ROUND3

呪い1 熱風【DEATH】

 ハーレムに入りたい。

 だけど、嫉妬深い民衆は許さない。

 放っておいて。

 あの人なら、トゥーニーを幸せにしてくれる。

 ルルラルカお姉様ですら、子供を産める。

 私は私の幸せなんて、もう良いの。

 愛する人たちと結婚したい。

 だけど、男なんて愛せない。

 だから。

 ザック=ライオダルクさんなら任せていい。

 何人お嫁さんをもらっても、怒らない。

 努力で魅力は増えないの。

 金への愛は、欲望であって愛では無い。

 薄汚いの。

 金が欲しいとか。

 妹の笑顔が見たいの。

 お姉様に、女を捨てて欲しく無いの。

 私は、あの人で良いの。

 行きずりの町で。

 町の皆を守るため。

 面識さえ無かったトゥーニーを守るため。

 命を賭けてくれた、あの人以外が。

 私を娶ろうなど図々しいのよ。

 トゥーニーの恩人と結婚するの。

 それ以外は嘘の愛なの。

 結婚したからって愛は生まれない。

 順序が逆。

 妹と町の恩人のために尽くす。

 それで良いの。

 口出ししないで。


 +


 お姫様を盗むか。

 うーん。

 いや。

 王様を騙すべきなの。

 んー。

 人質に出させる。

 5人の姫を。

 モナガンまで。

 うー。

 こういう権謀術数が無かったのよね。あの時代。

 ユシュラエル、ユーディリス、ヴェルギースのパワーゲームで。

 んー。

 思い付かない。

 メッキャラエール、もう一杯。


 +


 ふん。

 私の完全粉砕【ALL POWDER】は、何でも粉に変えられる。

 王様が紛失したら困る物って何だ。

 王冠? ハンコ?

 まあ、近付けるわけない。

 うーん。

 あー。

 お姫様に罪を着せる。

 私たちが庇う。

 モナガンで暮らさせます。

 王位継承権は放棄。

 ふん。

 道中でバレそうだ。

 ザックのことまで嫌いになる。

 んー。

 私とアネッティアは面識が無いのに。

 フランも。

 なのに、良くあそこまで、お熱になれる。

 分からん。


 +


 父よ。

 母よ。

 どこにいますか。

 わたしが伝道師になってもギズーファウスへの信仰を捨てられないのは、

 あなたたちが、わたしをギズーファウス教会に預けたからなのです……。

 あなたたちも、ギズーファウス信徒なのでしょう?

 だから教会を信用したのでしょう?

 どうかどうか。

 正しい信仰を。

 だけど。

 愛は死ぬ。

 本物の愛が。

 強い血統に対する愛が。

 女の――


 +


 姫様……。

「なに? マリー!」

 運命の夫がいる?

「なの!」

 大衆先導能力【FOLLOW ME】――。

 伝承は本当なのかな。

 かと言って。

 外出の許可が下りる?

 無理。

 エリー、サリーと同じ夫?

 おいおいおい。

 どうするの。

 暗殺されても、おかしくない。

 ギズーファウスの面汚しって。

 王様はフレオーライだけど。

 城下町行けないんだよ。

 スパイだから。

 味方いないし。

 城に1人も。

 うーん。

 その夫の方から来いよ。

 花の15歳2人と16歳と結婚したいなら。


 +


 客かい。

 このワータリ村にかい。

 お役人だけだよ。

 司祭? 神官?

 来ないよ。

 麦と野菜を持って行くだけだ。

 金も払わず。

 フタクビイノシシが奴らを喰い殺してくれれば良いのに。

 皆、思ってたんだけどねえ。

 ザック。

 もう帰らないんだろうね。

 年上だろうけど、あんな美人と。

 あの子、今更泣いてた。

 やっぱりザックと結婚するんだったって。

 仕方ないね。

 吊り合わないよ。

 村娘なんかとは。


 +


 えーと。

 姉妹3人です。

「はい……」

 下の子10歳です。

「はい。ミルティーミルちゃんとも、お話ししました」

 ちゃんですか。

「いやー……」

 いいですけどね。

 呼び捨てよりは。

「すみません」

 あー。

 男が謝らないでください。

「だったら来るな。あ、失礼」

 あの。

 夫婦になるんです。私とも。

「分かってます」

 あの時は、どうも。

「いえ」

 あなた変だってピンと来ました。

 始まりの魔法使いと言うのですか。

「だそうです」

 まあ、8本腕は知ってます。

 勉強したから。

「はあ」

 ヴェルギース、ライオネル、ユーディリス、メリクツェル。

 本当だったんですね。

「あー。ルルラルカさんが言うからには」

 さんですか。

 他の女に?

