第12話 新婚

 太常寺の呂含輝が言うことには、京城の金満家が妻を娶った。新郎新婦ともに秀麗であり、親戚の者たちは皆まるで神仙のようだと見入っていた。様子を伺えば、夫婦仲も大変睦まじいようであった。


 翌日、夜が明けたが扉が開かない。呼びかけるも応答がない。窓に穴開けてその中を覗き込むと、両人は左右で相対して首を吊っていた。


 その布団を見ればすでに情を交わした痕跡があった。召使いの女たちは口々に言った。


「昨晩すでに婚礼衣装を脱いでいるのに、なぜまた盛装して死ぬのだろうか?」


 なんと奇妙なことか!この事件はたとえ皋陶(伝説上の人物。虞舜の時代の裁判官)といえども裁けまい。


紀昀(清)

『閲微草堂筆記』巻八「如是我聞二」より

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