第36話 鬼囚

 毛公がまた言うことには、ある人が夜中歩いていると、一人の男と遭遇した。それは里胥(里の長)のような見た目で、鎖で囚人を拘束して、樹の下に座っていた。彼は並んで座し、しばらく休息した。囚人はずっと啜り泣いていたが、里胥はそれを鞭打っていた。彼は心中忍びなくて、横から止めるように宥めた。すると里胥は言った。


「こやつは凶悪で狡猾な悪漢どもの頭目だ。生涯で奴に弄ばれ貶められた者は、数百人では済まない。冥土の裁判官が、豚として七度生まれ変わるよう裁きを下し、私が奴を護送し転生させに行くのだ。君は何を憐れむ必要があるのだ?」


 この人が慄然として身を起こすと同時に、二人の幽鬼もまた跡形もなく消え去った。



紀昀(清)

『閲微草堂筆記』巻二「灤陽消夏錄二」より

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