毎日君に乗る前に

第1話

毎日

君に乗る前に

飴玉を舐める

君はたくさんの人を乗せて揺れる

たまに小さなバッタなんかも乗せたりしている

乗客は気づかない

君に乗るのは朝

最寄駅は空いていて

座れるから

毎朝君に乗る前に

頓服薬を飲む

君で発作が起きないように

ハロートレーニングに通えるように

朝はひどく眠い

握ったおにぎりには

高い確率で髪の毛が入っていて

自分のでも食べ辛い

君を乗り換える

そこでは座れず

君の中でわたしは立つ

吊り革につかまって

揺れにギシギシと皮を揺らす

毎朝

君に乗る人々が分かってきた

同じ車両に乗ることもある

乗り物恐怖症だけど

君に乗る

君に座る

君を乗り換える

君につかまる

なんて淫乱なんだろう

それよりなにより

電光掲示板とスマホの乗り換えを見て

君を待つ

だから

純愛だよ