第19話 泥の子

 私が二、三歳の頃、鮮やかな色の服を着て、金の腕輪をつけた四、五人の子どもたちの姿を目にしていた。彼らは私について回って遊び、皆、私のことを弟と呼んでいた。彼らは私に対して深い親愛の情を向けてくれているようだった。私が少し大きくなった頃には、その子どもたちは見えなくなっていた。

 後になって、このことを亡父の姚安公に告げると、公はしばらくの間考え込み、はっと思いついて言った。


「お前の亡くなった母は、子供ができないことを思い悩んでいて、常々年老いた尼僧に命じて、色とりどりに染めた絹糸で神廟にある泥で出来た子どもの塑像をくくり、持って帰って来させていた。彼女はそれらを寝室に置き、それぞれに幼名を授け、毎日お菓子を与えて、子どもを育てるのと同じように扱っていた。お前の母親が死んだ後、私は人に命じて楼閣の裏の空き地に埋めさせたのだが、きっとそれに違いない。」


 父は、後々それらが妖となって化けて出ることを恐れ、掘り起こそうとしたが、すでに長い月日を経ており、どこに埋めたか分からなくなってしまっていた。


 私の亡くなった母は、張太夫人の姉であった。母の一周忌に法事が執り行われた後、夫人が昼寝をしていると、夢の中で、母が夫人を手で押しながら「三妹(三番目の妹という呼びかけ)ったら!迂闊すぎるわ!尖った刃物でどうやって子供が遊べるというのよ!」と言った。驚き起きて見れば、すぐ傍に私が居て、姚安公の佩刀を鞘から引っ張り出しているところだった。


 このことから、魂が戻って来て祭祀を受けるということが、まことであると初めて分かった。古の人々が、亡くなった人を奉じる際、生きている時と同じようにしたためであると考えられる。


紀昀(清)

『閲微草堂筆記』巻五「灤陽消夏錄五」より

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