ROUND2
呪い1 宿命【WARS】
町での仕事。
ありそうでない。
そりゃそうか。
冒険者なんて、いつ次の町に行くか分からない。
雇う奴いないよ。
高い宿代払ってるし。
町の住人なら普通の賃金で済む。
うーん。
困った。
どうすれば幸せになれるんだ。
俺はザック=ライオダルク。
故郷ワータリ村を出て、マリスティー王国にいる。
国教はガンダディス。
あー。
神聖ログバモス王国が1番の大国でギズーファウス。
周りは当てつけとしてガンダディス。
こういうことなんだろう。
納得が行く。
町での依頼か。
暗殺依頼なんて出す町人いないよ。
貴族なんて信用出来るか。
歌でも歌えないと招いてもらえない。
当たり前か。
+
セシリアです。
そろそろ次に行きてえんだけど。
公爵様、私がお気に召したらしい。
あー。
15歳なんだよな。私。
んー。
食事に近付く隙は無いな。
毒毒花【PRETTY POISON】。
スープのキャベツを毒に変えてえんだが。
バレる。
よそ者の仕業だって。
いい人なんだ。使用人には。
んー。
何かないかな。
+
冒険者は雇わない。よそ者だから。
不文律のようだ。
まあ、分かる。
俺もノノさんに狩り場を荒らされたのが今更ムカついて来た。
主がいなくなったら皆楽勝だと思って山に来るじゃないか。
熊だって強いのに。
俺、化物なのかなあ。
「あの……」
ユーノアさんが言う。
教会も伝道師なんか無視だ。
こんな所で油を売っていていいのですか。
尊い使命があるでしょう?
嫌だ。世の中。
腐ってる。
俺も腐りたい。
楽をして生きたい。
羨ましい。町の住人が。
+
ノノです。
カザーネード公国、逆に行けない。
公爵閣下に隠し子がいた。
こんなこと言えるか。
殺される。
罠。
あのマハエルめ。
+
アネッティア。
「何」
嗅覚強化【SMELL HUNTER】で死体とか探せる?
「あー……」
そこまでではないのか。
「家の外から晩御飯が分かるとか、その程度ね」
うーん。
本当に弱いな。
毒とかは?
「楽勝」
うん。
どうしよう。
文官だったのか。
このサメの杖ね。
ふーん。
8本腕全員の魔法と能力。
ユーディリスの師匠メギリーア。
こんなの知ってるの私くらいか。
うーん。
どうにか金にする方法ないかな。
+
アジリア=レバンゴです。
教会の本当の敵とは何でしょう。
悪魔。
だけど。
これ侵略軍の暗喩としか。
世界は戦争だ。気を抜くな。
1人が仕事を怠けると皆が怠ける。
何人も死ぬ。
そういうお話しでは?
悪魔か。
見たことはない。
と言うか倒せるのだろうか。
うーん。
「何してるん?」
何も。
「分かった」
オグフィスが最近素直だ。
少しは自覚が出て来ただろうか。
ま。
神官になるのは私だ。
+
フォルティマ=レバーオードと言う。
花の23歳。
やりたいことは大儲け。
んー。
魔法具だろうな。
強い魔法具を騙して安く買い叩く。売る。
これしかない。
さて。
私のカモはどこだろう。
+
訊いてみた。
「逆に炎だけの魔法ってある?」
「あー……」
言いたくなさそう。
そうね。
明かすなって言ったの私だったわ。
取り消し。
+
にゃー。
魚は美味いにゃ。
アワビって一度喰ってみてえ。
蟹も。
にゃー。
+
「槍使いかい……」
じろじろと見られた。
私はエルリア=ロマンス。15歳だ。
冒険者になったけど、魔物退治の依頼ってないの?
「うーん。結婚したら?」
「私まだ15です」
馬鹿を言わないで欲しい。
「後4日は仕事がないよ」
「え」
困る。
うーん。
ドラゴンでも現れないだろうか。
+
私はイシュリア=ジルナード。
魔法王国モナガン王都デルハエル在住。
お仕事教えてもらえない。
退屈だ。
芝居が来てるらしい。
ふーん。
観に行った。
綺麗な女優さんがいた。
劇か。
いや。
この国には「ユーディルとラルナ」って言う演劇の最高峰があるし。
異国の物語?
