第6話【野良猫、変な犬とテレビに出会う】
俺達は新しい拠点
「キクナガ家」を手に入れた。
ここには猫達にとても友好的な人間
「キクナガトメ」という
お婆ちゃんが住んでいる。
ここでは毎日カリカリ(キャットフード)
が貰え全身をブラッシングもしてもらえる。
この世界に来て猫生を送り始めてから
何度となく体が痒くて
壁や人に体を擦りつけていたが
最近はその必要もなくなった。
いやー、快適快適。
そして何より
情報収集の観点からも
この拠点は最適だった。
この拠点の主のトメさんは
日がな一日テレビなる
音と動く絵の魔道具をつけており
俺はそのテレビで
この世界の情報を色々と入手する事が出来たのだ。
まず、この国の名前は「ニッポー」と言うらしい。
そして、やはりと言うべきか
俺の思った通り
この世界は俺の元居た世界に比べ
相当進んだ技術を持っているようだった。
まぁ猫である俺達には
あまり関係のない話なのだが。
そんな新しい生活がスタートし
新しい縄張りを弟と話しながら散歩している時に事件は起こった。
「お主、兄上と同じ魔法を使えるでござるか?」
突然後ろから話しかけられた。
いや、それは重要な事ではない。
重要なのはその相手が
「魔法」と言う単語を使った事だ!
後ろを振り返ると
そこには一匹の犬が俺達を見下ろしていた。
デカい!俺の十倍はあるんじゃないか?
明るいフワフワの体毛に
少し間の抜けたタレ目
首輪を付けているので
野良犬という訳ではないだろう。
うむ、俺はこいつを見た事がある。
あの色々な情報を映し出すテレビという魔道具でゴールデンレトリバーと呼ばれていた犬だ。
「お主、翻訳魔法を使っていたであろう?」
・・やっぱりだ!
こいつ俺の魔法の事を知っている!
もしや俺と同じ境遇の元人間か?
疑問を持ちながらも
警戒を少し強め犬っころに質問する。
「なぜお前が魔法の事を知っている?
もしやお前、あっちの世界の元人間か?」
「あっちの世界?元人間?
よく分からんが
拙者は見ての通り犬で人間ではないぞ?
・・おっと自己紹介が遅れたな。
拙者ゴールデンレトリバーの
タロスケと申す、以後お見知りおきを!」
「お、おぅタロスケよろしくな!
俺はシロ、こいつは弟のキナコ
あとは妹のムギも居るが・・・
って、今はどうでもいい。
それより何でお前は
魔法の事を知っているんだ?」
「拙者の兄上が同じ魔法を使っていて
色々教えてもらったでござるよ!」
兄上?こいつの兄貴か?
そうなると
こいつの兄犬が本命になる訳か?
魔法を知り、同じ翻訳魔法を使う者。
・・・会わない訳にはいかないよな。
「なあタロスケ、俺はお前の兄上とやらに
会ってみたいんだが
その兄上は何処に居るんだ?」
「知らないでござるよ?」
・・・・は?
何を言ってるんだこの毛玉は?
それか翻訳魔法がちゃんと働いてないのか?
「何で知らないんだ?お前の兄貴だろう?」
「兄上は数ヶ月前に「これだっ!!
時は満ちた!今こそ、そして今度こそ種族の成就を叶えてみせる!!」と言って
家を飛び出してしまったでござるよ。家族も心配しているし何とか見つけたいでごさるがー。
して同じ魔法が使えるシロ殿を見つけたので兄上について話を聞こうと声をかけたのでござるよ」
うん、なるほど。
なんか同じ境遇の仲間かと思って
会ってみようかとも思ったが
思った以上にヤバいやつだったらしい。
・・・・・あれ?
でも似たようなセリフを
何処かで聞いた事があるような・・?
「所でシロ殿、もし良ければ
兄上を探すのを手伝っていただけぬだろうか?
シロ殿も兄上の魔法に興味があるようだし、お願いしたいでござるよ。」
えぇー、ヤダなー。
最初は会ってみようかとも思ったが
今はそんなヤバそうなヤツと
正直会いたくない。
「シロ殿お願いするでござるよー。」
キラキラした目でこちらを見つめてくる。
デカい図体してるくせに
あざとい戦術を使ってくるなコイツ!
どうにか理由をつけて
タロスケのお願いを断ろうと考えていると
遠くから聞き覚えのある叫び声が聞こえてきた。
「シ、シロさんー!大変だー!
ムギちゃんがホケンジョのハンターに攫われた!!」
~キャラ紹介~
【菊永トメ(キクナガトメ)】
猫好きのお婆ちゃん。
シロ達の面倒を見ている。
旦那さんは亡くなっており
今は一人で暮らしている。
(猫達を除く)
【タロスケ】
もっふもっふなゴールデンレトリバー。
少し間の抜けた
愛嬌の塊の様な毛玉。
飛び出して行った兄を探している。
7話は11月4日 7:00投稿予定です!
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