「どうすれば……」

 1番好きなの誰ですか。

「誰でもない」

 ?

「いえ」

 何。

「いいでしょう……」

 何なんですか。

「うるさい」

 何。

「あー……」

 結婚しませんよ?

「他に相手が……?」

 !

 ムカつく!

 私、ベルーデリア王家の血筋としか。

 バレたら、どうなるのよ。この世界で。


 +


 あ。

 エリスノート様。ライオネルの子孫なのか。

 で。

 ルルラルカ様いわく。

 アレクラルク王の正体?

 え。

 エリスノート=ベルーデリアってこと?

 …………。

 ザックさんが正当な大陸の支配者じゃん!

 やっべえよ!

 完全演技【BELIEVE ME】!

 この能力以外ヤバイ!


 +


 あのー。

「何」

 すみません。ルルラルカさん。

 あえてライオネルと呼びますけど。

「?」

 何歳でした?

「……? 34くらいに見えた」

 あー。

 群骸操演と親子だった可能性は?

「…………。ユシュラエルが王子?」

 あれ。

 即、否定しないのかよ。

 8本腕が。

 ヤバいな。

「おい、ザック」

 言いません。誰にも。

 どうなったんだ。最後。


 +


 何で気付かないんだ。私。

 陛下は黒髪だったけど。

 ユシュラエル、橙の髪だった!

 あのエリスノート。

 おどおどしているようで。

 間合いをコントロールしている。

 似ていた。

 陛下とユシュラエル。

 やたら、しゃべる所が。

 ぺらぺらと。

 似ている。

 エリスノートも。

 今思えば、下の妹2人も。

 ふーん。

 決闘して手の内を探る。

 無理だ。

 脅して、しゃべらせる。

 殺される。

 ふーん。

 どうしてくれよう。

 この街に着いてからの新参なんだよな。コルノルドの住人組にとっては。

 いや、イシュリア様の親友なんだが。

 何でかな。

 うん。

 ザックの見立て正解だ。

 我らが姫か。アレが。


 +


 信念のギズーファウスよ。我が祈りを聞き給え。

 大衆には鞭が必要だ。

 しかし、拷問官は殺される。

 恩知らずの無学どもめ。

 お前の隣人は酒飲みだ。

 我らがいじめ抜かなければ、この世は、どうなると思っている。

 愛しております。

 束縛の倫理クロフディバリア。

 あなたを邪神と信じる大衆など。

 何人死のうと、心は全く痛まない。

 働け。

 子供が欲しければ綺麗な服を買え。

 酒をやめろ。

 別に。

 子供が要らないなら、毎晩宴会でも構わない。

 金の使い道は自由だ。

 そこまで口は出さん。

 我はログバモス王国の教皇キャサリヴェール。


 +


 王とは何か。

 民が決めることである。

 ただし。

 人と人とは敵同士である。

 真に受けるな。

 言われたことだけをやれ。

 裏では稼げるだけ利益を稼げ。

 しかし。

 使用人たちも敵だ。

 王は誰よりも厳しく、金の出入りを監視されている。

 窮屈だ。

 まあ。

 生き延びたいならば耐えるが良い。

 だが。

 退屈で窮屈な人生か。

 猫にすら負ける。

 そう。

 猫と同じくらい幸せになることが、私の望みだ。

 そう。

 爪で喧嘩をしたいのだよ。

 相手が見下ろして来てムカついたから。

 喧嘩も出来ない人生なんて。

 若い頃は、やんちゃしていた。

 これが言いたくて、予は大戦争をやっている。

 それだけだ。

 分かるか。ユシュラエル。

 アレクラルク=ベルーデリアか。

 どの時点で、ライオネルの消息を消すべきかなあ。

 あー。

 将軍が、こんなに面白いとは。

 玉座。

 競りに出したいのだよ。本当に。


 +


 んー。

 皆、熱が冷めて来たかな。

 何人だ。

 トゥーニー、サララ。

 えーと。

 あ、忘れた。

 無理。

 何人だっけ。俺の嫁。

 エリスノートさんが真っ当に見える。

 姫かよ。

 うーむ。

 他には渡せないんだけど。

 俺、父親になれるのか。

 マハエルは、まだ帰らない。

 ブレシーが嫁ぎに来たら嫌だなあ……。


 +


 セシリア。

「?」

 私のイフリートについて歌ってみてくれない?

