呪い5 歴史【MEMORY】

 トゥーニーだ。

 なあ、冒険者ってアホなのかな。

 杖を振りかざして歩いてるお姉さんを見かけたんだ。

 どう見ても魔法具なんだよな。

 多分ウチの姉ちゃんよりは年下。姉ちゃん19。

 22歳のルルラルカお姉様とは吊り合ってるのよ。じゃねえんだよ。

 美人に産まれるって大変だな。

 姉ちゃんもそこそこ美人だけどさ。


 +


「なあ」

 どうした。オグフィス。

「アジリアの態度がおかしい」

 ふん?

「エリカ。どう思う?」

 私はギズーファウス教会なんかに行けないよ。

 フレオーライが好きなんだ。

「うーん?」

 弱っちい男が泣くのを見るのが好きだ。

 こんな奴に結婚の権利なんかない。

「うーん」

 女には求婚を断る権利がある。

 はした金しか稼げない日雇い奴隷が。

 娼館に行け。

 家庭を作りたいなど生意気だ。

「うーん」


 +


 その2人とは港町でお会いしました。

 がっしりした青年と黒髪の女性。

 女性の方がやや落ち着いていて、最初は奥様かなと思ったのですが。

「あの……」

「あー……」

「困りました……」

 港の乗船券売り場でした。

 困ったことに残り2枚。

 わたしたちは、ほぼ同じ時間に売り場に入ったのです。

 海。

 初めて見た。

 トルーザの町にはない。

「買うか買わないか決めておくれ」

 困った。

 こういう場合どうすれば?

 決闘?

 え。

 殿方と?

「あー……」

「ザックさん……」

 相手も困ってらっしゃる。

 どうすれば。

 と。

「あのさ」

「はい」

「男と同室になったら大変だろう? 神官様が。1便遅らせてノノさんと同室になるように調整しないか?」

「え」

 ノノさんというのは奥様でしょうか。

 ああ、いえ。

 こういう情況で自分の妻を「ノノさん」なんて呼んだりしませんよね。

 夫婦でないのか。この2人。

 冒険者?

 ?

 あの。

 殺すような目付きで睨まれてるのですけど。ノノさんに。

 え。え。え。

 わたしはユーノア=ミシャハート。

 これが夫と夫の第1夫人との出会いでした。


 +


 3人旅になった。

 海路か。

 なしになった。

 隊商の護衛をして、それで――

 えっと。

 何の展望があるんだ。その先。

 ノノさんには聞けない。

 どうしよう。

 女連れなせいで睨まれる。

 剣も持ってない癖に護衛かよって。

 あー。

 どうするかな。

 護衛も何も。

 稼げそうにないな。

 魔物の肉料理店なんて。

 ウチくらいだよ。山の主なんかがいるのは。

 ノノさん泣きそう。

 ユーノアさんも困ってる。

 どうしような。

 こんな遠くまで来て。

 1人で帰るなんて無理だよ。ワータリ村に。

 皆とお別れしてくれば良かった。

 あー。

 どうしよう。


 +


 うん。

 何故女の私が24人の適齢期の美少女たちを養わねばならんのだ。

 何のメリットもないだろう。

 帰ってくれ。

 な。

 帰れ。

 頼むから。

 魔法で一掃出来ないのつらい。

 根はいい子たちなんだよ。


 +


 ユーノアです。

 戦いってないのでしょうか。

 護衛とは名ばかり。

 次の町まで行く酒と食料をおごってもらうだけ。

 報酬すらせしめる。

 こんな生活が長く続くと思えません。

 駄目なのですね。冒険。


 +


 何のために修業したの?

 私の人生何だった。

 闇の魔法使いだとバレる。

 人里では暮らせない。

 どうすれば?

 分からない。

 お金。

 いつまで続く。

 どうすれば?

 私……。

 こんな悲惨な死に方は嫌だ。

 じりじりと若さを削り取られて。

 ザックさんか。

 ただの田舎者。

 だけど――

 彼がいないと。

 女って。

 冒険者の子供なんて産みたくない。

 町人の子供も産みたくない。

 王様の子供も産みたくない。

 公爵から男爵まで全員要らない。

 ねえ、ザックさん。

 あなたも若い女の方が好きですか?


