第42話 親孝行
鄭五は、どこの生まれの者かは知らないが、母親と妻と共に河間に流れ着き、大工をして暮らしていた。病を得て死んだが、その臨終に際し妻に言い含めた。
「俺にはもとより立錐の地すらなく、お前も針仕事は得意ではない。俺が死んだら、お袋は必ずや凍え死んでしまうに違いない。約束してくれ。俺の代わりにお袋を養ってくれる奴が居たら、お前はすぐにそいつに嫁げ。俺は死んでも恨むことはしないから。」
妻は約束の通りにし、母親はそのおかげで生きながらえた。しかし、母親への孝行をわずかでも怠ることがあると、器が割れたり竹竿が折れたりするような音が部屋の中で響いた。ある年、妻が綿の衣を縫い上げることができないでいて、母親が寒さのあまりに泣き叫ぶと、突如鐘鼓のような大きな音がして、壁がびりびりと震えるほどだった。このようにして七、八年が過ぎ、母親が死んだ後はいたって平静であった。
紀昀(清)
『閲微草堂筆記』巻五「灤陽消夏錄五」より
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