「あー。面白いね。けど」

 ?

「3日くらい待て。茶化した歌は怖い」

 ふーん。

 ああ、そうね。

 魔神ですもの。

『感心ではないか』

 !

「うわ!」

 って。

 あんた、声出せたの?

 びっくりしたなあ、もう。


 +


 うーん。

 考えたことが無かったが。

 どうして魔法使いと始まりの魔法使いがいる?

 血統?

 んー。

 母上だろうか?

 んー。

 義母はどうなった?

 聞き込んで来れば良かったかな?

 …………。

 無いな。

 領主の元奥様はどうなりましたか? など。

 うん。

 殺される。

 公式には私は、みなし児の養子だ。

 言い訳無用。死刑。

 ふむ。

 ルンルンダンパ王国まで来てしまった。

 名物は?

「豆腐せんべい」

 ほう。美味そうだ。

 3枚くれ。


 +


 サジド婆ちゃんが言ってた。

 パンダに勝てれば一人前の武芸者らしい。

 でも、パンダって何だ。

 んー。

 エリスノートか。毒使いか。

 妹2人とも会って無いなあ。

 いやー。

 フレオーライと言えど、結婚前の男女は慎ましくあれなんだよな。

 正しいと思う。


 +


 退屈。

 ポニーお姉ちゃんとペルシャお姉ちゃんも、そうっぽい。

 あー。

 ライオダルク様で盛り上がるのも無理がある。

 皆、バラバラに結婚。

 淋しいなあ。

 ねえ、プーカ。パルフェ。

 子供時代が、いつまでも続けばいいのにね。

 面白い話ない?

「いえ、何も……」

 メイドか。

 メイドって、ライオダルク様と結婚したいと思うかな?

 ギズーファウスか。

 改宗させれば良いのに。

 だって。

 神様は他の神様を滅ぼせ……なんて教えてないでしょう?

 異教徒と友達やっちゃ駄目……って書いてある?

 読ませて。


 +


 私がザックさんを見つけたのに。

 皆、当然のように奥様ですか。

 エリスノートさんは何。

 嫌なら、よそに嫁いで結構です!

 私……。

 どうなるんだろう。

 ああ。

 淋しい。

 私だけを見て欲しいのに。

 女なのか。

 この私が。

 故郷の人間を皆殺しにした私が。

 腕試しをしたいのです。

 せっかく魔法に目覚めたのだから。

 いけませんか。

 私は愛しているのです。勝負を。

 負けたら死ねる。

 殺してもらえる。

 だから真剣勝負をしたいの。

 いつか殺してもらうために。

 いけないのですか。


 +


 手練れか。

 人殺しが混じってるってことね。

 別に。

 他国での殺しは、どうでもいいわ。

 ここデルハエルに、貢献してくれるなら。

 私の商会を、大きくしてくれるなら。


 +


 うーん。

 お外に出たい。

 ライオダルク様の、お嫁さんになりたい。

 仲間の女の子3人も、お嫁でいい。

 お姫様に、お会いするなんて、恐れ多い?

 ピーチは、そんなの言われたの初めてだった。

 お外の世界を教えて欲しい。

 お城って怖い。


 +


 いいか。ユシュラエル。

 成り上がりが正しい。

 成り上がりを嫌うのは、貴族だけだ。

 アイツらは役立たずだが、声だけは大きい。

 人の10倍の悲鳴を出すから、迂闊には殺せないのだ。

 アレがマンドラゴラだ。

 人の形をした竜だ。

 身体は大きい。

 だが、喰うことしか考えていない。

 領民は、ランチを奪いに来る敵だと考えている。

 竜を退治するか、生贄を捧げるか。

 貴族を養うとは、そういう話なのだ。


 +


 姉ちゃんが変だ。

 そりゃ60人ハーレムに入ろうってのに、変にならん女がおかしい。

 貴族かよ。

 ザックか。

 友軍探知【WHERE YOU】――

 うがー!

