6. クラス委員長との出会い
この学校は一般的な学校と比べるとかなり小規模だ。各学年クラスも三つほどしかない。そのため、目的の教室に行くのにも苦労はしなかった。
「俺のクラスは1組だから一番端の教室か」
教室の前に立ち、一呼吸おいてからドアを開ける。
「失礼しま・・・す?」
女の子が一人いた。赤みがかった髪が背中まで伸び、まるでお人形さんのように整った顔。肌は張りがあり透き通るような色白で、100人中100人が美少女と答えるであろう女の子だ。この子が、先生の言っていた委員長で間違いないだろう。入った瞬間、あまりの可愛さに見とれてしまった。
「おはようございます、星川君」
その女の子は優しく、そしてどこか儚げに笑いかけ挨拶をした。
「あ、ああ。おはよう。初めまして、転校してきた星川紡です」
「っ・・・はじめまして。私はクラス委員長の天月奏です」
少し間があったような気がしたが、そう言って軽くお辞儀をしてくれた。
一瞬悲しげな表情をしたのは気のせいだろうか?ふとそんなことが頭をよぎった。
「あなたのことは空見先生から聞いています。早くクラスになじめるようフォローするから、安心してね」
にっこりと、やわらかな笑顔を向けてくれる。こんなことされたらウブな俺は勘違いしちゃうよ⁈いいの?
「ありがとう。それは心強いよ、天月さん」
「奏・・・」
「え・・・?」
彼女が何かつぶやいた気がしたが、小声でよく聞き取れなかった。
というか、そのときの仕草はもじもじして女の子って感じがしてとても可愛かった。
「奏って、呼んでくれていいよ」
「・・・」
ん?
んんん??
待て。冷静になるんだ。落ち着いて、今の状況を再確認するんだ。
・・・・・・・・・・・・。うん。
な、ななな、なんてこったーーーーーーーーーー!
これまでの人生、女の子を下の名前で呼ぶなんて一度もなかった。それこそ、そういうのはカップルになってからと思い込んでいた。それをこんなかわいい子相手にできるなんて・・・。いやホントに俺チョロいから勘違いしちゃうよいいの⁈
いけないいけない。あまりの嬉しさで妄想タイムに突入するところだった。ここは都会から来たクールな人間らしく、冷静に振舞わなければ・・・!
「コホンっ。わかったよ奏さん。じゃあ俺のことも紡って呼んでくれていいよ」
「ありがとう、紡くん。これからよろしくね」
「ああ、こちらこそよろしく」
よし、自然な流れで完璧だ。
「大まかな説明は空見先生からあったと思うけど、先生に聞きづらい事とかあったら気軽に聞いてね。あと、今日の放課後に学校の設備や部活を案内したいんだけど、紡くんの時間は大丈夫かな?」
「うん。今日は特にすることないから、助かるよ」
「うふふ、よかった。遅くならないよう、説明を頑張るね」
奏さんはおどけたように、両手を胸元でガッツポーズして見せた。
こんなにかわいい子と放課後の学校を散策とか、実質デートなのでは???いや、デートで間違いないだろう⁈
そんなバカなと思いつつ、期待に胸を膨らませている自分がいた。
「そういえばなんだけど、紡くんって、昔この島に来たことあったり・・・する?」
「ああ、昔はおじいちゃんの家がこっちにあるからって、何回か来たことあるらしいんだけど・・・。実のところ、その時の記憶が一切ないんだよね。だから、今回来るのが初めてって気分だよ」
「そ、そう・・・なんだ・・・」
なぜだろう。初めて会ったばかりのはずなのに。笑顔を向けられているはずなのに。今の彼女の表情は、どこか悲しげに感じた。
「し、仕方ないよ。小さい頃の記憶なんて、忘れちゃうもんね!あはは」
「そうだな。今は今で、また一からこの島を散策していくよ」
そう。昔の記憶がないのは引っかかるが、忘れてしまうという事は大した記憶ではないのだ。今は、新しい環境で前を向いて行けばいいさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます