第1話 記憶喪失=苦労

トントン、

「琉記さーん、部屋入りますねー。」

「あ、はい。」


「体調は大丈夫ですか?」

「そうですね、今は特に問題ないです。」

「少しでも体調が悪いと思ったらすぐに私たち看護師でも誰でもいいので言ってくださいね。」

「はい。お気遣いありがとうございます。」

「では、失礼しまーす。」

そう言って、担当の看護師の人は病室を出ていった。


俺の名前は成憶 琉記

と言う名前らしい。

らしいと言うのは、自分はどうやら事故にあい、記憶喪失でところどころの記憶がないらしい。


昨日、気づいたら病室のベットで寝ており目が覚めた。お母さんと思わしき人が起きたことに気づき、抱きついてきた。そして号泣。

あれは、ちょっと恥ずかしかった。

しかも、自分が目を覚ましたのが深夜だったので当然他に寝ている人に対して迷惑をかけてしまったみたいで、お母さんは病院の人から強制退場をくらった。まともな会話もできず。


病院の人から退場宣告を喰らうも、

「嫌です!琉記ちゃんがこれ以上家にいないと悲しくて死んじゃいます!」とか言って俺から約30分も離れなかった。

結局、病院のお医者さんから、

「じゃあ、この病院出禁になってもいいんですか?ちなみに息子さんは、置いてってもらいますけど。」

「じゃあ、尚更琉記ちゃんは家に連れて帰ります!」

「連れて帰って急に倒れたりしたらどうするんですか?」

「琉記ちゃんが急に倒れる?!それは困ります!国際問題です!」

「じゃあ今日は1人で帰ってください。それが今息子さんのためにできる一番の行動です。」

「る、琉記ちゃんのため...じゃあ、明日は朝一に来ます!いいですね?!」

「他の患者さんに対して迷惑をかけないのならご自由にど…、」

「わかりました!また明日ね!ばいばーい愛しの琉記ちゃーん!」

そう言って自分のお母さんと思わしき人はお医者さんの話を最後まで聞かず目にも留まらぬ速さで病室を出て行った。



いきなり静かになった病室。


あれ、とても気まずい。

すると、

「あなたのお母さん、台風みたいで騒がしい人ですね。」

「そ、そうですね。」

「昔から、あんな感じなんですか?そうだとしたら相当苦労されているんでしょうね。まぁ、息子思いで悪い母親だとは思いませんが。」

「そ、そうですね、おそらく苦労してたと思います。」

「?、まさか、覚えていないんですか?!」

「は、はい。実はなんで病気にいるのかも、

自分のお母さんがあの人かもも…、」

「そ、それは大変です!すぐに頭に損傷がないか、もう一度MRIで検査しましょう!」

「いや、特に痛みなどはないので大丈…、」

「何かあったらでは遅いんですよ!」

「た、確かにそうですね。分かりました。ではお願いします。」


どうやらこのお医者さんは自分に万が一のことが起こった時を事を考えて、心配してくれているのだろう。本当にいいひ...


「もし、何かが見つかって処置が遅れてしまったら、君のお母さんに何時間尋問されるかたまったもんじゃない!は、早く!」


前言撤回。

この人はどうやら俺の心配も大事だが、それより、どうやらその後が重要だったらしい。

おそらくこのお医者さんは自分がこの病院に入ってきてから、(たぶんお母さんと思われる人)

に苦労しているのだろう。


あ、うん。なんかすごく申し訳なくなってきたと同時にまた気まずくなってきた。てか尋問って何?なにされんの?


「や、やっぱり今日は大丈夫ですよ!また明日にしましょ!もう明日になることですし!よく見ればお医者さんも疲れているように見えますし。」


「だ、だめだ!今やらなければ、君のお母さんに何をされるかたまったもんじゃない!い、今すぐやるんだ!少しでも早く君をこの病院から追いだ…じゃなくて、退院してもらう為に!」


ん?この人今追い出すとか言いそうになってなかった?俺何にも悪いことしてなくない?おかしくない?

よく見れば、なんか目が3日間くらい寝てない人みたいになってるんですけど、すごく怖いんですけど。


「それじゃあ、早く検査しにいきますよ!早く退院してもらうためにね!」

「あぁ、はい。なんかすいませんね。今まで迷惑かけて、」


半ば強引に検査室につれ去られた俺は不安に思いつつ一つの不安を感じた。

 

こんな感じで、これから生活していかなけばならないと。

記憶喪失ってひどいな。




記憶喪失一日目は台風のど真ん中にいるような、感覚を味わったのだった。
























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中途半端な記憶喪失には困りました。 tamuumu @tamusyan

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