呪い2 宴会【DEVIL】
歌の魔法か。
はあ。
うーん。
歌えば良いの?
がらぽごえー♪
あ。もう良いの?
はーい。
+
あの子は。
機転が利くのか利かないのか。
アジリアは巻き込めませんね。普通の子だから。
+
イブニーがおかしい。
私に何か隠してる。
アホのオグフィスと、一緒にされるの不本意。
何で私、こんなに強いんだろう……。
始まりの魔法使いなのかな。
だけど。
何の特殊能力も無いよ。
私もメリクツェルのアレしか知らない。
ユーディリス、ライオネル、ヴェルギース。
この3人は、何の能力だったんだろう。
私の能力は分からん。
そんなに特殊なのかな。
魔法封印でないのは確か。
人の魔力の流れが視えたらしい。メリクツェル。
それとは違うな。うーん。
+
16歳か。アジリア。
オグフィスは、先輩に敬意を払う気が無さそうなのよね。
困った。
?
司祭様?
「君たちが魔法使いというのは本当か」
はあ。
一応は。
「ほう」
困りました。
神の奇跡など無いのですけど。
神は冒険者だから。
「仕事を頼めるかね」
荒事以外なら。
「人が死んだ」
はあ。
何人くらい。
「とぼけるか」
ああ……。
誓って。
私もオグフィスも人殺しなど。
「では、アジリアだな。捕まえて来い!」
え。あの。
言葉尻です……!
神よ!
必ず殺す――!
+
アジリアが人殺し?
…………。
あのさ。司祭様。
どうしてフレオーライ教会に、罪を着せないの?
それでもリーダー?
+
この子は!
ああ。
どうしよう。
犯人捜しするしか無くなった。
アジリアか。
うん。
悪い子では無いわ。
+
えーと。
何から手を付ければ。
「ねえ。司祭様。そいつ金持ちだった?」
オグフィス!
すみません。
聞き込んで参ります。
+
神官が来たよ。
+
いい服だね。
聖印は、いくらするのか。
+
下っ端は、つらい。
だけど――
女が司祭長とか、あるのでしょうか。
どうすれば?
+
ふーん。
あのさ。
金が盗まれてなかったの?
だったら息子が犯人だ。
「オグフィス!」
良いんだよ。
これを触れ回るだけで良い。
弁護する隣人がいないなら、本当に息子が犯人で良いんだよ。
イブニー。甘ちゃん。
当たってるかどうか賭けようか?
+
重要なのは犯人を作ることなんだよ?
それが事件を解決するってことなんだ。
皆、羨ましいんだよ。
本当は人を殺してみたいのに。
我慢しないで殺す奴が出やがった。
私も殺してみたいのに。
親殺しか。
やった。これなら殺していい。
違ってたら?
まあ、素行悪いらしいし。
アイツが悪いで終わり。
さ。
アジリアに何買わせようかな。
+
「イブニー」
はい。
「見事であった」
オグフィスの育て方、間違えた……。
+
何なの。
オグフィスって、こんなに腐ってたの?
2人とも、聖印をもらえない見習いなんだけど。
これに先に神官になられたら。
あ、許せない。
勉強するわ。
あのガキ。
イブニー。
姉だと思っていました。
だけど蹴落とす。
私、司祭長になります。
あなたたちは結婚でもして。
私は神に、この身を捧げますから。
ギズーファウスの名にかけて!
+
隊商に潜り込めた。
飯が喰えるだけでもありがたいね。ワインも。
旅芸人の一座も同伴。
や。ルルララ。
「どうも。エリカ」
何か、含みがあるな。
「あなた魔法使い?」
困るな。
冒険者を名乗っているからな。
「誰にも言わないわよ」
「ま、お察しの通りさ」
何なんだろうな。
別に黙ってても良いんだが。
良いさ。
周囲からはブラフに聞こえる。
いつからあるんだろう。このブラフって言葉。
「どんな魔法?」
「敵が来たわけでもないのに、見せられないな」
「そうね。こんなもんでいいわ」
ふーん?
何かされたか?
でも、魔法詠唱無かったし。
旅芸人か。
女優か。
ま、好奇心だろう。
魔法の正体まで明かさなかったんだから、良しとする。
たまには友達ごっこも楽しいね。
私も昔は明るい子供だったよ。あはは。
+
ふーん。
とんでもない人殺しに見えるんだけど。この図々しさ。
隊商の護衛か。
ま、良いわ。
私、誰とも戦わずに済むし。
今日も完全演技能力【BELIEVE ME】は絶好調。
家畜小屋に忍び込んで、豚の頭蹴り潰したこともあるし。
私、強い。
始まりの魔法使いだから。
コイツがへらへら笑って、
「それ以上近付かない方が良いよー?」
とか言って来たら。
ぐしゃ!