 私のこと見られてないだろうな。

 縮地天脚【SKY SKIPPER】の練習出来なくなった。

 虚ろにほへと【SLEEP】。

 これ位もらわないと、割に合わない……。

 封じられた。

 今日までの修業、全部無駄。

 奥様か。

 こんなに心が違うのに。

 馬鹿。

 優しいって、興味が無いってことなんだ。

 懐かれたら追い払うってことなんだ。

 勘違いするなよって。

 ざまあ見ろ!

 必ず結婚してやる。

 私を好きになってもらう。

 お澄まし野郎。


 +


 大衆には脅しが必要だ。

 本来なら脅しだけでも足りるのだ。

 だが、知恵をつける。

 狐どもは。

 善良な市民を、殺せるものなら殺してみろと。

 故に。

 善と悪を決める権利を独占する。

 神の御名をお借りして。

 それが宗教というものだ。

 神に背いたから死刑。

 教義は形式だけでいい。

 誰もが納得する綺麗事。

 それの寄せ集めで構わない。

 どうせ裁判は恣意的だ。

 教会の人気取り。

 よっぽどの嫌われ者だけを狙えば良い。

 ところが。

 困ったことに教会が嫌われ者だ。

 それは、それで良い。

 身内殺しは神の御心に適うと我は信ずる。

 身内?

 良くて、またいとこの、またいとこ。

 肉親とは呼ばぬ。

 我を肉親と考える平信徒が居たら、僻地に飛ばせ。

 最大の神は「常識」である。

 であれば、神の信徒は教師なのだ。

 ギズーファウスの照覧あれ。


 +


 ルンルンダンパ王国か。

 ふん。

 すまない。

 この国で有名な英雄と言えば誰だ。

「は?」

 知らんのか。

「何だ、お前」

 あー。

 いや。

 子孫がいたら、おべっか使って仕事が欲しいんだ。

「鬱陶しい!」

「お前みたいなのがいるから!」

 ふーん。

 爵位持ちは嫌い。

 しかし、王家には逆らえない。

 ふむ。

 貴族の目には逆に映る。

 我々は恐れられている。

 王家は侮られている。

 ふむ。

 なあ。

 名前は忘れたが、どこかの貴族が何かやらかしてなかったっけ。

「おい。滅多なことを言うな」

 ふん。

 この国の貴族とは言っていない。

 大陸全体では、やっぱり、どこかの子爵か男爵が、やらかしているだろう。

 いやー。大変なんだ。

 この心と心【HONEST】を着けて生活するの。

 だから今は外してる。

 人と話す時は帽子を外す。

 こういうマナーがあって良かった。


 +


 フラン。歌だ。

「ほう」

『ほう』


 願いを1つ叶えましょう

 しかし、賢くなってくれ

 美味い話には裏がある

 ぴょんぴょん飛びつかないでくれ

 お前は釣り餌を喰う魚かね

 私は対話をしたいのだ

 君を獲物にするのは不本意だ

 だけど、いつまでも成長しない

 もっともっと美味しい餌を

 美味しい美味しいご馳走を

 駄目だな 我が腐らせた

 心を鬼にして離れよう

 これは君のためなんだ

 1人で生きていけますように

 死んだら死んだでそれでいい

 世間の厳しさ知ったから

 1つ賢くなったよね

 馬鹿のまま死ぬよりずっといい

 本当に我はいい奴だ


『満点であるな』

「イフリートぉ……」

 いやー。

 このセシリア=エミルル様、天才だ。

 これ、どこかに売れないかな。


 +


 故郷が恋しい。

 女?

