呪い4 実現【HEAT】

 どうしよう。見合いかよ。

 子爵家? たかが。

 この私が?

 この世にはお姫様5人を物にする男もいるのに?

 たかが子爵。

 商会の金欲しさに。

 へえ。

 商売出来る婿は要らないのかな。父さん。

 孫の顔見せたくない。

 んー。

 もういいや。

 何とかなるでしょう。

 魔法使えるなら。

 風よ――私を空に。飛行【BLUE WING】。

 バイバイ。デルハエル。

 エリスノートと妹たち。

 商会の皆。

 ルルララをよろしく。


 +


 ここオルハラなの?

 あー。

 お金は持って来たけど。

 どうしよう。

「あなたは?」

 う。

 ギズーファウスの神官様だ。

 いえ、何でも。

「家出?」

 あぅう。

 何で分かるの。

「召し物……」

 ?

「ふりふりリボン付けた冒険者などいません……」

 あれー。

 私、雇ってもらえない?

「あの。教会に来ますか」

 いいのかしら。

「どこの方?」

 あー。

 嘘つくの嫌だな。

「私、アジリア=レバンゴと申します」

 しょうがないな。

 名乗られちゃった。

「イシュリア=ジルナード」

「あら」

 ?

 知ってるの。

 ジルナード。

「いえ、珍しいなと」

 ですか。

 この国ではいないのか。

 オルハラね。

 ま、いいでしょう。

 戦争なんていつの時代よ。


 +


「レモンを名乗ってください」

 ふん?

 イシュリア=レモン?

 いいよ。

 アジリアさんが言うなら。

 18くらいかな。

 え。

 タメ?

 あー。

 流石は神官様だ。

「見習いですよ」

 ふーん。

 いい人だ。


 +


 あのね。あのね。あのね。

 おまえたち。

 なにがほしい!

「姫様!」

「夫かなあ」

 んー。

 夫。

 あ、旦那様のことか。

 んー。

 大好きな3人の侍女の旦那様!

 あれー。

 同じ人だって出たぞ。

 困った。

 マルセリータ、このモナガンに勉強に来てるのに。

 いつかログバモス王国に帰るのに。

 ギズーファウス様の教えでは奥様は1人しか持っちゃ駄目なの。

 あれー?

 マリー。エリー。サリー。

 マルセリータ、お前たちとお別れするの?

 そんなの――

「うわーん!」

「姫様! どうされました」

「ああ、困った」

「仕方ないわよ。4歳だもの。キャサリヴェールめ……」

 教皇様。

 パパとママがどんな悪いことをしたの。

 頑張ってたのに。パパとママ。


 +


 あー。

 建国の伝説か。

 あ。

 今更思い出した。

 馬鹿か。俺。

 ログバモス王家は大衆先導能力【FOLLOW ME】という能力を持っている。

 ああ。

 信念のギズーファウス様が授けた力だそうだ。

 民が、

「肥沃な大地が欲しい!」

 と願って。

 大陸の最南まで導いたそうだ。

 ふん。

 何で今こんなこと思い出すんだ。

 次の行き先は?

「オルハラ……」

 うん。

 何かぞわぞわするな。


 +


 あー。

 マリー、エリー、サリーの旦那様近付いてる。

 でも遠い。

 マルセリータ、案内出来ない。

 いつになったら5歳になれるのかな。

 うーん。

 この3人に結婚して欲しい。

 キャサリヴェール様に祝福してもらって。

 駄目なのか。

 同じ人のお嫁さんになるって。


 +


 や。

「マハエル……」

 頃合いかなと思って来てみた。

「何だ」

 あー。

 跡取りは他にいる。

 そう言って欲しい。

「ふん」

 好きだ。父さん。

 愛してる。

 だけど私は、

 研究の方が好きだ。

 強い魔法具より、

 地位をばんじゃくにする魔法具。

 最強の兵器を作って、

 それで殺されたら笑い話。

 世界を制圧したい。

 こんなちっぽけな公国要らん。

「そうか」

 ああ。

 ちっぽけ。あんた。

「蟻には蟻の意地がある」

 そうか。

「エルリアという子はアホだぞ」

 ?

 誰それ。


 +


《くくく》

 ?

《ルージェイラ=ロギンの名。知らんな。お主》

 ?

