第3話
「ねえ、おかあさん。ななちゃんのごはん、忘れてるよ!」
今日はまだ、おかあさんの人間の子どもが起きていますが、子猫のななちゃんは台所にいるおかあさんに言いました。
「ああ、ごめんね。すぐあげるからね」
おかあさんは、計りでご飯の量を測って、ななちゃんに渡しました。ななちゃんは子どもたち(といっても、ななちゃんのお兄ちゃんとお姉ちゃんなのですが)に、邪魔されないようにこそっと部屋の隅に運んで食べました。
「忘れないように書いておかないとね」
おかあさんは、忘れっぽいのです。忘れっぽくて、考えることが多くて、家事が進まなくて困って困って困り果てました。おかあさんはじぶんのことと、人間の子どものこと、それから家の事とおとうさんのサポート、しなければいけないこととしたいことにがんじがらめになって心が苦しくなって病院の先生に助けを求めました。今はADHDに効果のあるお薬を飲んでいます。
「おかあさん、ななちゃんお薬飲まなきゃいけないんだよね?」
「そうそう、教えてくれてありがとう」
おかあさんは、ノートに書いて、カレンダーにも書いて、スマホにもメモしてアラームをかけて、毎日しなければいけないことやしたいことを管理しています。お薬を飲み始めて、忘れることはずっと減りました。
「ななちゃんね、お薬きらいだけど、お薬の後にごほうびのオヤツがもらえるってことは覚えてるんだよ」
ななちゃんは得意げに胸を張りました。
「そうだよ。ななちゃん良い子、良い子」
おかあさんは、ななちゃんのお薬にオヤツを被せてやりました。上手にお薬を飲めたななちゃんは、のこりのオヤツを美味しそうに食べています。おかあさんは、ななちゃんのお薬をきっかけに自分のお薬のことも思い出しました。
「おかあさんも、お薬飲まなきゃね」
「おかあさんも、思い出した。えらいえらい」
ななちゃんは、おかあさんの手の甲ををぺろぺろと舐めました。おかあさんはななちゃんの頭を撫でます。
「おかあさん、次はななちゃん、おトイレだからおそうじしてね」
おかあさんは、はあい、とお返事しました。それから、ノートを見返してできたことに丸印を付けたのでした。
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