第7話【野良猫、保健所を襲撃する】

なっ!?ムギが攫われただと!?


最近この世界に慣れ過ぎて油断してた・・!


くっ、どうする!?

ムギはまだ無事なのか?

これからどうすれば・・!?


頭の中が整理できず

思考が混乱しグルグルとループして行く。

考えが纏まらない!


「ムギ殿を助けに行くでござるよ!

ホケンジョの場所なら拙者が知っているし

兄妹は助け合わないといけないでござるよ!」


言うが早いか駆け出すタロスケ!


ふっ、そうだよな

何を考える事がある!


俺はタロスケの背中を追いかけた!



「と、ホケンジョ前まで来たのはよいが

建物の中に連れて行かれるとお手上げでござる」


ホケンジョの近くの物陰に隠れた俺達は

タロスケの話を聞いていた。


しかし、お手上げと言いながら

前足でワシャワシャとバンザイのポーズをとるタロスケに俺は何と言えばいいのだろうか?


このマヌケな可愛さが

愛玩犬の愛玩犬たる所以なのだろうか?


「なのでムギ殿が建物の中に

運ばれて行くタイミングで襲撃!

ムギ殿を奪い返す でござるよ!」


「・・あぁ、分かった。ただし

人間には極力被害を出さないように

奪還するぞ?奴らはジュウやバクダンと言った強力な魔道具を使うからな。

完全に敵対するのは危険過ぎる。」


前にテレビで見た

人間にたいし敵対した生物は

皆悲惨な目にあっていた。


それを見ていたトメさんが

「最近のエイガは怖いわねー」

などと言っていたが

本来人間は集団で力を発揮する

恐ろしく凶暴な種族なのだ。


「そうでござるな。

拙者も人間は好きでござるから

極力怪我をさせないよう

奪還に務めるでござるよ!

・・あっ、ケージを詰んだ車でござるよ!」


建物の方を見ると

丁度ハンターの人間が

クルマから動物の入ったケージを

降ろしている所で

ケージの隙間からチラリと

ムギの姿が確認できた!


「ムギだっ!」


次の瞬間タロスケが

猛然とケージを持った人間に突進して行く!


ドンっ!


「わっ、何だこの犬っ!?

あ、こら、抱きつくな!

うぁ、か、顔を舐めるのはやめろー!」


体当りをくらい尻もちをついた人間に

タロスケはそのまま覆いかぶさり

容赦なく顔をベロベロ舐めはじめる。


人間は顔舐め攻撃から必死で逃れようと

ケージから手を離し

自分の顔を守っていた。


よし、今だっ!


俺達はムギのケージに駆け寄った!

が、ケージにはカギがかかっていて

ムギを外に出せそうにない。


「兄ちゃん助けて!」


ガンガン音を出しながら

ムギがケージの中で暴れているが

扉が開く事はなさそうだった。


・・仕方ない

アレを試してみるか!


俺は意識を瞳に集中し

今までで一番の魔力を練り上げた。



数日前の事

俺はテレビで興味深いものを目にした。


人間でありながら

俺達猫と同じような耳を生やした

緑髪の少女が

「メカラビーム!」と言いながら

目から光線を発射していたのだ!


俺も元の世界では

魔法を頻繁に使ってはいたが

手から出す事はあっても

目から魔法を放つなど

話ですら聞いた事がなかった。


しかし、改めて考えてみると

これは合理的なのかもしれない。


手から魔法を放つと

手と頭の位置のズレ分

照準がズレる訳だし

更に狙いを定め

放つまでにも時間がかかる。


その点、目から直接魔法を放てば

敵を直視さえしていれば

常に照準は合っているし

狙いを定める時間も必要なく

瞬時に魔法を放てると言う訳だ!


それ以来

俺はこのメカラビームの練習を

し始めていた。


「まさか、こんなに早く

出番が来るとはな!・・メカラビーム!」


俺は目に貯めた魔力を光線にし

ケージのカギへ放った!


ジュっ、と何かが蒸発するような音と共に

ケージについていたカギが焼き切れ

中に閉じ込められていたムギが

勢い良くこちらに飛び出してくる!


「うわぁーん、兄ちゃん!

超怖かったよー!」


「うゎ、おいそんなに頭を擦り付けてくるな!

それより外に出られたならさっさと逃げるぞ!タロスケ!」


俺はタロスケに声をかけると

皆で一目散に逃げ出した!


タロスケもそれを見て軽快に追いかけてくる。


「あ、クソ猫が逃げてるっ!

ふざけるなよ!

毎度毎度ウチの庭にクソしやがって!

また絶対に捕まえてやるからなーっ!!」


・・んー?


「なぁ妹よ。お前は毎度

あの人間の庭に糞をしに行ってるのか?」


「ん?いやー、あの庭

私のベストプレイスでねー。

気持ちよく出せるんだよ!」


「ふーん、なるほど。

とりあえずもう二度と

あの人間の庭には近づくなよ?」


俺は怒りを押し殺しながら

走る妹に言い放った。



~時を同じくして

とある宗教団体の一室~


「・・・っ!!この魔力は!

・・そうか、ヤツも

この世界に来ていたのか。

クックック・・

またこの世界でも勇者に会えるとはな!」


~キャラ紹介~


【保健所のハンター】

実際は保健所の人でもなんでもなく

ただの一般人。

特に動物嫌いなどではないが

大事に手入れしている庭園に

毎度糞を残して行く茶色い猫に

堪忍袋の緒が切れた人。

シロ達はホケンジョのハンターだと

勘違いしている。


8話は11月7日 7:00投稿予定です!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る