どうでもいい。
興味ないな。
うーん。
ふんふん。
まあ、観れる。
ま、一度観ればいいか。
時間は貴重だ。
+
うにゃーお。
クラーケン食べてみたい。
+
魔法具はどこで売っているだろうか。
いや、違う。
効果が判明している魔法具は高い。
骨董品屋も馬鹿ではない。
それっぽい物には鑑定を依頼する。
ただまあ。
魔法使いなどそんなにおるかい。
私フォルティマが言うからには確かだ。
魔法具な。
一般人はいつになったら身の程知るんだ。
+
ふむ。
偏愛日記【WORLD】はいいアイテムだな。
ただのブレスレットだから疑われない。
まあ、女の私ならだがな。
+
どうにか隊商の護衛に潜り込んだ。
ブレシーちゃんはカザーネード公国に着いたぞ。
安物のステッキを買ってみた。
フランのあれ面白い。
アレは絶対魔法具だが。
ブレシーちゃんはハッタリを覚えた。
魔法具使いの振りをしてお仕事ゲットだぜ!
+
まあ、魔物遭ったことない。
だが、偏愛日記【WORLD】があるということは、魔物は本当にいるのだ。
+
ブレシーちゃんはドラゴンに会ってみたい。
弾の魔法で仕留めたい。
だがなー。
屍毒が凄そう。
街中では出るな。
うーん。
空を飛ぶってどういう原理で?
風魔法使いでもあるまいし。
+
あーあ。
商会の娘って窮屈。
空飛んで逃げたい。
あーあ。
魔法が使えたらいいのに。
ムカつく。
+
まあ、ブレシーちゃんに言わせると、飛行魔法は弱いと思う。
敵の攻撃は届かないけど、こっちの魔法もかわされるし。
逃げ専用。
顔知られてるからなー。
とにかく殺せ。
魔法を見せた相手は殺せ。
約束だ!
+
「その槍危ない……」
え。
変な人がいた。
「ああ、俺ザック」
「はあ。エルリア=ロマンスです」
「あのさ」
席に招かれた。
あれ。
神官様がいる。
ギズーファウスとガンダディスどっちだろう。
私はネルシーク。
「どういう意味です?」
+
ああ……。
ザックさん賢い。
そうなの。
冒険者って遺跡荒らし志願なんです。
狭い場所で小回りの利かない槍?
これは魔法具ですと言っているも同然か。
唖然としてる。エルリアさん。
うん。
好きです。ザックさん。
だけど。
あなたはノノさんが――
+
どうしよう。
道理で仲間が見つからない。
護衛専門?
そんなのいくら……?
もう帰る家ないのに。
+
うーんとさ。
伸び縮みする。
「う」
当たりかよ。
「大変ですね……」
?
ユーノアさんが指先だけで、ちょんと槍に触れた。
?
何なんだ。
+
ザックさん本当に賢い。
+
どうしよう。
この背伸び恋愛【SUPER SPEAR】のことがバレるなんて。
仲間になる?
うーん。
でも。
「あんた魔法は?」
いえ。
お2人は?
「あー」
「…………」
+
ザックさん。
ああ。
間抜けと言いたくなって来た。
+
どうしましょう。
私の鋼鉄防御能力【IRON GIRL】まで知られるわけにはいかないのですが。
そうこうしている内に、ノノさんという黒髪の女性が帰って来たのです。
+
はあ。
何ですの。
ザックさんと決闘で勝ったら仲間に入れる?
殴りますわよ?
勝手に。
+
あー。
一撃入れた方の勝ち。
「はい!」
てりゃー! たー! とう!
え。
何だこの素早さ。
ない。
あるわけない。
無論ノノさんには見せていない。
+
え。
かわされた?
私の槍が?
+
え。
この子、ザックさんと同格?
+
あの。
あり得ません。こんな動き。
この人、何?
+
ザックさんと同じ魔法使い?
え。
何属性ですの?
+
と言うか、ギズーファウス様。
本気のザックさんがこんなに強いなんて聞いてない!
+
困った。
戦ってる場合じゃない。
このザックさんも始まりの魔法使いだ!
+
どうすれば?
ノノさんもユーノアさんも……。
+
にゃー。
+
我が名はルクツォーレ=セニ。
19歳の冒険者だ。
突然だが私は見ただけで人が魔法使いか分かる。
封絶魔眼能力【MAGICAN HUNTER】とママは言ってた。
つまり。
このフォルティマ=レバーオードさんもブレシー=キャットさんも魔法使いだ。
セシリア=エミルルさんもな。
どういう確率だ。
まあ、言ったら殺されるから言わないが。
うーん。
どうすればいいかな。
魔法封じれるんだけど。私。
ちょちょいのちょーいで。
+
我が「時」の魔法に死角はない。
ブレシーか。
魔法具か。
触らせてくれるだろうか。
+
ブレシーちゃんの「弾」の魔法。
破壊特化。
即ち最強。
セシリア=エミルル?
