第5話 ポルターガイストが止まらない
「さっき見に行ったら、横山さん寝てました。」
「そう、ありがとう。」
後藤先輩は重大任務を終えたのを誇らしげに敬礼をしている。
俺たちは、横山さんに作ってもらったホットミルクを飲みながら、静かにポルターガイストが起きるのを待っていた。
「なんかこんなきれいで清潔感もある部屋でポルターガイストが起きるとは思えないです、私。」
小声でそう主張する後藤先輩。たしかに、ポルターガイストと聞くと、もっとごちゃついた如何にもな部屋を想像してしまう俺は洋画の見すぎなんだろうか。
「いや、今日。必ずポルターガイストが起きる。」
一条先生はいつにもなく真剣な眼差しでホットミルクのカップを見ながらそう呟いた。
「え?どうし「静かに。」
反論しようとした後藤先輩を一条先生は人差し指を口元に当て黙らせた。
パキッ……
……パキッパキッ…
ハッと息を吸い込んだ後藤先輩はそのまま口を覆った。部屋のどこからともなく聞こえるそのラップ音に俺は一ミリも動けなかった。
「これって…」
後藤先輩が声を押し殺しながら一条先生を見た瞬間。
ドンッ!
…ガシャンッ!!
あまりに大きな音に驚くと同時に、確信した。
…横山さんの寝室で何かが起きた。
俺たちは急いで立ち上がり、横山さんの寝室へ向かった。
----
そこにはベットにうずくまる横山さんが目に入った。
後藤先輩が近くにあった電気スイッチをつけると、寝室は凄惨だった。
横山さんのすぐ近くには壁に突き刺さったナイフ、床には白い破片が散らばっている。
横山さんは俺たちを見ると一目散に駆け寄ってきた。
「危ないっ」
後藤先輩がそう声を上げたが、横山さんは白い破片を踏みよろめきながら倒れそうになったところを一条先生が抱きかかえた。
横山さんの足の裏からは、ぽつりぽつりと血が滲んでいる。
「後藤さん、横山さんの足の怪我お願いできる?」
「は、はい。」
後藤さんは横山さんの肩を持ち、リビングへと連れて行った。
一条先生は、床の破片をよけながら寝室へ入っていく。
「先生…」
「寺下くんはそこに居て。」
そう言われてしまっては、動けない。
俺は寝室の入り口にただただ立っていた。
散らばった白い破片に目をやると、どこか見覚えがあった。
丸い粒が不規則についた、白い破片…。
―――「あぁ、それは…、こっちに引っ越してくるときに母が贈ってくれたんです。」
テレビ台にあった白い王冠の平皿…?
「先生、これって…」
一条先生は俺の言葉に返事することはなかった。
そして、ベッドに片膝をかけ、壁に刺さったナイフを抜き取った。
その後もナイフが刺さっていた壁の後を見つめている。
今まで感じたことのない気配を感じ、俺はただ一条先生の姿を目で追うことしかできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます