7. 転校生の一大イベント(自己紹介編)

 奏さんと少し話した後、俺は再び職員室にいた。在校生が登校して、なんか見たことないやつがいたら「あれ、何こんな人いたっけ?」みたいな空気になるだろう?転校生は決まって、先生の紹介の後に登場するものなのだ。


 そしてついにその時が来た。

「実は、このクラスに転校生が一人います」


 おおお!と、教室内がざわついたのがわかる。大丈夫、完璧だ。話す内容は昨日しっかり考えてきた。こういうのは最初の挨拶で、今後のキャラが確立されると言ってもいい。これまで見てきたアニメじゃそうだったしね!まじめで好青年な印象を与えるんだ。

 一呼吸置きドアを開ける。


 ガラガラガラ


 黒板を見ると『星川紡』とフルネームが書かれていた。

 背筋を伸ばし教壇の横へ歩き、みんなのほうを向く。ふと窓側の席に目をやると、奏さんがこちらに笑顔を向けていた。


「はじめまして。本土の方から転校して来ました、星川紡です。この島のことはまだよくわからないので、いろいろと教えてもらえるとありがたいです。これからよろしくお願いします」


 まあこんなものだろう。無難・オブ・無難だ。最初に自己紹介をこりすぎて、『都会から来た気取ったやつ』なんてレッテルが張られるより断然いい。


 パチパチパチ


 クラスメイトから拍手があった。悪くない感触だ。一部の男子は、転校生が女の子じゃなくて残念がっていたが。


「じゃあ、星川くんは天月さんの隣の空いている席でお願いね」

 一番後ろの窓際に奏さんが座っており、その隣の席が空いていた。おそらくあそこが俺の席だろう。

「わかりました」

 そう答え、クラスメイトの視線を気にしつつ自分の席へ向かう。

「よろしくね、奏さん」

「うん。改めてよろしくお願いします」

 優しい笑顔でにっこりと笑ってくれた。


 うんうん。こんな美少女と隣の席だなんて、ほんと学校は素晴らしい場所だなあ。

 思わず恍惚とした表情をしてしまう。

「デレデレしちゃって・・・」


「?」

 俺の隣、奏さんとは逆側に座る女の子だろうか。髪は金髪に染めており、サードテールが特徴的で派手な雰囲気の子だ。今どきのギャルといったところか。知らんけど。

 何か言ってくれた気はするが、よく聞き取れなかった。当の本人はもう前を向いてしまっている。

 まあいい。自己紹介の緊張もほぐれ、やっとこさ一息つくことができた。

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