3. はじめて?の出会い

「ふぃ~、長かったぁ」

 快晴の青空、澄んだ空気の中、目一杯伸びをする。

 さすがに何時間も乗り物に乗っていると、多少の酔いが来るものだ。だが、そんなことはすぐに忘れてしまうだろう。何せ今日から一人暮らし。準備しなければいけないことが山のようにある。


「とりあえず、家に行って荷物を置くか」

 今日から住む家は、うちの祖父が所有している家だ。今は本州のほうに住んでいるが、前に住んでいた家は残していたようだ。俺が小さい頃は、長期休暇のたびにそこへ遊びに行っていたらしい。そして、今回俺が島で一人暮らしをしたいと言ったところ、快く使わせてもらえることとなったのだ。


 島には全く人がいないというわけでは無いが、住んでいたところに比べるとはるかに少ない。車が横切るのも、数分に一回の頻度だ。ただその代わり、虫や猫といった動物のほうが目にする機会が多いような気がする。まあ、こういう環境じゃないとわざわざこんなド田舎に来た意味無いしな。

 ここに来た理由は一つ。


『天体観測をするためだ!!』


 そう、天体観測。

 俺は昔から宇宙や星について知ることが大好きだった。なぜか当時の記憶は全くないが、よくこの島に来て、現地の仲がいい子達と天体観測をしていたようだ。その気持ちは今も健在で、宇宙の恒星(自ら光輝く星)を写真に収める、天体写真の撮影が最近の趣味でもある。


 天体写真を撮るためには、夜空が暗いことが大前提だ。都会の方だと街明かりによる光害によってモヤがかかってしまい、満足のいく鮮やかな写真は撮れない。

 なおかつ、空気が澄んでいる、標高が高いといった好条件を備えかつ生活できる環境というのが、ここ三日月島なのだ。


 漁港からしばらく歩くと、学校が見えてきた。ここが明日から通うことになる星ヶ丘高校だろう。

 校庭では学生が数人、何かの作業をしていた。確か明日が始業式のため、その準備だろう。

 何の気なしに眺めていると、一人の女の子に目が行く。島の子にしては珍しいであろう鮮やかな金髪が似合う女の子だ。ギャルとまではいかないが、その立ち振る舞いは活発で元気っ子といったところだろうか。なんとなく陽キャの香りがする。

 すると、部外者に見られていることに気付いたのか、こちらと目が合う。どうもという感じで軽くお辞儀をしたが、帰ってきたのは予想外の反応だった。


「えっ、うそ・・・。なんであいつが・・・・・・」

 

 離れていたため聞き取れなかったが、目を見開いて驚き固まってしまった。

 うーん、見ず知らずの人間にまじまじ見られてたら気持ち悪いよな・・・。少し反省し、俺はその場から逃げるように先を急いだ。


「どうしたの?紗良ちゃん」

 赤みがかった鮮やかな髪を胸のあたりまで伸ばした女の子が、金髪の子に声をかける。

「見間違えかと思ったけど、間違いないわ。まさか、再び会うことになるなんて・・・」

「なになに?いったい何を見たの?」

「彼が・・・・・紡が帰ってきたわ」

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