《間に合うとええのう?》

 ?

《射程には入っているのだが。にゃりーん♪》

 何なんだ。


 +


 んー。

 隊商たち行っちゃった。

 困ったな。

 どうすれば稼げる。

 酷いな。あの町長。

 爵位もない癖に後妻とか。


 +


 流石に申し訳ないわ。

 お父様のしたこと……。

 ルルラルカお姉様。

 ルージェイラさんを第1夫人にしてあげてください!


 +


 どうしてこうなったの?

「いいけどな。1人くらい……」

 あら。

 甘ったるくない声だ。

 宿代助かる。

 仕事探そう。

 あー。

 追っかけが24人?

 いいのかな。

 22歳か。

 超美人と言うか。

 この人を性別でくくるのって失礼かしら。

 超美形。

 私16だけど、そういう趣味は分からん。

 ザックか。

 まだ顔忘れてないのか私。

 一瞬だけだったのに。

 ただ。

 バケツプリーヌって何?

 ルルラルカ。

 どっかで聞いた気も。


 +


 マリー15歳、エリー15歳、サリー16歳だ!

 足すと46歳。

 かけると3600歳だ。

 マルセリータお勉強頑張ってる!


 +


 試しに魅了魔眼【AID ME】?

 男ではないか確かめるために?

 いや。

 胸あるし。

 お風呂ご一緒したの。

 うん。

 ついてない。

 ちゃんと子供産める性別でした。


 +


 え。

 イシュリアお姉ちゃんですか。

 来てない。

 来てないです。

 何よ。お姉ちゃんいない時に。

 ルミスティアも使えねえ。

 私を何だと。

 許さない。

 帰れよ。

 ここ私の家だ。

 入りたいなら金で買え。

 ふんだ。

 うー。

 良し。背中向けた。

 錆よ――金銀を砕け。取立人【BREAK COIN】。


 +


 はあはあ。

 私たち全員がザックの嫁になるまでには、まだまだあるんだけどさ。

 これ。

 ブレシーちゃんの金貸勇者【MONEY WARS】をキャンセル出来る。

 壊してしまえばいいんだ。

 呪いをかけた銀貨もしくは金貨。

 こんな所に天敵が。

 錆か。

 いやー。

 使えなさ過ぎて逆に欲しいな。

 可愛い。

 ミルティーミル。

 ブレシーちゃんは母性に目覚めた。


 +


 儲かってないだろ。店主も。お前も。

 あー。

 ルルラルカ=バケツプリーヌだ。

 うん。

 すまん。父さん。

 この姓を捨てられたこと感謝している。

 誇り高き8本腕のこの私がバケツプリーヌか。

 運命よ。

 決闘を申し込む。

 光よ――満月をこの身に。月光吸収死神演武【FULL MOON FIGHTER】。


 +


 あらー。

 ルルラルカお姉様。

 もとい。

 ルルラルカさん。

 どう見ても武芸者ね。

 素人の女の子には分からないらしいけど。

 んー。

 あー。

 こっちが気付いたことに気付かれた。

 どうしよう。

 始まりの魔法使いって知ってるかしら。

 それとも普通の魔法使いかしら。

 うーん。

 探りを入れてみるか。

 危ないかしら。

 タニシにディーダーラバーのたとえもあるし。


 +


 ふーん。

 短剣か。

 危ないからしまって欲しいが、売れば高いしな。

 うーん。

 ああ、あの子な。

 町長の娘。

 何て言ったっけ?

 妹さんの方は覚えちゃったよ。

 事ある毎に「姉がすみません」と謝って来るから。

 トゥーニーちゃんのお姉さんとしか覚えてませんなんて言ったら傷付けるだろうなあ。

 弱る。


 +


 奴隷商人か。

「ああ」

 ベルーデリアの時代になくなりました。

「?」

 どうされました。

「ベルーデリアって何だっけ……」

 はあ。

 統一王朝。

「ああ」

 群骸操演ユシュラエル=メノウ。

 UNDEAD PAWNS。

「え」

 ゾンビの群れに奴隷なんか成す術もなく喰われた。

「え……」

 そう感染かんせん【WHITE TO BLACK】。

 戦う技も教えていない奴隷など、戦争になったら邪魔なだけ。

 だから、もう奴隷はいないのです。

「ユシュラエルって医聖ユシュラエル……?」

 医聖?

