第6話

夕食は、何とか他愛の無い話をして、怒りを抑えながら接することが出来た。


今まで普通に出来ていたことが急に出来なくなるなんて。人生何があるか分からないわね…


「今日、夜の方もちろんするよな?」


とか言ってきやがった時は、殴りたくなったわ。さっきまで不倫してたくせによく言えたな……でもダメダメ。殴ってしまえば離婚する時に不利になってしまう。


右手がうづくのを必死に抑えながら、


「ごめん、今日月のものが来てて…本当にごめんなさい」

「ちっ、何だよ、ノリ悪いな。自分の体調くらい整えておけよ。」


うるさぇ、このカスが!黙らんと口を針で縫うたるぞワレェ!!


心の中で、放送出来ないような悪口を言いまくって、逃げるように、自分の部屋へ行った。

このまま、同じ空間にいることが耐えられず、いつ爆発するか分からなかったからだ。



翌日、私は有給を使って、悠人くんから昨夜紹介された弁護士事務所に行った。


日課として、私は毎日日記を書いている。そこに、勇人から今まで受けたことが詳しく書かれていた。


半分、冗談のつもりで、今日勇人にこんなことされちゃったよ〜とか、軽いノリで書いたものだったけれど、これが役に立つとわ!


自分で自分を褒めたいわ。よくやったわたし!


弁護士さん曰く、日々どんなことを受けていたのかが分かるもの(日記帳など。モラハラ、DVの証拠となる)、そして不倫しているなと第三者が見ても分かるもの(キス写真など)があると、証拠として使え、有利になるらしい。


今回でいうと、録音した音声が有効みたい。


でも、証拠はあればあるほど良いらしいし、何より、離婚で終わらせるつもりはない。相応の報いを受けて欲しい。そう考えながら、弁護士事務所を後にし、悠人君の家へ向かった。


ピンポーン


「どちら様……結衣さん⁉️」

「ちょっと悠人君の力を借りたくて…来ちゃった。入〜れ〜て〜」


「あっ、う、え……ちょっとだけ待って下さ〜い!!」



5分後………



「ど、どうぞ。ハァハァ、散らかってますけど…」

「急にごめんね。お邪魔しまーす。」


そう言って家に上がらせてもらった。悠人君の家は、インスタとかに男のおしゃれ部屋って紹介されているような部屋みたいで、格好良かった。


で、でも高そう……無粋だけど、お金のことを考えてしまう………むっ、いかんいかん。お金のことから一旦離れないと。そんなことを考えていると、


「そ、それで結衣さん。ご用件とは?」

「そうだった!あの、悠人君にも私達が離婚する時に立ち会って欲しいの。」

「お安い御用です!」


悠人君がそばにいてくれると、安心出来るし、勇人に立ち向かえる気がする。悠人君には、助けてもらってばかりで申し訳ないけど、お願いしたい。


「本当にありがとう。私の日記と、録音したものを証拠として、慰謝料を請求しようと思っているの。3日後に勇人にその事を伝えようと思ってる。だからその時は、よろしくお願いします。」


そう言って、頭を下げた。


「いえ、こちらこそ、お手伝いさせて頂き、ありがとうございます。」

「何で悠人君がお礼言ったりの…?ふふ、なんだかおかしい。」

「ははは。何か言いたくて。アハハハハ」


そう言って、2人で笑いあった。






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