 +


 セシリアです。

 んー。

 8本腕の伝承。

 集めようと思うと難しいな。

 と言うか、散逸しているか。

 あんまし愛されてないのか。民衆には。

 要らないか。

 かと言って民衆に愛される英雄な。

 弱そう。逆に。

 んー。

 この稼業無理かなあ。

 弱いんだよ。草の魔法。冒険者? きっつい。

 出来ない。

 どうしよう。


 +


 魔剣、葬礼無礼【DEAD AND MORE DEAD】。

 ユシュラエルの使えるほぼ全ての魔法が、この一振りには詰まっている。

「最高傑作!」

「俺以外が持つと?」

「ゾンビになる。およそ3日で」

「手放すと?」

「次の持ち主がゾンビを操る!」

「喰われるのか」

「喰うって表現していいのかなあ」

 同僚のことが好きになった。

 これで王のため役に立てる。

 ユシュラエルの負担が半分になる。

 大陸の平定が倍の速度で進む。

「じゃ、行って来る」

「兵隊要らねえなあ」

 3年で世界は滅びた。

「ラルナと言います……」

「ふーん」

 結婚をした。

 魔法使いなのかどうかは知らない。

「俺のことはユーディルでいい」

「ユーディリス様……」

 妻はいつまでも自分に懐かなかった。


 +


 ふぅん。

 あのお姉さんな。杖持ったお姉さん。

 うーん。

 警告してみようかな。

 猫ちゃーん。

「うにゃ?」

 獣よ――我が伝言を伝えろ。手紙【MESSEAGE TALKER】。

「にゃわん!」

 ふぅん。あっちにいるのか。

 尾行しないことが、この魔法のルール。

 と言うか、猫なんか追い付けるか。


 +


 えーと。

 何これ。

 部屋の前に猫ちゃんがいた。

 え?

 どうなってんの。冒険者の店。

「にゃー。『あのね。お姉ちゃん。その杖が魔法具なの見れば分かる。気を付けた方がいいよ』……にゃー」

 え。

 猫ちゃん去っちゃった。

 動物を操る魔法使いっているの?

 え。

 イフリート呼ぶ?

 あー、でも。

 敵ではないのか。

 えー。

 どうしよう。

 チャッピーたちにも気付かれてるのかな。

 まさかね。


 +


 大陸の平定が成った瞬間を、私アネッティア=サリーカは見ていない。

 大きな病にかかった。

 ユーディリスの顔が見たかった。

 だけどアイツは戦争に出ていた。

 戦争が楽しくて仕方ないらしかった。

 何が?

 何がいいの? 力比べ。

 シャクーセルという大駒を自分たちだけ持っておいて。

 この勝負はシャクーセルがいたかいないかだ。

 こんなもので勝ったから何。

 私は倒れ、

 シャクーセルが、

「寝てろ。何年でも」

 あ。

「何百年でも。何千年でも」

 あのね。

 私、普通に恋をして死にたかった。

「付き合う。約束する」

 あの。

 どうして。

「友達だもんな。ごめんな。書類仕事全部任せて」

 あの。

 いや。

 皆と別れたくない。

 独りぼっち嫌……。

「待ってろ。必ず会おう。親友」

 ルルラルカも友達なの。

 どうして私だけこうなるの。

 嫌なの。

 ユーディルを更生させたいの。

 お前なんか剣がなきゃ何も出来ないよって。

「うん。お休み」

 ああ。

 やめて。眠い。

 痛い。身体が。

 お願い。

 私を見捨てないで。

 シャクーセル。ルルラルカ。

 他の奴らはやっぱり敵だ。陛下も。

 幸せになりたいのに。

 幸せを馬鹿にする。

 弱いのが悪いって。

 好きで弱いわけじゃないのに。


 +


 勝つとは一体何だろう。

 戦のない世界で何をすればいいのか分からない。

 退屈だ。

 もう敵はいない。

 何をすればいい。

 まだ22なのに。

 アネッティアが死んだ?

 …………。

 困った。

 責められているように感じる。

 戦士など女1人救えないと。

 つまらない。

 何のために俺たちは。

 1人でも欠けたら駄目だった。

 退屈だ。

 俺の人生は何のためにあった。

 師匠はどこに行ったか知れない。

 あー。

 どうしような。

 これ以上鍛えても。

 俺のこの才能は何のため。

 誰のため。

 平和か。

 平和とは誰の利益になるのだろう。

 陛下ですら。

 ああ。

 退屈だ。

 戦争は終わった。

 俺たちはどうしろと?


