8. 転校生の一大イベント(昼休み編)
昼休み。俺は転校生のお決まりムーブとも言っていい、クラスメイトからの質問攻めにあっていた。
「なあなあ、本土の方って、どこら辺から来たんだよ。東京?大阪?」
「放課後ってやっぱり、おしゃれなカフェでタブレット片手にホイップもりもりあまあまカプチーノとか飲んでたの?」
「私もショッピングモールとか行きたいな~。ウィンドウショッピングとかあこがれちゃう!星川君はどんな服とか着るの?」
どこか認識のずれを感じることもあったが、やはりみんな島の外のことに興味があるようだ。聞くところによると、島の人は本土に行くことはほぼなく、行ったとしても港近くの商店街や駅周辺の商業施設までらしい。それに、外部からくる年の近い人はかなり珍しいようだ。
そのため、俺の地元ではいたって普通の出来事を話してもみんないいリアクションをしてくれ、話していて楽しかった。
そんな中、一番仲良くなったのは『天ノ川晃星』という男だ。気さくで明るく、誰とでもすぐ打ち解けられるタイプなのだろう。なにより絵にかいたような爽やかイケメンである。
「なあなあ星川。こんなことを聞くのは野暮かもしれないけどさ、この島に来てよかったのか?都会にいた方が遊べる場所多いだろうし、こっちじゃ退屈しないか?」
「確かにゲーセンや買い物をするには都会の方がいいだろうけど、実はそれ以上にこの島でやりたいことがあるんだ」
「ほう・・・もしかして、昔片思いだった女の子のことが忘れられず、意を決して一人さがしに来たとか??」
「いや、残念ながらそんなロマンチックなことじゃないんだよなあ。俺はこの島に、天体観測をしに来たんだよ」
「天体って、空に浮かんでる星か?それも十分ロマンチックだろ。でも、なんでこの島だったんだ?もっと星空がきれいなとこなんてあっただろうに」
「昔おじいちゃんがこの島に住んでてさ、何回か遊びに来たことがあるらしいんだよ。でも、今の俺はそのことを一切覚えていなくて・・・。それに、その時のことで何か大事なことを忘れている気がするんだ」
「大事なこと?」
「ああ。とてもとても大事で、絶対に忘れちゃいけないことだった気がするんだ。この島にもう一度着たら、何か手掛かりがつかめるかもしれない。そう考えたら、この島を選んでいたんだよ」
そう。天ノ川がいうように、本土の方にもきれいな星が見れる場所は山ほどある。
しかし、天体観測をしているといつも何か、自分から大事なことが抜け落ちているような感覚に襲われる。もしかしたら、ただ単に宇宙という規格外の世界の大きさに黄昏てしまっているだけかもしれない。そう思っていたが、親から『俺が昔この三日月島に来たことがある』と島の写真を見せられてから、この喪失感ともいえる感情が自分の中で大きくなっていったのだ。この島に来たら答えがわかるかもしれない、そういう期待を持って、俺はここを選んだ。
「そうか。見つかると良いな、その答えが」
「ああ。ゆっくり探していくよ。ありがとう」
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