第7話 クラスメイト復活

「うーん………、ここは?」

「あれ?俺達死んだんじゃなかったっけ?」

「確かバスが落ちて……それで?」

「わかんない……。」


暗闇の中で話し合う20人ほどの集団。それは快斗が自分もろとも殺害したクラスメイトだ。快斗とは違い、魂ではなく生きていた頃の身体を持っている。


「なぁ、あのクズがいなくね?」

「あ、」


その中の一人、長谷部がそう発言した。クズとは、クラスで影で呼ばれていた快斗の呼び名だ。影と言っても、普通に快斗に向かって言っていたが。


「ホントだ。」

「なんでだろ。」

「この世に必要ないってやっと神様が理解したんじゃね?」

「あいつだけ死んで俺たちは助かったのか‼ハハハ‼ざまぁないな‼」

「それな‼アハハ‼」


次第に元気が戻り始めたのか、クラスの権力者達、内田、蛯原、それに加えて藤原や、矢澤といった、スクールカーストの上の存在が騒ぎ始めた。


それにつられて、皆、悪口を言い出し、快斗の存在がどんどんクソなものに塗り替えられていった。


「おうお前ら、全員目覚めたな。」

「あ、先生‼」


酒井や、バスガイドなどもそこに合流し、快斗の悪口大会が始まった。中には、「あの野郎……」と言いながら、地面を叩いているやつもいる。


そうして、雰囲気が明るくなってきた頃、


『はぁ〜いちゅうも〜く‼こちらへ目玉を向けてくださいませ‼』

「え?」


暗闇の空間に、無邪気な声が響き渡った。ついで、


『諸君らに問おう。今、諸君らは、話に出てきていたクズ、とやらを恨んでいるか?』


今度は女性の声。高さからして、20代くらいだろう。クラスの権力者の内田は判断したのか、すこしイケメンボイスで、


「はい、全員恨んでいます。」


と暗闇に言った。その言葉に誰も反論しなかった。全員が大きく力強く頷き、ニヤニヤと笑っている。ただ一人以外は。


『そうか。ならこれは絶好の機会だ。諸君ら、聞いてくれたまえ、すぐには信じないだろうが、我と先ほど諸君らの意識をこちらに向けたものは、神だ。』

「神?」

「神って、あのGod?」

『そうだ。まぁそれは後でいい。そのクズとやらは、諸君らがいた世界とは異なる世界にいるのだ。確か快斗、とかなんとかだったな。それが今、その異世界で活動しているのだ。他の神の僚属としてな。そしてその快斗とやらはそいつを従えている神からすれば失いたくない駒だ。こちらとしては、そいつを消したいと思っている。だが、神の我々が直々に手を下すことはできん。そこで諸君らを使いたいのだ。』

「つまり?」

『諸君らに我から力を授けよう。もともと諸君らは、あっちの世界だと強いが、自分を鍛えるなんて面倒な事、諸君らはしたくないだろう?それに、そのクズに復讐をしたいはずだ。』

「確かにそうだな。」

「アイツを殺せるんでしょ?ならいいんじゃない?」

「別にいいよな?皆。」

「「「うん。」」」

「「「おう。」」」


男子と女子、全員が内田の案に賛成する。全員が殺気立ち、口元をニヤニヤと歪めながら、どんな力かと待っている。


「いいらしいです。」


内田が何もない空間に叫ぶ。神と名乗るものはフフと笑うと、


『よい。では始めよう。全員動くな。………………よし。は‼』

「うわぁ‼」

「ん⁉」



全員がほぼ同時に悲鳴を上げ、自分の体の異変に築く。筋肉が倍増し、力が増し、それに連れて殺気が増す。


『それぞれ個々の能力は、適性によって変えてある。全員同じだとつまらないだろう?』

「なんかすげー‼」

「筋肉が増えてる‼」

「きゃー‼痩せた痩せた‼」


各々の喜び方をしたあと、神と名乗るものの咳払いで全員が黙った。


『さて、早速異世界へ行ってもらおう。諸君らは、メサイアと名乗るがいい。』

「メサイア?」

「救世主?」

『そう。その団体名を名乗るのだ。あちらの世界に、その組織を用意してある。諸君らを送る場所にはその幹部がいる。あとの諸々はそのものから聞いてくれ。戦い方や、システム、なんでも答えてくれるだろう。』

「そうですか。」

『それでは行って来い。あぁ、それと、定期的に命令を下すから、それはこなしてくれよ。力を授けたのだ。それくらいはやってくれるとは思うがな。さて、…………転移。』

「「「わ⁉」」」


女性が転移と唱えると、クラスメイトと大人三人が少し宙に浮く。それらの周りに、術式の文字のようなものが出現し、青く光り、全員を飲み込んでいく。


「なんだこれ⁉」

「わぁ⁉」

「何が起こるの⁉」

『いってらっしゃ〜い‼楽しんで〜‼』


最後には、最初に喋った無邪気な声が、響き、あたりは光に包まれた。


そして、各々が目を開けると、そこは知らない明るい部屋だった。


「ど、どこだここ?」

「その、異世界ってやつじゃない?」

「ようこそ‼君たちがあの神様から力を授かったっていう子達だね‼」


クラスメイトと大人三人が動揺していると、元気な女性の声が響いた。全員の意識がそちらに向く。


「じゃあみんな‼いろいろ説明することがあるから、こっちについてきて‼」


なされるがまま、全員が自分の力の把握のために手をグーパーしながらついていく中、一人、盛大に口角を吊り上げて笑うものがいた。しかし、その笑顔に誰も気づかない。後に、誰の味方でもなくなるその人物に、全員が気付かなかった。


「いや〜みんな強そうだね‼あたしなんか指一つで負けちゃいそうだよ‼まぁいいけどね。ハハハ。みんなでそのクズってやつを倒そうね‼神様のために‼」


そう言って、皆を連れて行く短い赤茶色の髪が特徴の女性が、振り向いてクラスメイトに、大きく笑いかけた。

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