 +


 オグフィス。

 お前どこに行っているの。

「あー。男ではないよ」

 そう。

 …………。

 魔法使いね?

「あ」

 どんな魔法?

「言えない」

 宗派は。

「えーと」

 分かった。

 フレオーライなのね。

「いや……」

 自覚はあるの?

 見習いとは言え神官なのよ。

「いや……」

 何が「いや……」なの。

「だって……」

 言い訳無用。

 外出禁止。

「う」

 あなたのためなの。

 嫌われてるのよ、お前。

 司祭様に。

 司祭長様にも。

 あの件で。

「え」

 神官見習いが平気で人の悪口を言った。

 どう思われると思う。

「あの……」

 人殺しと言い放ったのよ。

 証拠もないのに。

 これだからギズーファウスはと言われているのよ。

 私もアジリアも出世の目ないわ。

「え」

 アジリアには言ってないけど。

 どうすればいいの。

 私たち民間で生きるなんて無理よ……。

「あの」

 どうすればいいの。

 長くて3年。

 魔法なんて……。


 +


 目を覚ますと。

 女の子がいた。

 特徴のない3人の若い男も。

(え)

 追い付かない。

 火。

 火が灯っている。

 女の子の頭上に。

「おい、お宝じゃないのかよ!」

「人間? 女?」

「あのさ。あの宝の地図どこで買ったの。チャッピー?」

 え。

 何なの。

 言葉は分かる。

 私は――

「お前たち、どこの国の者?」

『え』

 何。

 何をきょとんとしてるの。

「あの……」

 女の子がおずおずと挙手をして言った。

 ?

 ヴェルギースの杖?

「私たち、ここに閃く挽歌の剣があると……」

 ?

「ユーディルが何の関係があるの」

「あ」

 あって何。

「閃剣挽歌ユーディリスをご存知なんですか?」

 何。

 舐められてるの?

 あー。

 何か魔力が満ちてる。

 どうしてくれよう。

 だけど。

 近距離で使える魔法がない。

 思い出して来た。

 シャクーセルの造った治療用ポッドで寝てたんだった。

 今は何年?

 あー。

「ねえ、ヴェルギースはどうしてるの?」

「……誰?」

 …………。

 面識がないのか。

 つまり奪ったのか。

 敵か。

 良し。

 殺してから考える。

 けど。

 何だ、この狭い洞窟は。

 外に出てからね。

 殺すのは。

 うーん。

「外に出たい」

「……あなた名前は?」

「?」

 あー。

 どうしよう。

 偽名。

「ナナペー」

「へえ」

 ?

 疑うのかしら。

「私はフラン」

「ふぅん」

「フラン=ピスケスよ。あなたは」

「え」

「ふん」

 あ。

 とっさに苗字まで、でっち上げられない。

 何を言っても不自然になりそう。

 こんな名前をつける親がいるかって。

「あのね。炎よ――我を侮辱する者を焼け。屈辱反射【FIFTY FIFTY】」

 え。

 この子の魔力高い。

「私は名乗った」

「…………」

「あなたが名乗らないなら、炎があなたを焼くわ」

 !

 やられた。

 これ。

 嫌だ。

 どうすれば?

 敵。

 十中八九。

「もう一度聞くわ。名前は?」

「…………」

「フルネームでお願い」

「……アネッティア」

「フルネームでと言った」

「……アネッティア=サリーカ」

 嫌だ。

 殺される!

 助けて。

 ユーディル!

「?」

「おい、フラン」

「どっかで聞いた」

「え? 8本腕だ!」

 ?

 民間人なのかしら。

 助かる目、あるの?

 …………。

 800年?


 +


 あの。

 チャッピー、クール、ワイル。

 考え直して。

 私たち友達でしょう?

「断る!」

「冗談じゃねえ!」

「分け前いくら独占されるんだ! 炎と風の魔法使いなんかと冒険してたら!」

 ああ……。

 待ってよ。

 友達なのに。

 お金のためだったの?