うん。
私、強い。
ルルララ=マギスビート18歳。
欲を言えば、擬態のために魔法具が1個欲しいなあ。
+
本当。
普通の子は、伸び伸びしてて羨ましいよ。
私は、どこで間違えたのかなあ。
+
ここがオルハラ王国か。
バイバイ。ルルララ。
「お達者で。エリカ」
うん。
さて。
フレオーライ教会にでも行くかな。
銀貨10枚も払えば良いや。
少しだけ反省して、また人殺しだ。
+
司祭様が、おっしゃられました。
「我が国の国教は?」
「ガンダディスです……」
「隣国モナガンは?」
「フレオーライにございます……」
「フレオーライ教会をどう思う?」
「4大神の末席」
「ふん!」
ああ。
乗り切った。
魔法は見せられません。
誰にも。
+
んー?
イブニー痩せた?
ねえ、アジリア。
「話しかけるな」
ふーん。
んー。
そうだな。
郊外行くか。
空よ 空よ 空よ 空よ
お前たちの領域よ
私にその目を貸してくれ
お前の自由を少しだけ
羽ばたき疲れたその時に
私が頭を撫でてやろう
ああ 自由が羨ましい
お前を お前を お前を お前を
お前の目を貸してくだしゃんせ
良し。
歌の魔法。
鳥に魔法使いを探させることが出来る。
まあ、オルハラ王都バロム。
この街1つくらいなら充分だよ。
半日で全ての魔法使いの顔が分かる。
視覚が伝達されて来るから。
後は、うーん。
イブニーが強いことを祈るばかり。
勝てるのかなあ。
チクりつーか、盗み聞き野郎に。
+
え。
1人だけ?
女?
風って感じがしないなあ。
サザエアーマー亭か。
鎧騎士様の両肩が巻貝になってる。
斬新なデザインの看板だなあ。
絶対に常連にはならないけど、嫌いじゃないよ。
ふん。
あの女、どうやって仕留めよう。
イブニーを口説かないと無理なんだよ。
+
?
鳩が木の枝に留まってる?
…………。
獣の魔法使いか。
+
うん。
王宮に魔法使い0なのも分かった。
国盗りしようかな。
うーん。
ふん。
んー。
あー。
出かけて来る。
ちわっす。
「何だい、君。神官?」
見習い。
えーとね。
今この王都にいる魔法使いの冒険者は、あなただけだよ。
これを伝えに来た。
では!
+
は?
+
うーん。
どういう結果になるかなあ。
まあ、いいや。
運命は風任せ。
これが私の信念なんだ。
ギズーファウスよ、照覧あれ!
+
…………。
事件が起きたら罪を被せられる。
こう言いたいのだろうか?
+
あ、教会の場所教えるの忘れた。
ま、いっか。
会える運命なら、また会える。
アジリア。
お前、魔法使い?
「違います」
ふん?
もらえるなら何が良い?
「闇」
ふーん。
闇の魔法使いは黒髪しかいないって伝承、知ってる?
「伝承は伝承」
そっか。
変なの。コイツ。
魔法欲しく無いのか。
ある日、突然目覚めるかも知れないのに。
んー?
…………。
ま、良いや。
風呂屋行こう。
罪工幻匠に感謝。
ベルーデリア以前の人間が、どういう生活してたか。
想像したくもねえの。うわーい。
+
来るなよ。
「まあまあ」
あのな。
光の魔法使いか? ソイツ。
逆の「闇」を言った。
「ええー?」
何だその「ええー」。
「あーっとね。ないと思う」
根拠は?
「イブニーも光」
は?
「と言うわけだから、お前も明かせ」
げ。
言えない。
「ふーん。私は歌」
…………。
2人教えてもらっても言えない。
「ふんふん」
ヤバイな。
この神官見習いのこと、下の酒場の人間、憶えてるよ。
殺せるか。
こんな仮宿で。
鳥を操る歌があるのか。
厄介だな。
+
あー。
人は操れないよとか信じそうにない。
困った。
このエリカ改宗させたい。
手柄。
+
弱った。居づらい。王都に。
引き返すかな。
+
芝居を観て来た。
あの女優、可愛かった。
あんな風になりたい。
「アジリア?」
う。
困った。
多分、あのお姉さん、ガンダディス。
「どこへ?」
「さ、散歩」
「分かった。勉強ばっかりは駄目よ」
あれ。
?
