第10話 小花犬

 亡くなった義母の張太夫人は家で1匹の小さな花犬(ぶち柄の犬)を飼っていた。


 侍女たちはその犬が肉を盗むのを嫌がって、密かに犬を締め殺してしまった。その侍女の中の一人は柳意といった。


 彼女は、いつもその犬が自分に噛みついてくる夢を見ていて、眠りにつくと必ず寝言を言っていた。夫人はそれを知って言った。


「その犬は侍女たちが一緒に殺したのだ。なぜ柳意だけが恨まれるのか。きっと柳意も同じく肉を盗んでいたに違いない。だから犬の心を承服させることができないのだ。」


問いただすと、果たしてその通りであった。


紀昀(清)

『閲微草堂筆記』巻一「灤陽消夏錄一」より

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