第80話 辞官
南皮県の県令であった居公鋐は、州県の幕下に身を置くこと二十年、公文書の扱いに長け、献金を得ることのない年はなかった。その蓄えた私財はすでに厚く、慣例に倣って官職を得ると、もはや荷の軽い車で慣れた道を行くように、たやすいものだと思った。
ところがその任に着くと、彼は木で作られた鶏のごとくぼんやりとしてしまい、訴訟において双方が言い争っている時も、ずっと顔を真っ赤にして押し黙り、一文字も言葉を発することができなかった。上官に会った時もその立ち居振る舞いや応対は、段取りも何もなくはちゃめちゃだった。一年あまりで、ついにその能力不足によって弾劾された。解任された日のこと、夢にぼさぼさの頭で垢だらけの顔をした男が現れ、拱手し深くお辞儀をしながら言った。
「貴殿はすでに辞官なさいました。私もこちらをお暇いたします。」
霍然として驚き目覚めると、心中が明瞭になるのを感じた。彼は生活が困窮していて帰郷するすべもなかったため、再び以前の職に就いたが、ものごとの決定はきっぱりとしていて明確で、その判断も流れるかのようだった。
彼が見たものは前世からの因業であったのか。あるいは、昌黎が送りこんだ窮鬼(貧乏神)であったか。(※)
※昌黎とは唐代を代表する文人である韓愈のこと。この一文は韓愈の著した「送窮文」を踏まえたもの。
紀昀(清)
『閲微草堂筆記』巻七「如是我聞一」より
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