吟遊詩人な。
舐めてんのか。
この世はパワーだ!
+
うーん。
草の魔法。
野草判定【ANALYZE PLANT】とかあるけど。
薬になる草?
ねーよ。
病気になったら、さっさと死ね。
フォルティマにブレシーにルクツォーレか。
ま。
たかが「草」と言えど魔法を使える私の勝ちだ。
+
「今思うと、マハエルもですわ……」
なのか。
「ふーん……」
「なるほど」
あ。
俺は指摘した。
「魔法具の効果を簡単に明かすのおかしい」
「?」
「嘘発見能力。違ってたらクビでいいよ」
「あ」
ノノさんも納得した。
「あの……」
「エルリアさん?」
「マハエルさん、嘘つきました?」
「いえ……」
「魔法使いなこと見切られてます」
「あ」
ノノさん……。
こんなうっかりさんなのか。
あー。
「闇の魔法使いは黒髪しかいないって知ってます?」
「何ですか、それ?」
ユーノアが困惑顔だ。
ノノさんはぎょっとした顔をする。
女の子2名は見てないが。
「ノノさん」
「あ」
「俺の能力、友軍探知【WHERE YOU】。顔と名前を知ってる人間の居場所が分かる」
「え」
「これに免じて」
「あ」
秘密を持ち合うのは良くないと思った。
何かの運命だ。同類に出会ったの。鋼鉄防御【IRON GIRL】。
「力よ――かいなに宿れ。打撃演譚【POWERFUL YOU】」
「え……」
ノノさんの両拳が光る。
上手いな。ユーノアさん。
「あの……」
「…………。闇です。合ってます」
「分かった」
庇う。何があっても。
+
見切った。
このブレシー「弾」の魔法使いだ。
セシリア。
野菜スープを頼んだ途端にやりとした。
草。
このフォルティマ=レバーオードの勘に間違いはない。
んー。
我が怪奇過去回帰【RETRY】。
交渉でしくじった時に使うのが1番いい。
どいつもこいつもキレやすいからな。金なくて。
でなければ。
この伝説の人命優先旅商人【NOISY CARAVAN】団長は勤まらん。
結成から1日で金貨300枚の売り上げだぜ? 伝説だ。
+
このフォルティマな。
何かおかしい。
魔法使いだと思う。
ブレシーちゃんの勘は確かだ。
恐れを知らな過ぎる。
時間でも巻き戻せない限り、こんな大胆不敵な生き方は出来ないはず。
確かめようがないが。
むぎー!
+
と言うかさ。
「ブレシー」
「?」
「お前、弾の魔法使い?」
「は? お前、何で!?」
「時よ――戻れ。怪奇過去回帰【RETRY】」
時は戻った。
そして――
「セシリア」
「はい?」
「お前、草の魔法使い?」
「え。何で……!?」
「時よ――戻れ。怪奇過去回帰【RETRY】」
な?
私、最強だろう?
さて。
ルクツォーレか。
「なあ、ルクツォーレ」
「何?」
「お前の魔法属性は何だ?」
「え」
「何言ってる?」
「あなた……」
あー。
ヤバいな。
慌てず騒がず。
「時よ――戻れ。怪奇過去回帰【RETRY】」
んー。
全てなかったことになったけど。
んー。
ルクツォーレ魔法使いではないのか。
ふむ。
冒険者ランクか。
酷い話だな。
Sランク冒険者強盗に遭う。
もしくは罪をでっち上げられて官憲に殺される。
まったく。
アホな笑い話もあったものだ。
と言うか。
SUPERのSだろ。
スーパーランク冒険者!
