第2章 呪われた男女

第4話 心霊ドライブ

 後藤先輩が訪れた4人に緑茶を出す。

 椅子に座った学生たちは深刻そうな表情で俯いており、部屋は静まり返っていた。


「それで、どうして呪われたと思ったのかな。」

「俺ら昨日、新入生歓迎会で先輩に教えてもらった心霊スポットにドライブに行ってきて…その場所についたら、突然耳鳴りがして。」

 一条先生はノートにメモをしながら学生たちの話を聞いている。

 椅子が足りないので、俺と後藤先輩は部屋の隅で立ち尽くしていた。


「しかも、全員!急に耳鳴りが同時に…ずっと続いて。」

「そして、車を走らせていたら誰も音楽かけてないのになんだか不気味な音楽も聞こえてきて。」

「不気味な音楽?」

 一条先生は顔を上げ、女子学生を見た。

「なんか壊れたテープとか、蓄音機とか…聞いたことないですけど、そういう感じの音楽です。」

「あと、窓に指紋もついてて、お、落ちない指紋が…」

「なるほど……」


 メモを終えた一条先生は、ペンを置き、机の上で手を組んだ。

「つまり、心霊スポットに行ったら、全員耳鳴りがして、不気味な音楽が聞こえてきた、帰ってきたら落ちない指紋が窓についていた、と。」


「なんか普通にやばそうだね?」

 小声で後藤先輩が耳打ちをしてくる。

「いや、でもなんというか…。あるあるじゃないですか?」

「え?」

「心霊スポットってそういうものじゃないですか?」

「そうだけどさ、いや~ほんとに心霊スポットなんて行くのは愚かだよ。いいことないもん。」

 後藤先輩の声が学生にも聞こえてしまったらしく、視線が集まり俺たちは気まずい空気を味わうことになった。


「まぁ、でも本当に、心霊スポットなんて行く場所じゃないよ。」

 一条先生は学生たちの目を見ながら、はっきりと断言した。

「先生! 私たち、呪われちゃったんですかね?」

「呪われてるかもね。」

 間髪入れずに返答した一条先生の言葉に、1人の女子学生は泣き出している。

「僕はあくまで"呪われてるかもね"と言った。"呪われてますね"とは言ってない。」

「え?」

 突然立ち上がり、一条先生は学生たちを見つめながらこう続けた。


「僕が立証して見せよう。それが呪いか、呪いじゃないか。」

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