第3話 部室
「はい、カゴ。」
有無言わさず俺に差し出されたプラスチックのカゴを無意識に受け取ってしまった。世の中の女子という生き物はみんなこうなんだろうか。
店内は女子向けで、ナチュラルテイストな雑貨を取り揃えている雰囲気だ。
「この花瓶とかいいなぁ。」
「でもそしたら、お花も買わなきゃですよね…」
「いいじゃん!」
「お花の世話って結構面倒ですよ。」
「千景くん、可愛いって大事なの。」
「はぁ…。」
後藤さんは、U字型の白い花瓶を手に取り、カゴに入れた。
「あっ、そうだ。お菓子入れる箱とかコップとかも買おうよ。」
「えっ?いいんですか、そういうの部室に置いても。」
「隣は茶道サークルだよ。つまり良いってこと。」
後藤さんの回答はいつも、的を外している気がする。
「ねぇ、ねぇ。コップどれにする?」
「俺は何でも…」
「もう…じゃあさ、三人で色違いにしようよ!」
後藤さんが指さす先には、パステルカラーのマグカップが何種類か並んでいた。
「私はピンクが良いな~。千景くんは、黄色って感じ。」
「そうですか?」
「一条先生は…」
「「青」」
後藤さんと同じタイミングで青色のマグカップを指さす。
「だって、一条薫だよ!?青以外ないよね。」
「まぁ、真っ先に青思い浮かべましたね。正直。」
満足そうな後藤さんは、3つマグカップを大切そうにカゴに入れた。
「あとは、お客さん用に何個か買ってー、帰りにお菓子とお花も買わなきゃ。」
会計を済まし、外に出ると空は暗くなり始めていた。
運よく雑貨屋の隣にあった花屋に入った。
「あ!よかった~チューリップあった。見て、しかもピンクも黄色も青もある。」
手際よく後藤さんは、チューリップを三輪取り、会計を済ました。
「暗くなっちゃったから、お菓子はまた今度にしよ。」
「そうですね。」
後藤さんはチューリップを大切そうに抱え、時よりニコニコと見つめている。
「後藤さん、花好きなんですか?」
「せっかくなら後藤先輩って呼んでよ」
即座に訂正が入ったので、従う。
「後藤先輩、花好きなんですか?」
「別にそういう訳じゃないけど」
「じゃあ、なんでチューリップを?」
「…それは部室に戻って飾ったときに言う!行くよ!」
「えっ、ちょ…俺カバンにマグカップとか入ってるから!」
後藤先輩はやけに楽しそうに走って行ってしまう。
はぁ…とため息を履きながら、速足で追いかけた。
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