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浪人たちを見送った二人が道場の方を振り向くと、そこには雪江が立っていた。
キッと唇を引き結び、
「香坂さま、それに棟田さまと
頭を下げたまま、そう言ったが、やがて顔を上げると、新次郎を睨み据えた。
「ですが、香坂さま。先ほどの言いようは、何でございますか!」
明らかに、怒っている。
「もし負けたら、道場の看板と金十両。そ、それに、
「い、いや、それは・・・」
「女は・・女は、モノではありませぬ!」
「神宮小町」の気の強さ、新次郎をはたと
だが、新次郎がああ言ったのは、その場の「呼吸」とも言うべきもので、終わりかけている剣術勝負を振り出しに戻すべく、相手を挑発したのである。
それが見事に図に当たって、再勝負に持ち込めたのだが・・・
それが、剣術が達者とはいえ世間を知らず、まして自身の
「もし、お二人が負けて、そんな事になったら・・・私、舌を噛んで・・・」
そこまで雪江が言いかけた時、新次郎がそれを遮った。
「いや、それは、ない」
「えっ」
と雪江。
「看板と十両はともかく、雪江どのが掛かっておるのだ」
新次郎が、雪江の目を正面から見つめて、言った。
「わしは負けぬ、絶対に!!」
「・・・・・・」
涼やかな眼差しで、真剣そのものの口調で言われた雪江。
婚約者がいるにも関わらず、両頬を桜色に染め、目を潤ませて絶句してしまった。
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