY STORM】

 飛行【BLUE WING】

 飛翼付与【WELCOME SKY】

 ちん黙考もっこう【WORD STEAL】

 遠耳【HEAR THERE】

 首刈三昧くびかりざんまい【KILLING ROSE】


 沈思黙考【WORD STEAL】使わなーい。

 と思う。

 小刃【SMALL KNIFE】か首刈三昧【KILLING ROSE】で、さくさく殺せば良いし。

 魔法封じ?

 いや、喉掻っ切れよ。で終わり。実戦は。

 あっはっは。

 ジルナード商会をよろしくー。


 +


 オグフィスだ。

 あー。

 私の魔法知りたい?

 暇だな。


 生命賛歌【HEAL SONG】

 鳥蝶々【BIRD COMING】

 炎熱防御【GUARD FLAME】

 記憶喚起【REMEMBER ME】

 白銀葬送【PURIFY DEAD】

 故郷愛【CHILD DAY】


 歌詞?

 えー。

 今、婚礼前で忙しいから今度な。

 記憶喚起【REMEMBER ME】の効果か。

 えーと。

 約束違反した相手に、その約束をした時のことを思い出させる。

 相手は言い訳が出来なくなる。

 うん。

 まあ、キレて斬りかかって来る可能性もあるけど。

 はあ。

 刃物で斬られるような馬鹿、治療しないしな。

 治してやっても、ビビりになって、仕事しないし。

 医者って、意味ない仕事。

 ゴミを延命させるだけ。

 早く殺してやれよ。

 この世界、命がけなんだ。

 怪我する奴も、病気する奴も罪人だ。

 足引っ張りやがって。

 人は見捨てろ。

 自分も見捨てられる覚悟をする、そのために。

 要らなくなったら、間引かれる。

 そう心に刻んで、身体に鞭打って働くんだよ。

 私たちは、これから子育てするんだ。

 ザックは家長として、商会の経営を補佐するんだ。

 お義父様の右腕になるんだ。

 忙しいんだよ。

 アイツが毎日毎日励むってか。

 あー。

 合ってるけど。

 60人妊娠か。

 4ヶ月もあれば終わるんじゃないか。

 子供は一杯欲しいけど、3・4年は空けたいな。

 あー。

 まあ。

 子供1歳になったら、次の子欲しい。

 産んでみたら、そうなるのかな。

 だけど、知らんよ。

 あのな。私、未婚なんだけど。

 お前、デリカシーない。

 嫌。

 これだからザックが好きなの。

 気障きざおとこ むっつりもっくりに 掻っ攫われ。

 うん。

 イラつくんだ。気取り屋。

 こっちは封魔の正鵠メリクツェル=グリムバード様が初恋なんだよ。

 大陸の3分の1併呑してから、出直して来い。

 ああ、うざ。

 世の中、実績給に決まってるだろ。

 特に女は有限なんだ。

 魔物退治した男なんか、ザック1人だ。

 女あてがうだけあてがって、報いないと。

 魔物3匹倒したら、浮気考えてやるよ。ゴミ。


 +


 は?

 トゥーニーちゃんを、ザックさん以外の男にあげるわけないでしょう。

 ルルラルカお姉様も。

 ザックさんがいてくれたから、魔法使いだとバレても、追放で済んだのですわ。

 恩知らずな、お姉様など、お姉様ではありません。

 許しません。

 あの人はザックさんの女です。

 何度生まれ変わっても永遠に。

 私たちも全員。

 ぼーっと生きてる女ども、皆殺し。

 ザックさんの故郷の幼馴染だけ、特別に、あの世で妻になってもらいます。


 +


 オグフィスだ。

 公平?

 それ言い出す奴、決まって怠け者。

 ぶっ殺したい。

 こっちは神官だ。

 人々が、どんだけ暇か観察してるんだ。

 こんな奴らの言い分聞いてたら、世界は滅びる。

 働け。

 嫌か。

 なら、金がないと死ぬ世界を作ってやる。

 ゴミが。


 +


 ノノです。

 ザックさん以外の夫?

 無い。

 妥協と言うんです。

 いえ。

 裏切りと言うんです。

 ザックさんに、決闘で勝てたら考えます。

 決闘ですから、条件は互角。

 たとえ隕石を落とせるような魔法使いでも、素手で殴り合ってもらいます。

 よろしくて?


 +


 ルミスティアです。

 ミルティーミルが女になった。

「そうだった」

「うん」

「エリスノートお姉ちゃんを救ってくれたの、ザックだった」

「そう」

「この男、役に立たないなーと思いながら、結婚してやるのって無礼か」

「よろしい。妹。婚約だけしなさい」

 いやー。

 指輪、早く欲しい。

 この妹が指輪したら、どうしおらしくなるか楽しみ。

 家庭の主婦は図々しいが。

 ハーレムの女の子は、自分磨きに余念がないと思う。

 きっと可愛いと思うな。うん。

 あー。

 これがタニシがタニシを推すって奴か。

 恥。

 反省。


 +


 私、フラン。

 お姫様か。

 つまりマリスティー王国を潰す、大義名分が必要だった。

 向かうべきは隣国だったのかしら。

 欲しいのよ。

 双子と三つ子。

 ザックさんと結婚する手土産に。

 特に、初期メンバーがアレだから。


 +


 いいか。ユシュラエル。

 王とは何か。

 こんなくだらないことを、民が考えている内は平和だ。

 真の王は貨幣制度だ。

 人々が「金の無い世界が欲しい」。

 こんな寝言を言うようになったら、世界は終わりだ。

 金とは貢献度だ。

 私を数字で評価しないで! と言って来るアホは殺せ。

 働き者にとっては、数字を見てくれない上司は敵だからだ。

 数字が政治的に正しい。

 見えない所で頑張っている! と言い出す馬鹿は、閑職に飛ばされたことも気付いていないゴミだ。

 それ以前のお前に問題があり過ぎた、で切り捨てろ。いいな。息子。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る