イブニーが変なような。
+
完全演技能力【BELIEVE ME】
同胞複写能力【COPY MENTAL】
+
何だろう。
急に皆、私に無関心になった気がする。
オグフィスすら。
何でだろう?
+
好評だわ。公演。
私の完全演技能力【BELIEVE ME】は洗脳の力だ。
声の届く人間全てが私を全面信用する。
生活に支障が出る程度の損害がない限り。
エリカか。
魔法使いを初めて見たんだけど。
あれ、仲間に出来ないのかなあ。
ともかく。
この能力は永遠に秘密だ。
私は輝きたい。いつまでも。
+
もう19歳か。
結婚か。
神官にまでなっておいて、そこらの行商人と結婚しろと?
はあ。
助けて。
運命の夫よ。迎えに来て。
子供欲しい。本当は。
私が子供を産んでもいい男。
嫌なのよ。魔法使いですら。
誰なら良いの。私?
+
行商人は無いな。
旅してるし。
王都に在住してくれよ。
と言っても。
王様ですら、手勢に魔法使い0なのか。弱。
ふーん。
イブニーも士官しないな。
何でだ。
魔法使いが要らないのか? 民衆って。
+
ルルララです。
変な奴と出会った。
人命優先旅商人【NOISY CARAVAN】?
1人だけじゃん。
面白い話を聞いた。
アレクラルク王の8本腕。
名前は知ってるけど1人も知らん。
本名、ヴェルギース=ポワポワマイト。
GOOD BYE HEAD。
不思議な魔法を使えたらしい。
空間に3点の印を刻む。
すると、その3角形の面の中にある物が断ち切れる。
生き物でも。
はあん。
明らかに魔法でないな。
私と同じだ。
射程短過ぎて、使い物にならないと思うけど。
敵も、見れば、どういう能力か分かるよ。
三点破断能力【SUMMON BLADE】とでも名付けようかな。
言わないけどね。
始まりの魔法使いの秘密なんて。
ふーん。
4大元素のサメの杖【SHARK QUARTET】?
…………。
何それ。
アースシャーク3匹を召喚。
印をつける。
戦場を囲ませる。
1万の敵兵が、すぱーん!
へえ。
3角形?
単騎で。
へえ。
確かにね。
うん。
本当の話だったら大陸統一か。
ホラでもないのかもね。
嫌だ。
そんな敵と戦うのは嫌だ!
どうやって勝てと!?
ありがとう。団長。
商売、上手く行くと良いわね。
じゃ。
+
メリクツェル様の姓を知ってるか?
グリムバード。
封魔の正鵠メリクツェル=グリムバード。
またの名を禍凶封絶メリクツェル。
常識だ。憶えろ。
他の8本腕か。
?
誰いたっけ。
+
どうしよう。
アネッティア、ルルラルカ、シャクーセル、ユシュラエルなら知ってる。
いいや。
魔法属性教えない代わりに。
この4人の伝承で、お返しとさせてもらう。
+
複合属性?
光、魔、屍?
屍って……。
+
うん。禁忌だ。
バレたら即抹殺。
私の「粉」より怖い。
言わないが。
+
うーん。
あるんだよな。
屍の魔法に対抗する歌魔法。
光の魔法でも出来そうな気がするぞ。
なあ。
+
ルルラルカとユシュラエル?
知らんな。友達かどうかだったなど。
将軍同士だ。
遊ばない。
ふん。
そうだな。
統一が済んだら仲間割れか?
そこまでは知らない。
+
うーん。
引っかかる。
どうして大陸はバラバラになった?
戦争なんて、無ければ良いのに。
+
戦争か。
戦争がないから英雄がいない。
英雄がいないから女は結婚出来ない。
「うーん」
+
英雄か。
別に?
8本腕の名すら散逸したし。
アレクラルク王?
どんな奴だよ。
知らね。
+
まったくだな。
困った。気が合う。この子供と。
+
歴史か。
シャクーセルが凄いんだな。
罪工幻匠って、メリクツェル様の同僚だったのか。
初耳。
アネッティアもなのか。
てか、アネッティアって実在するの?