 はあ。

 あー。

 確かに。

 んー。

 何と言うか。

 胃とか腸とか。

 五臓六腑。

 見たことないけど知ってはいるな。

 アレ。

 食べた物が出て来る仕組み。

 肉食べないと死んじゃうとか。

 野菜食べないと便秘するとか。

 汚物は病気の素とか。

 知ってますね。

「うわ……あ……嫌……」

 え。

 どうされたんですか。

 えーと。

 お姉さん。

「ユシュラエル……お前……何人殺した……」

 ?

 あの。

 何故歴史上の人物に呼びかけを。

「15の癖に……」

 あの。

 何が起きてるの。

 …………。

 前世?

 8本腕の1人、ルルラルカ=フィール?

 …………。

 転生?


 +


 嘘とは思えない。

 アネッティア、シャクーセル、ヴェルギース、ライオネル、ユーディリス、ユシュラエル、そしてルルラルカ。

 屍の魔法と葬礼無礼【DEAD AND MORE DEAD】だけで大陸を平定?

 しょうもないホラを吹く人ではない。

 この女性。

 私の父テオシド。

 その剣があれば……。


 +


 あ。思い出した。

「何。ノノさん」

 あのセシリアさん。フタクビイノシシの情報を売ってくれた詩人さんです。

「は?」

「えー……」

「なのですか」

 あ、いえ別に。

 それだけです。

 行きましょう。

 …………。

 どうしましょう。

 あなたたちがザックさんに会えたのは私のおかげ。

 そう聞こえたでしょうね。

 あー。

 どうしよう。

 セシリアさんの方は覚えてるのかな。


 +


 ?

 あー。

 あの黒髪。

 あの時のか。

 んー。

 あー。

 団長に交渉任せてたから頭使ってなかったな。

 んー。

 フタクビイノシシを狩る?

 で、どうするの。

 村人にお肉振舞うの?

 アホな。

 ん?

 んー。

 保管の魔法。

 これだ。

 うーん。

 私、最年少で舐められてるし黙っておくか。

 ふん。

 このカード、アイツらに再会しないと意味ないのか。

 ザックなあ。

 ふーん。

 アイツを共有旦那に?

 アホブレシーがカスアイテムくれてやったし。

 うーん。10年老化か。

 爵位持ちも冒険者もクソと知ったしなあ。

 ふーん。

 5歳上かあ。

 団長から見れば3つ下か。

 23の行き遅れには栄誉だろう。

 19歳と16歳もついて来る。

 うーん。

 女……もとい。

 団員増やしてえな。

 若くて可愛い女限定。

 養ってもらう。

 んー。

 詐欺で捕まらずに、ぼろ儲けするってどうやればいいんだ。

 んー。

 やっぱり魔法具。

 こういう結論になる。

 モナガンのデルハエルだっけか。

 私の「草」の魔法いくらで売れるんだ。


 +


 セシリアがアホ顔してる。

 思案顔ってことだ。

 お前、頭が悪いから草属性なんだよ。

 最強ブレシーちゃんを見習え。


 +


 んー。

 1回、封絶魔眼【MAGICIAN HUNTER】の威力見せたいんだけど。

 親に殴られた子供って絶対親を信用しないしな。

 悪いことしてカッとなるのはいいんだけど。

 叩いてしつけを真に受けてるゴミ親の子供は死んでもらうしかないんだ。

 何で小さい子供を叩ける。

 アンフェアなんだよ。

 想像力がないんだよ。

 死ぬべき血統なんだ。

 カタギの敵。

 狩らないけどね。


 +


 うーん。

 歌の魔法使いって癒しの歌が使えるらしい。

 あれー。

 歌の魔法無効化のこれって、もしかしてゴミか?

