第2話 ミステリーサークル
「えっ、いやちょっと待ってくださいよ!」
さすがに俺は立ち上がった。
「俺別に、やりたいなんて言ってないです。しかもなんですか?そのミステリーサークルってあからさまに怪しいサークル」
後藤さんは人差し指をスッと戻し淡々と告げた。
「え?都市伝説とか、怪奇現象とか、そういう相談が来たら解決しに行くの」
―――「なぜ怪奇現象が起きるのか、そしてどうやって広まっていくのか。知りたいと思わない?」
先ほどの一条先生の言葉が、頭の中で反芻される。
「え?意外と面白そうだね。」
「い、一条先生?」
何故か得意げに微笑んでいる一条先生が視界の端に見えた。
「いや、でも、俺……」
気にならないわけじゃない。怪奇現象を解き明かしたから、優秀な成績がもらえるわけでも、大企業に勤められるわけでもない。そもそも、大学で有名になりたい訳でも、卒業後に大企業に勤めたいだなんて思ってない。なら、いいんじゃないか?
さっきの一条先生の言葉で、心の中の興味探求心が揺れ動いたのは事実だ。よく言えばこれも何かの縁、悪く言えばこの状況に流されてもいいんじゃないか…?
「えっ、じゃ…じゃあ。やります。」
「やったあ!!」
後藤さんは僕の手を取ってまん丸の瞳で僕を見つめる。
「君、名前は?」
「
「千景くんか!」
「あ、あの、手…」
「あ~!ごめんごめん!」
どちらかと言えば可愛い顔、いや、かなり可愛い顔立ちの女性に至近距離で迫られた経験が無いのもあり、かなり動揺してしまった。人は見かけによらない、とはまさにこの事だろう。どちらかというと、チアリーダー部とかバスケ部のマネージャーとか、もしくはバイト先のアイドル的存在な可愛さだと思う。それなのに、ミステリーサークルとは……。
「あっ、私次の講義あるから行かなきゃ!部室紹介するから、18時40分にサークル会館3階の端の部屋に来てください!それじゃ!」
またどたばたと走り去っていく後藤さんは、まるで嵐のような人間だなと思った。
「寺下くん」
ふと呼ばれた声にハッとし、教壇前の机に腰掛ける一条先生を見た。
「無理してない?大丈夫?」
「大丈夫です。先生の話聞いてたら、なんか、こういうの、面白そう…だな…とか思ったんで。」
「本当?それなら良かったんだけど。」
一条先生は床に置いていたカバンを手に取り立ち上がった。
「そしたら、部室一緒に行ってくれない?僕、まだサークル会館とか、良く分からないし、心細いからさ。あ、予定とかあったら、大丈夫だけど…。」
「全然大丈夫です! 俺も…一人だとちょっと、アレだったんで。」
一条先生は微笑み、「じゃあ、18時30分くらいにサークル会館の1階で、待ち合せようか」と提案してくれた。
「はい、それじゃあ…失礼します。」
「うん、またあとでね。」
半ば強引に始まったミステリーサークル。
俺の大学生活はどうなっていくんだろう。
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