第22話 別荘

「………………………………………うっ、みっ、海だぁ〜っ!」


車から降りるなり、波打ち際に駆け出していく陽菜。


「おいっ、あぶなっ、あ〜あ?」


予想通りと言おうか、案の定と言うのか、転んでずぶ濡れになる陽菜。

それでもめげずに、ゴロゴロと転がり砂まみれで笑いながら起き上がり僕に抱き着いてくる。


「おいっ、僕までずぶ濡れにするつもりか?」


「え〜、ずぶ濡れっていうのはこういうことを言うんだよね?」


あっという間に投げ飛ばされてずぶ濡れ砂まみれにされてしまって。


「ふっ、きゃははっ、アハハハハ〜?」


あまりにも楽しそうなので、怒る気にもなれないし。


「………………………………………寿々江さん、お風呂の用意をお願いします。」


今日は鈴さんが当主様の警護の用事があって、代わりに鈴さんの孫娘の寿々江さんが運転手兼護衛として一緒に来ていた。


「寿々江さんもお風呂一緒に入ろうっ!」


「陽向さんさえ良ければ、お供しますよ?」


「陽向!断わらないよね?」


当間寿々江さん、鈴さんの孫娘で19歳。普段は屋敷の警備と陽菜の身の回りの世話を行っている。

中2まで陽菜と寿々江さんと僕で一緒に入っていたから陽菜が誘うのは不自然ではないんだろうけど、僕たちも成長したしあの時でさえ寿々江さんは年上で女性の体つきで。

今一緒に入ったら、身体を直視出来ないぞ?

当然に、我慢出来ないかも。


「用意してきますので、5分ほどお待ち下さいね。」


管理人が常駐しているので、貸切露天風呂が空いていればすぐにでも入れるけど。


「………………………………………陽菜、今寿々江さんと一緒に入ったら、僕は我慢出来ないかもしれないぞ?」


「ん〜、実はね、頼まれたのよ寿々江さんに。」


「ん?何を??」


「お膳立てしてほしいって。」


「?????」


「後のお楽しみって言う事で。」


そう言いながら、手を引かれたと思ったらもう一度投げ飛ばされてずぶ濡れに拍車がかかってしまった。


「くぅ〜っ、何をするんだよっ!」


「あ〜、これだけで許してあげるんだからねっ!私は優しいと思うよっ。」


………………………………………何を言っているのかよくわからないけど、何かが始まるんだろうなということだけは、よ〜くわかった。

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