 あなたたち、ひ弱じゃない。

 ああ、これが駄目なの?

 伝わってるの? 私の本心。

「あの……」

 アネッティア=サリーカ……。

 消えて。

 私も食べなきゃいけないの。

「お願い……。あなたしか……!」

 炎と風?

 私より上ってこと?

 許せない。

 私、自惚れてるんだな。やっぱり。

 私は天才だって。

 将軍?

 18歳で?

 許せない。

 伝説なんて聞いてるだけに限るわ。

「さよなら」

「助けて!」

「さよなら!」

 纏わり付いて来るな!

 ブレシーの方がマシ!


 +


 魔剣か。

 俺の実力な。

 大したことないな。

 まあ、下から2番目。

 1番弱いのがヴェルギース。

 シャクーセルとユシュラエルの手柄だな。大陸統一。

 大陸の果てまで見て来たが。

 陸地があって川があるだけ。

 何もない。

 ドラゴンなんかいなかった。

「あなた……」

 ラルナ。

 皇帝になっても、どうしようもないだろうな。

 虚しい。きっと。

 嫌いな奴が死んだってだけで。

 別に。

 差し引き得をしていない。

 勝つってそういうことなんだ。

「だから何?」で終わる。

 アレだけの人間を死なせておいて。

 退屈な隠居生活か。

 割に合わん。

 剣か。

 あー。

 ついて来れる奴いないんだろうな。

 師匠が俺を見つけて嬉しかった理由が分かった。

「あなた……」

 ?

 師匠は8つも上だぞ。

 今何してるだろう。


 +


 工場が出来た。

 私が手作業しなくても魔法具は造られていく。

 退屈だ。

 私の仕事は工場のマニュアル作りのためにあったのか。

 どうしような。

 0から修業したわけじゃないから。

 私がいなくなったら、アイツらまともに機械を動かせないぞ。

 機械が壊れたらどうする。

 直し方のマニュアルまではな。

 ふーん。

 暇だ。

 ルルラルカどうしてるだろう。

 首都機能実質移転してるし。

 この王都、最早空っぽだ。

 ライオネルはどこで何してる?


 +


 物乞いがいる。

 無視だ。

 どうにもならん。

 ああなってはお終いだ。

 まあ、私なら光の魔法で自害出来る。

 醜く生きるよりさっさと死のう。

 どうせ子供作る気もないし。

 あーあ。

 だけど、あの24人な。

 とっとと結婚してくれよ。

 顔はいいんだから。

 私か。

 結婚はごめん。

 何であんな猿どもと。

 ああ、嫌だ。

 美男子か。

 見てみたいな。


 +


「炎よ――我が望みを聞け。魔神交渉【WISH】」

 ありがとう。フラン……。

 イフリート。

 初めて見る……。

「8本腕の生き残りっている?」

『こ奴だけだ』

「そうよね……」

『人間が800年生きるわけなかろう』

 ごめん。

「ありがとう……」

「うん」

 後2人か。

 どうしよう。

 遺跡荒らし? 何それ。

 私たちの文明、遺跡なの?


 +


 愚。

 生き残りはいない。

 本当だ。

「転生」を生き残りとは言わぬ。

 質問が愚か。

 まあ。

 転生を信じている人間は殴りたいな。

 真剣に生きろと。

 良かろう。フラン。

 まだ見守ってやる。


 +


 何でしょう。この人たち。

 いけ好かない。

 反射的にそう思いました。

「マハエル=ズツェンと言うんだ。この人は雇い主のフォルティマ」

「どうもー」

 女剣士か。

 ターバンね。

 気取っちゃってまあ。

 どうしよう。

 どうして私、ザックさんとユーノアさんに宿で待っているよう言ったのかしら。

「えーとね。報酬は相場」

「ですか」

「何か情報で欲しい物ある?」

「ふーん」

 フォルティマさんか。

 情報屋ね。

 あなた程度のおつむで?

 ふん。

 あー。

「ねえ」

「何」

「異様に身体能力が高い魔法使いって何属性?」

「?」

「…………」

 あら。

 マハエルさんの表情が変わった。

 …………。

 知ってますのね。

 聞き出したいな。

 ふーん。

 金髪で癖毛。

 青い帽子。

 ふーん。


 +


 何属性? と来たか。

 彼女、魔法使いだな。

 黒髪か。

 闇?

