第2話 海夜叉

 海には夜叉がいる。山に山魈がいるのと同じである。幽鬼でもなければ精霊でもない。それだけで独立した一種であり、人と物の怪の合いの子である。


 参知(官名)の劉石庵が言うには、とある海辺の地方で、ある者が漁師小屋を建てた。


 ある日、皆が船を漕いで海に出たところ、夜叉が小屋の中に入り込んだ。奴は彼らの酒を盗み飲み、甕をすっかり空けてしまうと、酔い潰れて寝てしまった。


 挙げ句、皆に捕らえられ、縄で縛り上げられてめった打ちにされた。霊異なぞはまるで顕れることなく、こともあろうに、ぼろぼろになって地に臥し、そのまま死んでしまったということだ。



紀昀(清)

『閲微草堂筆記』巻八「如是我聞二」より

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