+
気付けよ。
まあ、2属性か。
ホラと思うのかもな。人によっては。
+
女なのか。シャクーセル。
だろうな。
男だったら、こんなバリバリの戦闘要員が同僚とか嫌だ。
コンプレックスで潰れる。
+
ふーん。慧眼だ。
強さか。
強いって何なんだろうな。
私を一瞬で突き止めたコイツ怖い。
かと言って、神官見習いなど殺せるか。
+
あー。えっとさ。
面白いかな。この話。
ダガック家って名家が、昔、取り潰しになったらしい。
「ふん?」
あのな。
その家に伝わる魔剣を
剣の名前は――
「
そうか。
剣の銘は
「ふむ?」
何となくだが、その群骸操演を意識してないか。
「屍の魔法が込められた剣か。殺した敵をゾンビとして使役する」
勝てん。
「…………」
どうした。
「いや……」
+
私でも五分五分だな。
嫌だ。その剣。
あー。
推察だがな。
+
放っておけば、手に負えない屍の兵団が出来るぞ。
「勝てないな」
うん。
たかが剣士がネクロマンサーか。
どうする?
「剣士かよ……」
ふーん。
ごめん。ちょっと罠張った。
剣士は怖い。私にとっては。
だけど、エリカにとっては「たかが剣士」に同意なのか。
コイツ、どんだけ強い?
まさか、
+
「くしゅん!」
「どうしたの? ミルティーミル」
「何でもない!」
「エリスノート姉さん。甘やかすな」
「ルミスティア……」
「何よ!」
+
錆……?
いや。殺せよ。
騎士や兵士を敵に回して生き残れるか。
+
「だよな」
…………。
困った。
コイツ、騎士や兵士以外なら余裕で殺すと言ってる。
うん。
人殺しだ。
…………。
羨ましい。
歌の魔法、殺傷力無くて泣きそうなのに。
イブニーも、その気になれば一杯殺せる。
羨ましい。
殺しが出来る。
羨ましい。
助けて欲しいのに。
殺しのやり方、教えて欲しい。
だけど、無理なんだ。
所詮、歌の魔法使いだから。
殺したい。人間を。一杯。
いつか魔物に出会った時のために。
イブニー、きっと強い。
8本腕の1人も光か。
ルルラルカ=フィール。
綺麗な名前だ。
恋しそう。
メリクツェル様か。
うーん。
叶わない恋だしな。
女の人に恋してる方が、同情してもらえるかも。
あはは。
私、変だ。
人殺しになりたい。
人を殺すのは人間だ。
だから、人殺しをしない奴に、人は守れない。
人を殺す気がない人間は、家族を持っちゃ駄目なんだ。
+
冒険か。
隊商様の都合が最優先。
チャッピーもクールもワイルも大人だなあ。
こんなつまらない日常が、いつまで続くんだろう。
あー。
「ねえ、私、役に立ってる?」
「ああ! いつも、ありがとう! フラン!」
「ありがとう!」
「ありがとう!」
えへへー。
やったね。
また魔神交渉【WISH】使える。
1人の時に。
旅をしている今は駄目だ。
町か。
うーん。
行き先、何て町だっけ。
+
22歳になった。
私はルルラルカ=バケツプリーヌ。
誰にも言わないが光の魔法使いだ。
ルルラルカ?
8本腕?
光の魔法?
何でだ。
産まれた時から、何かを忘れているような焦燥感がある。
「お姉様!」
何?
私、金髪。髪短い。
身長166メルチでスカートは嫌いだ。胸は平均。
だからって男扱いするなよ。
あーあ。
「お姉様……!」
「お姉様!」
「お姉様!」
「お姉様!」
あーあ。
何で、こうなった。
結婚したい男がいない。
なあ、死んだ父さん。
このバケツプリーヌって姓は何なんだ?
これのせいで、こんな小娘たちに舐められてるんだけど。
+
あ、うん。
アネッティアのことは知ってたな。そう言えば。
だけどなー。ホラとしか思ってなかったよ。
メリクツェル様だけ信じてた。
アネッティアにシャクーセルにルルラルカにユシュラエル。
エリカが言うと、ぐっと信憑性が増す。
罪工幻匠って将軍だったのかよ。
怖い。
そんな天才将軍たちでも、永遠の平和は無理だったのか……。
「うん。平和は善では無いからな」
おや。
「平和は王に逆らうなという意味だ」
エリカ。
お前、好き。結婚出来ないのが残念だ。
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