異世界に転生した

第3話

〜中央大陸、王都ランネル〜

 上空の雲の動きがおかしい。見たことのない、ありえない雲の動きに誰もが目を丸くしている。王様の住む西洋のお城を中心に渦巻くような雲の動き、台風ができた時の雲の流れと完全に一致する。雷鳴もとどろいており、ランダムでいろいろの場所に落ちているようだ。


「一体、何が起きている?」


 金髪で王冠をかぶっているひげを生やしたイケオジのラドラ・ランネル国王は上空を見ながら、驚いている様子だった。


「私にも見当がつきませんね」


 ラドラ国王の横で一緒に見ているのは、国王と同じ髪色のイケオジ。アウル・ランネル宰相だ。今まで起きたことのない現象に戸惑っている様子だ。


「何か胸騒ぎがするな」

「そうですね。古代の文献を読んで調べておきますよ」

「頼んだぞ。兄上」

「国王様、そう呼ばない約束では……?」

「ごめん……ついな……」

「全く……困った弟だ……」


 あきれ顔をするアウル宰相。そしてラドラ国王とアウル宰相は休憩を終えて、再び仕事に戻った。


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~中央大陸、精霊の領域~

「ついに復活しましたね。古代精霊」


 黄色い服で全身を覆い、背中からは大きな羽が生えている美しい女性は言う。彼女は光の大精霊。


「そうだねー!そろそろ契約者を探し始めないとねー」


 黒い服で全身を覆い、背中からは大きな羽を生やしているショートカットの女性は言う。男性よりの容姿で、女性に見られないこともしばしばあるらしい。彼女は闇の大精霊


「みんな。集まってください」

「は~い」


 きっちりとした姿勢で光の大精霊と闇の大精霊の前に整列する精霊たち。この領域では二人がトップを張っているみたいだ。


「古代精霊が復活してね。これから僕たちは契約者を探しの旅に行ってくるね」

「え~。出て行っちゃうの?」

「これは精霊会議で決定したことです。従わなければなりません」

「それならしょうがないね~。いてらっしゃい」


 明るく精霊たちに送り出された光の大精霊と闇の大精霊。二人は手を振って、精霊の領域を後にした。


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~中央大陸より北にあるノース大陸、精霊の領域~

「ついに復活のか……古代精霊……」


 赤色の服で全身を覆い、背中からは大きな羽を生やしたかっこいい男性は言う。彼は火を司る大精霊。古代精霊の復活に表情を歪めた。


「早く、契約者を探さないと……彼女を止めることが出来ない……」


 焦る火を司る大精霊。すぐに旅に出る支度を始める。


「お出かけになるのですね」

「そうだ。私の代わりにここを守ってくれるか?」

「もちろんです。留守をしっかりとお守りします」


 彼女は火を司る大精霊の秘書をしている精霊で、次に高い権力を持っている。彼女がいるから安心してここを出ていくことができるのだ。


「ては、行ってくる」

「いってらっしゃいませ」


 深くお辞儀をする彼女の肩を叩き、火を司る大精霊は旅だった。


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〜中央大陸より西側にあるウエスト大陸、精霊の領域〜

「復活しましたのね。古代精霊。今回の契約者はどんな人なのかしら」


 青色の服で全身を覆い、背中からは大きな羽が生えている女性は言う。彼女も美貌の持ち主で一目惚れしてしまうほど綺麗だ。そんな彼女は水を司る大精霊。水を司る大精霊は古代精霊自体に興味はなく、古代精霊と契約した人間のことを知りたいと思っている。


「悪い契約者で、ないといいわね」


 古代精霊のことを心配する水を司る大精霊。着々と旅支度を進めていた。


「姉ちゃん。次はいつ帰ってくるの?」

「分からないわ。私がいなくても元気に暮らすのよ」

「分かっているって」


 いつも明るい精霊の少年。水を司る大精霊に心配させないように笑顔で言う。


「もう……我慢しないの」

「本当はね、すごく寂しい。でも精霊会議で決定したことなんでしょ?だからさ 泣かない」

「えらいわね」


 水を司る大精霊は少年を抱きしめる。水を司る大精霊は契約者を探す旅を始めた。


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〜中央大陸より南にあるサウス大陸、精霊の領域〜

「ガッハッハ。ついに復活したか!古代精霊よ」


 茶色い服で全身を覆い、背中からは大きな羽が生えている体の出来上がった男性は言う。彼は土を司る大精霊。古代精霊に会えることを楽しみにしている。


「古代精霊よ!国を崩壊させるようなことは二度とさせないぞ!」


 土を司る大精霊は強い決意を持っている。この目標を達成するまで諦めないのが、強みだ。


「師匠!お出かけになるのですね!」

「あぁあ、そうだ。俺の留守中も練習をサボるのではないぞ」

「分かっています!帰ってくる頃には師匠より強くなっていますから」

「ガッハッハ。それは楽しみだな!」


 土を司る大精霊のように体の整った男性の精霊。一層精進することを宣言する。ノームは満足した顔で微笑む。


「よし!後ろを向け!」

「はい!」


 土を司る大精霊は男性の背中を軽く叩いて、気合を入れる。


「これでお前はまだまだ強くなれるぞ!」

「ありがとうございます!」

「頑張れよ!」

「はいっ!」


 土を司る大精霊は堂々とした歩き方で出発した。


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〜中央大陸より東にあるイースト大陸、精霊の領域〜

「復活したんだね。古代精霊」


 緑色の服で全身を覆い、背中から大きな羽を生やした女性。彼女も美しい容姿で男性の気をよく引く。彼女は風を司る大精霊。古代精霊の復活にはしゃいでいる。


「イルムにふさわしい契約者が見極めてあげるね」


 にやける風を司る大精霊。楽しそうに旅支度をする。


「帰ってきたら力比べしようぜ!」

「了解だよ!絶対に負けないからね」

「俺も負けないぜ」

「ふふふ。どこまで強くなるのか楽しみだね」


 話しかけてきた男性精霊の成長に期待を込めながら言う。男性は風を司る大精霊に期待されていると知って、嬉しく思っているようだ。


「じゃぁ、行ってくるね」

「おう!元気でな!」


 お互いに手を振り合って、ここから旅立った。


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