逆にダサいよ。
てか、冒険してないで働け。
26歳過ぎたらこう言わないとね。
私も結婚したいんだけど、どこかにいい人いないかなあ。
+
ブレシーのステッキがハッタリなのも確かめた。
いやー。私、最強。
ふん。
自分から名乗らせたいな。
かと言って剣士が得物に触らせるとか不自然過ぎる。
強いんだけどね。
我が一も二もなく【ONE TWO SLASH】。
+
「マハエルを無視するの無礼だと思う」
「え……」
俺が言わないと駄目なのか。
女同士な。
「うーん」
「ユーノアさん?」
「何て理由をつけて?」
「ああ……」
エルリアさんも困り顔だ。
「魔導学院に所属しろ。でなければ殺す。私の実家はカザーネード公爵家だ」
「そこまで言ってましたの……?」
んー。
好意で魔法具の効果をばらすなんてないよ。
部下にならなかったら殺される。
魔法か。
願ってもない話だと思う。
ユーノアさんが力の魔法使いなのは知らないと思う。
サプライズだ。
俺たちを高く売れる。
+
セシリアです。歌うか。
8本腕なー。
この馬鹿3人が知ってるとは思えん。
RED ROSE BLUE ROSE
LILLY LILLY CRYSTAL
WE LOVE ALL HER
JEWEL GIRL OR FLOWER GIRL
HOW MUCH MONEY FOR MY FIGHT
お。金貨2枚に銀貨20枚。
ほっくほくー。
+
フォルティマだ。
いい歌だなー。
ふーん。
リュートとか覚えたくなって来た。
荷物になるから無理だけど。
草か。
媚薬とかは無理だろうな。
医者か。
金を請求し過ぎると恨まれる。
割に合わないんだよな。あの商売。
+
うーん。
魔法使い×3。
うん。
別れるとかないな。
「あのさ」
「?」
「我が能力は封絶魔眼【MAGICIAN HUNTER】」
「は?」
「人の魔力の流れが視える。魔法も封印出来る」
「え」
フカシとそれ以外を見抜くくらい出来るだろう。
魔法使いなら。
「あー」
「げ」
「うわ……」
分かったっぽい。
そう。
残り2人も同類なの。
+
最悪だ。
時間巻き戻しても意味がねえ。
+
やべえよ。
フォルティマへのアドバンテージ消えた。
+
困ったな。
このルクツォーレ、封魔の正鵠の子孫かな?
名前知らね。
+
猫ちゃん。
アワビに蟹にクラーケンか。
あー。やっぱり動物ってアホだ。
会話術【SPEAK ANIMAL】使って損した。
私はトゥーニー=マープル14歳。
5つ上のお姉ちゃんは相変わらず、ルルラルカ=バケツプリーヌさん22歳に求婚してる。
同性婚を認めてる神様いねえんだけど。
+
んー。
虚ろにほへと【SLEEP】がじわじわ惜しい。
本体は要らないけど。
ここ何て町かしら。
オルハラ王国のコルノルドの町か。
どうも。
あーあ。
町の名前を教えるだけで金になる仕事とかないかなあ。
+
「名前は?」
「ルージェイラ=ロギン」
「本当か」
「嘘つく理由はないわ。信じて」
魅了魔眼【AID ME】。
「分かった」
うん。
調子に乗って目立つお願いは出来ないのよ。
ザックへのアレ、ボーダー。
ふーん。
今頃は女の子2人とよろしくやってるのかしら。
両手に花ならあれ以上仲間増えないでしょうね。
+
OK。
このルクツォーレ=セニ様が副団長だ。
きりきり働け。弾のブレシー、草のセシリア。
団長頼もしい。
+
ザックだ。
んー。
仲間が欲しいな。
自分たちで隊商やるのが1番いいんだろうけど。
まったく商売のコツが分からない。
プロなんだなあ。依頼人たち。
秘訣なんて教えてくれないよ。
うーん。
ふん。
依頼人の名前を教えてもらう。
駄目だ。目立つ。
うん。
んー。
どうやれば大儲け出来るんだ。
魔法具かな。
モキャペリートでも銀貨18枚くらいだろう。
食べ物は儲かりそうにない。
+
んー。
アレクラルク王の指輪【HONEY】言いそびれてるなあ。
あー。
駄目だな。
取り出すと、これ売り捌こうになる。
駄目だよ。こんな女の敵の魔法具。
+
んー。
怪奇過去回帰【RETRY】、隠し事を聞き出すのには向いてないんだよな。何を悩んでるんだ。ブレシーの分際で。
+
んー。
毒毒花【PRETTY POISON】ね。
威力を抑えて、笑いが止まらなくするくらいには出来るけど。
自白とかねーわ。
そんな便利な魔法ないと思う。
+
しゃべらなければ殺す。
いやー、無理。
15秒余裕でオーバー。
団員離反。
解散。
あり得ない。
うーん。
私、無敵のはずなのに。
+
歌うか。
白い白い雪の山 緑の緑の万華鏡
川は流れる れれれれと
私は眠る 母の腕
踊れ 踊れ 私の息子
武芸を覚えるその前に
ダンスを極めてごらんなさい
男爵様になるそのために
可愛いあの子にプロポーズ
お前がいいならそれでいい
あー。
盛り下がった。
失敗かな。
あ。
4人分おごってくれるんですか。
どうも。マスター。
+
ザックだ。
3人の嫁が出来た。
なーんて。
とにかくだ。
マハエルさんに会おう。
俺とユーノアさんは、ちらっとだったけど。
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