第3話 部室
「遅かったね、お買い物楽しめた?」
「はい、もうこの女子のセンスで。完璧なの買ってきましたから。」
「見せてよ見せてよ。」
長机で作業していた一条先生は席を立ち、俺たちの買い物に目を輝かせながら近づいてきた。
「これ、3人のマグカップです。」
コトン、と置かれた三色のマグカップは、お店で見た時よりもどこか華やかに見えた。
「へぇ、可愛いね。パステルカラーってやつ?」
「そうです! ピンクは私で、千景くんは黄色、一条先生は青色です。」
「僕の分も買ってきてくれたの?」
「もちろん! 先生は顧問でもあり、部員ですからね!」
一条先生は嬉しそうに青色のコップを手に取り「ありがとう」と微笑んだ。
「あとは、花瓶と…じゃーん、チューリップ!」
三色のチューリップを差し出された一条先生は少し驚いて「チューリップ?」と尋ねた。
「チューリップの花言葉は『始まり』です。」
誇らしげな後藤先輩は、チューリップを買ったばかりの花瓶に差し、長机に置いた。
そうか、これを一条先生にも伝えたかったから、帰り道に教えてくれなかったのか。不覚にも少し可愛い一面があるのだな、と思った。
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それから俺たちは空きコマや放課後はほぼ部室で過ごしていた。
ミステリーサークルとして相談者が来たときに不在なのは、活動にならないからだ。
あまりに穏やかで、狭いコミュニティに属した俺は、不思議と満たされていた。
高校時代は大学生に対して多くの友人と、活発な活動を想像していたが、性に合わないのは、既に自覚していた。
このまま和やかな雰囲気が続くだけでも、何も不満がない。
そう思っていた時、ミステリーサークルのドアが開いた。
そこには怯えた表情で立ち尽くす男女4人が居た。
「俺達、呪われたかもしれません…。」
その言葉を聞いた瞬間、俺はもちろん、後藤先輩も言葉が出なかった。
ただ一言「話を聞かせてもらえるかな。」と一条先生が口を開いた。
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