 いや。

 アレクラルク王の指輪【HONEY】は、それ以上のゴミだからいいんだけど。


 +


 イシュリア様がいなくなってから肩身が狭い。

 うーん。ヤバイ。

 完全演技【BELIEVE ME】じゃ誤魔化せない。

 下っ端の私が邪魔らしい。

 かと言って新参に大きな仕事? ねーのよ。

 無理だ。商会勤め。

 うん。方針転換。

「お嬢様がどこに消えたか心当たりは?」

「分からん」

「街の外……?」

「分からん……」

「不吉なことを言いますけど……」

「言うな」

「お相手の子爵のお名前は……」

「お前程度は会ってもらえん」

「失礼しました……」

「ああ」

 ここで泣きそうなフリ。

「あのな。猛抗議が来た」

「はあ」

「パッペル子爵が犯人はないと思う」

「あらら」

 パッペルね。

 うーん。

 抜け出してる暇がない。

 ふん。

 財産目当て。

 16の娘が家出したから18の旅芸人ではいかがでしょうか。

 あー。

 うーん。

 0ではないのかな。いやー。

 分からん。


 +


 旦那様。

「何だ」

 お嬢様から不思議な魔法具の話を聞き及んでいたのですが――

「ああ、アレか!」

 良し。

「ついて来い」

「はい!」

 お部屋に上がる許可ゲット。

 うんうん。

 強い。私。

「これだ」

 話題性【RANKING】って言うのか。

 属性魔法使いじゃないと魔法具はな。

 あー。

 そうか。

 遺跡荒らしには魔法使いの仲間が必須。

 鑑定人として。

 うーん。

 いや。

 誰が骨董の正確な価値を教えるか。

 ガメる。

 ふーん。

 やっぱり凡人に一攫千金なんてないのか。

「む?」

「何でしょう」

 え。

『オルハラ王国のコルノルドの町に人狼がいる。属性魔法使いと能力者がいるため動きようがない』

 えっと。

 魔法使いは分かるけど。

 能力者って、私たちのことか……?

 あ。

 !

 完全演技【BELIEVE ME】。

「あの、魔法使いは分かるのですけど……」

「ああ」

「能力者って何?」

「知らんな……」

「あの。これどうします?」

「ああ……」

「旦那様、これチェックしている時間ありますか……?」

「あー。お前なら信用する。あのな。報酬は出す。カンザレー家のお嬢さんたちなら口外はしない」

「? はあ」

 カンザレー……。

 エリスノート=カンザレーだっけ。16歳。

 下の妹の名前は忘れた。

 2人だっけか。


 +


 そういうわけで。

 住み込みをさせて欲しいのです。

 お嬢様のご友人。

 すみません……。

 使用人の私ごときが。

「あ、いえ……」

 この人がエリスノートか。

 橙色の髪。珍しい。

「ルミスティア。ミルティーミル」

 挨拶された。

 あー。

 名前忘れるの仕方ないや。どういう親だ。


 +


 あなた。

「あー……」

 コルナスさん。

「あ、ああ」

 うーん。

 能力者の中で1番嫌なのは?

「女全般」

 ですか。

 始まりの魔法使いの女はいませんでしたね。8本腕。

 メギリーア様は失踪したし。

「なんだよな……」

 私たちの祝言を挙げて。

「ああ……」

 子供産ませたかったですか。

「師匠は師匠なんだよな……」

 でしょうね。

 初恋ね。

「あの人、剣が上手いかどうかが全てだ」

 ですね。

 どんな子供でも足りないんだろうな。


 +


 ふむ。

 封絶問答とは何ぞやか。

 ふふ。

 君がそう言い出すのは読めていた。

 それだけ。

 ふふ。

 ?

 もし「所望する!」と言っていたらどうなるか?

 いや。

 二度と口を利けなくしてやる。

 首を刎ねるのだ。

 問答封絶なのだよ。

 こちらは多忙の8本腕だ。


 +


 ふむ。セシリア。

 私を歌え。

「団長?」

 歌え。


 HEY HEY YOU FOOL

 MONEY MONEY MONEY GOD

 WE ARE SERVANT OF GOD

 NO WORKER NO WORLD

 BUT WE WANNA BE SLOTH KILLER

 DON’T TALK WITHOUT MONEY

 TIME IS MONEY IT’S LIFE


 そうか。

 私は若さを失いそうで焦っているのだな。

 良かろう。

 可愛い後輩たちに同じ轍は踏ませない。

 夫か。

 アレクラルク王の指輪【HONEY】に選ばれたあの青年で良さそうだ。

 これが運命か。

 泣けるなあ。


 +


 ルルララお姉ちゃん優しい。

 好き。

 ルミスティア。

 お前が奉公に行け。

 稼げ。

「ガキゃあああああああああああああ!」

「ルミスティア!」

 姉なんて1人でいいよ。

 古代語で言うところのダブリカードじゃん。

 カードか。

 トランプ以外にカードがあったのかな。大昔。


 +


 イシュリアさんが来てからしばらく経ちました。

 イシュリア=レモン?

