第30話 投銭

 献県の書生である王相御に子どもが生まれたが、その子を抱く者がいると、空中から数十銭が投げ込まれる。知県(官名)の楊何某がこれを見に行くと、銀貨五銭が投げ込まれた。この子どもは幼くして亡くなったが、その他に変わったことはなかった。

 ある者が言った。「王は手品師に頼んで銭を運ばせ、これを利用して金儲けをしようとしたのだ。」ある者が言った。「これは狐の仕業だ。」どちらが真実かは分からない。しかし、官たるもの、このような事態に遭遇した時は、たとえ幽鬼が憑依していたとしても、これを禁止すべきで、みだりに人心を惑わせてはならない。真偽を論ずる必要はないのだ。



紀昀(清)

『閲微草堂筆記』巻八「如是我聞二」より

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