第4話 その先の地獄

 翌日学校に行けば珍しくアイツが来ていなかった。いつもは早くに来て大声で騒いでいるアイツがだ。何か、嫌な予感がした。

 昼休憩のとき、ブブッとスマホが鳴って着信の相手を見ればそこには佐藤と書かれていた。出たら駄目な気がして、でも出ないのも駄目な気がして。そんな矛盾に悩み、5コール目で電話に出ることにした。

「もしもし」

「もしもし。佐藤です」

 明らかにいつもと違う雰囲気に俺の中の何かが警鐘を鳴らす。

「お前、今どこにいる」

「言えない。ごめん。楽しかった」

「おい、おい!」

 電話は向こう側から勝手に切られ、何度繋ぎ直そうとしても繋がらない。嫌な予感が当たった気がして急いで学校を出てアイツの家に向かった。一度も行ったことがないアイツの家。研修旅行のときに書いているところを見た住所を頼りに住宅街を走っていく。

 そしてボロいアパートについて息を飲んだ。そこには、血まみれで倒れているアイツがいた。

「なんで、なんで」

 警察と救急に連絡をして、その後はあまり覚えていない。ただ、吐くほど泣いたことだけは覚えている。


 部屋の中からアイツの遺書が見つかった。親宛てでも学校宛てでもなく、俺宛のものだけが机の上に置かれていたらしい。こちらの気持ちなんか考えもせず話しかけに来るメディアから逃げて学校に入り、人のいない屋上でようやくその手紙を開けた。


☆。.:*・゜

山田へ

お前にはめっちゃ迷或かけた。ごめん。でも、もう限界だったんだ。うちの親は逆待とか平気でするし、殴られたのだって一度や二度じゃなかった。お前の家に行った時、俺の家ってやっぱり普通じゃないんだなって知って苦しくなった。お前がこの先何かをしようと思ったとき、今の俺が重荷になってしまうかもしれない。でもごめん。耐えられなかった。もっと一緒に居たかった。ごめん。

☆。.:*・゜


 震える手で封筒にしまった。涙をこらえるなんて到底無理な話で、後から後から溢れてきた。

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