 と言うか、この町にあんな子がいたの?

 アジリアは吐きそうにない。

 オグフィス。

 使える魔法はある?

「んー?」

 オグフィス。

「いやー」

 いやー、でなくて。

「アジリアが連れて来たなら平気だろう」

 お金かかるのよ。

 信者の寄進なの。

 あの子、ガンダディスとしか思えないのに。

「うーん」

 何かない。

「生命賛歌【HEAL SONG】」

 回復してどうする。

炎熱防御えんねつぼうぎょ【GUARD FLAME】」

 ドラゴンじゃないでしょう。

「白銀葬送【PURIFY DEAD】」

 ゾンビの群れが来るまで取っておきなさい。

「分かった。故郷愛【CHILD DAY】使う」

 ?

 初耳ね。

 他のもだけど。


 +


 親にお詫びをしたくなる。

 死んでたら墓参りをしたくなる。

 地味。

 だけど効果はてきめんだった。

「お父さん……! ごめんなさい……!」

 ちょろ。

 古代語でチョロインという言葉があったらしい。

 しょうもねえな。

 このジルナード商会のお嬢様。

 魔導学院の取引先って。

 この国では賞金首と同じだよ。

 OK。

 見切り時。

 イブニー。

 アジリア。

 モナガン行こう。

 高価な手土産手に入れた。


 +


 逃げるのは悪手よ。

 そうね。

 イシュリア様を人質に強力な魔法具と交換して来ます。

 これで追っ手は来ない。

「分かった。私が司祭様に言う」

 ?

 アジリアで大丈夫なの?


 +


 能力に目覚めた、のだろうか。

 誰も私の言うことを疑わない。

 これが能力?

 便利だけど。

 何か変。

 うーん。

 まあいい。

 モナガンへ向かう許可は得た。

 神官か。

 神がいるなら、どうして世界を放っておく。

 要らない。

 消えろ。

 神なんかに頼らない。

 金とコネが全てだ。

 イシュリア様。

 あなたを殺さないで良かった。

 人助けをしなさい。

 はい。

 この教え、基本的には正しいです。もうしないけど。

 こんな丸々太った獲物の味を知ってしまったら。


 +


 アジリアもたまにはやるじゃん。

 旅か。

 何日かかるだろう。

 隊商待ちか。

 いや。

 神官なんて雇ってくれる?

 むしろこっちが金払わないといけないような。

 寄進を貯め込んでると思われてるし。

 ヤバいな。

 今から予算申請?

 身銭切るくらいならイシュリア様を殺すぞ。司祭様たち。

 異教徒だし。

 いい異教徒は金になる異教徒だけだ。

 どうすれば?

「あのね!」

 何。

「急いで帰ろう! 風よ――彼らを空に。よく付与ふよ【WELCOME SKY】」

 はい?

 こうして。

 私たち3人とイシュリア様はデルハエルの地を踏んだのだった。


 +


 新しい町に着いた。

 ?

 この町、何か空気がおかしいな。

 俺だけか?

 あの。

「ここはコルノルドの町だよ」

 どうも。

 訊いてないのに。

「ルルラルカ=バケツプリーヌさんに手を出すのはやめた方がいいよ。取り巻きの女の子たちが24人いるからね」

 …………。

 誰。


 +


 バケツプリーヌ?

「バケツプリーヌ……」

「お、美味しそうな名前ですね!」

 ユーノアさんもエルリアさんもフォロー下手。

「バケツプリーヌか……」

 ザックさん。

 婿入りしたら一思いに殺します。

 私の最強魔法、骨切ほねきりぼうちょう【GUILLOTINE】で――。


 +


 にゃー。

 ヤンデレがおるぞ。

《ザック=バケツプリーヌか。打ち切り待ったなし!》

 打ち切りって何。アルローニャ。

 うーん。

 お姉ちゃんを守れか。

 めんどい。

 動物同士でテレパシーが使えるようになっちゃったよ。

 まあ、雀は喰うけど。

 悲鳴がうるせえなあ、本当。

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