 不味いぞ。

 こんな女雇ったら。


 +


 始まりの魔法使い?

 …………。

 痛っ。

 何か頭が痛い。

 あー。

 24人の同性に求婚されてればストレスにもなるか。

 ああ、嫌だ。


 +


 メリクツェル=グリムバード。

 知らないのか。エリカ。

 うーん。

 始まりの魔法使いの情報って誰から聞いたっけ?

 教会の授業ではないな。

 あ。

 イブニーだった。

 そうか。

 イブニーの実家に伝わる秘密なのか。

 そうか。

 ごめん。エリカ。

 始まりの魔法使いの情報。

 イブニーの許可がないと言えない。

 お前好きだけど、イブニーの方に義理ある。

 ごめんな。


 +


 あの青い帽子、不自然でした。

 色落ちしてない。

 魔法具。

 ただ。

 触らせてなんて言ったら。

 こっちが魔法使いだと教えるようなもの。

 無理。

 うーん。

 ザックさんのアレ、虚ろにほへと【SLEEP】という魔法具でした。

 女の子が身に着けていると、肌や服に触れた相手を眠らせる。

 譲って欲しいのですが……。

 ユーノアさんがいるし……。

 あの子、魔法使いなのかしら。

 神官様がペンダントに触らせてとか。

 そういうふしだらなことは言わなさそうですが。

 何故か商談がポシャった。

 いいですけどね。

 他の雇い主探すし。

「せめてものお詫びとして――」

 はあ。

 魔導学院?

 モナガンの王都デルハエル?

 来いと?

 あのマハエルさん、お偉いさんなのに冒険してるの?


 +


 ジルナード商会か。

 立派なんだけど。

 親の遺産だなあ。

 これを誇りに思うようになったら貴族だよ。

 アホって意味。

 自分の力で畑を耕せ。

 でないと、私が強いってことにはならない。

 私は「偉い」と思って欲しいんじゃない。

 強いと思って欲しいんだ。

 エリスノート。

 会いたいのにな。

 妹2人何してる。

 ルミスティアとの喧嘩懐かしいよ。

 ああ。

 何で会えないのよ。あの3人と!

 冒険に出たい!

 自分の力で生きたい!


 +


 オグフィス最近来ないな。

 私どうしよう。

 封魔の正鵠メリクツェル?

 風の魔法使いなのかな。

 それともシャクーセルの造った弓なのだろうか。

 ふむ。

 欲しいな。その魔法の弓。

 いくらで売れるだろう。


 +


 …………。

 ?

 マハエルさんも魔法使いかしら。

 いや。

 分からない。

 とにかく仕事。

 2人の仲間を喰わせないと……。


 +


 あー。

 うーん。

 人に「ありがとう」と言ってもらうにはどうしたらいい?

「……故郷に帰る」

 なのか。

 帰れないのよ。

 男爵家との縁談蹴っちゃったから。

 生意気だって。

 嫌だったの。

 あの太っちょ18歳。

 吊り合ってるの歳だけ。

 てか、18のガキが結婚?

 いいわね。親が貴族で。


 +


 …………。

 あ。引ったくりだ。

 捕まえてもな。

 と言うか街中で全力出せない。

 ノノさんに迷惑がかかる。

 困った。

 俺、何者なんだろう。

 山の主。

 殴ったら死んだし。

 うーん。

 あのフタクビイノシシの死体見せられたらヤバいな。

「この人、これを倒したんです!」って。

 やらないだろうけど。

 保管倉庫【GATE DEMON】の魔法知られるし。

 闇か。

 守りたいな。あの人を……。

 永久に腐らないって凄いな。

 どういう原理なんだ。


 +


 私、文官だったの。

 冒険? どうしろと。

 お留守番してた。

 18歳で病にかかって800年。

 世間知なんてない。

 どうすれば?

 私、何も出来ない。

 炎と風。

 殺傷魔法ばかり。

 人助け?

 無理。

 この破壊力が恨めしい。

 私、書類しか書けないよ。

 字変わってないけど。

 知らない言葉あったらどうしよう。

 タニシにスポポマルケットって何?

 タニシにスーターラーベーの間違いじゃない?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る