 そりゃ俺も20歳だけど。

 思い出すのかよ。

 違う女と、そういうことする度に。

 アイツを。


 +


 お外に出たい。

 ライオダルク様の、お嫁さんになりたい。

 姉様たちと、プーカ、パルフェも、お嫁さんにして欲しい。

 きっと幸せ。

 お城よりも。


 +


 作戦を変える。

「いやー、この国は治安が良いみたいですねー」

「へえ、そう見えるのかい」

「あ、すみません。どこも男爵様とかは同じですか」

「は! 言えないけどね。伯爵さ。可愛い男の子が大好きで」

「はあ」

 あー。

 さて。

 ここからは心と心【HONEST】を被ったままで行こう。

「伯爵様の中で、やたらと評判の悪い人が、いるみたいですね」

「いねえよ!」

 嘘。

「いないんですか」

「だから、いねえよ!」

 嘘。

「信仰は何なんですか」

「だから、いねえって言ってるだろ!」

 嘘。

「はあ。あなた、全ての伯爵をご存知なので?」

「え」

 さて。

「あー! このアマ! 舐めやがって!」

「失礼。お詫びします」

 失礼だと思ってるのは嘘ではないよ。

 ただ、公爵令嬢の私の方が上だと思ってる。言わないだけで。

「だいぶ詳しいみたいですね」

「うるせえ!」

「お友達さんのせがれとか?」

「やめろ!」

「あー」

 どうするか。

「他に詳しい人とかいません?」

「あ?」

 いやー。

 ノープランなんだけどさ。

「やめておけ」

「まあね」

 爵位持ち何家潰せるか。

 これがハマってるゲームなんだよな。

「最近はご無沙汰だよ」

「はあ」

 そうか。

 病気か。

「うーん」

「何か」

「いやー、被害に遭った子」

「何だ」

「伯爵様、子供います?」

「いねえよ」

「『あなたのことを、お義父さんだと思っていたのに』」

「は?」

「こういうこと言う男の子を、可愛いと思うようなアホですか」

「…………」

 はっはっは。

 頑張ったけど、金を取るのは無理みたい。

 まあ、脳の刺激になったから良いや。

 アレだね。

 伯爵家1つ無くなるって大事件だから。

 跡取り。

 出来ると良いね。


 +


 マハエルが帰って来ないと、祝言は無理だ。

「あ」

 だろ。イシュリアさん。

「うーん。そうね。長官がハーレム入り拒めば、ご破算」

 うん。

 アイツとは、だいぶ昔に会っただけで。

 俺に仲間が増えたことも、人狼のことも、アレクラルク王の指輪【HONEY】も知らない。

「だよね」

 うん。

 知ってたのは、あんたくらい。

「『あんた』か」

 あー。 

 釣られて。

「そっか」

 はあ。

 俺、従業員?

「いや、駄目。逆に示し付かない」

 そっか。

 対等で良いよね?

「…………」

 何。

「あの。あんた、大英雄なんだけど」

 ルルラルカの手柄だよ。

 あー、まあ。

 トゥーニーさんと町の人、庇いはしたけど。

「そ」

 おこがましい。

「あー……」

 何。

 ?

 顔赤い。

「うるさい!」

 あー。

「ギズーファウスか……」

 はあ。

 普通に結婚して欲しいんだけど。皆。

「魔物退治出来る男」

 うん。

「どうでもいいの。労働者」

 はあ。

 非道いな。

 真面目なのに。

「あんたも真面目」

 はあ。

 あー。

 かたじけない。

「どの階級の作法!?」

 何が。

 良く分からない。

 女って。


 +


 変。

 コイツ変。

 手柄を報告して来ない男って初めて見た。

 エリスノート。

 お願い。コイツを嫌わないで。

 あんたが馬鹿に見えちゃう。


 +


 妹。

「?」

 町から来た仲間の名前、全員言える?

「…………」

 なのよ。

 顔は分かるんだけど。

 増えるのかしら。

 ハーレム。


 +


 ふふふ。

 70人くらい、あっという間に突破しそう。

 でも、いいの。

 魔物から守ってもらったのは、私とトゥーニーちゃんだけだから。

 私の時は、ザックさん1人きりだったから。

 私の方が上。

 私が、あの人の1番なの。

 ああ。

 年上なのが、つらい。

 若返りたい。

 何て浅ましい……。

 このノノ=フォノーツが……。


 +


《コイツ、16くらいにしか見えないのににゃ。黒髪だし》

 にゃー。

 アルローニャしつこい。


 +


 私の名前、憶えてる?

「ミルティーミル……」

 そっか。

 お姉ちゃんの名前言える?

「エリスノートとルミスティア」

 うん。

 さんを付けろ。

「あー」

 何だ。

「それは君に失礼かな」

 はあ。

「お姉さんより妹は下とか」

 あれ?

「他人に言われたくないよな? 俺は兄弟いないけど」

 おかしい。

 コイツ、心を読めるな。

 …………。

 殺さないと。

 あれ。

 でも、素手?

 んー?

 効かないの?

 我が「錆」の魔法が。


 +


 と言うわけなんだよ。お姉ちゃん。

 2人がかりでアイツ殺そう。

「あのさ、ミルティーミル」

 うん?

「あんたに『一般論』という概念は、ちょっと早いのか」

 何やねんな。

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