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カッ、カッ!!
数度、木刀を打ち合う音がして、跳び違いざまに、浪人者の剣先が大膳の
「ほう、なかなかやるな」
と、痩せ浪人。
「お主も、な」
と、大膳。
浪人者が木刀を右
大膳も、大上段に構える。
(例の、三段斬りかの? 脛斬りは使うなと言ったんじゃが)
新次郎が見つめる横で、雪江も顔を上げて二人の闘いを凝視していた。
剣士の顔だ。
一瞬の間の
カンッ!!
甲高い音で剣がぶつかり合い、弾かれた木刀を、浪人者は水平に回して大膳の胴へ、大膳は下段から浪人者の脇へ——
ゴッ!!
鈍い音がして、一瞬速く、大膳の剣が浪人者の脇へ入った。
「ぐっ」
うめき声を発して、浪人者が床に転がった。
大膳は、剣先を下に向けて、「残心」の構えだ。
「それまで、だの」
新次郎がそう言って立ち上がった。
雪江も、目を見張って、大膳を見ている。
やや小太りで、風采の上がらない彼の鋭い剣技に、胸を突かれたようであった。
「遣い手ゆえ、手加減は出来なかったが、
少し呼吸を乱しながらも、余裕の笑みで、大膳が言った。
(なるほど、三段斬りの一段を省いて、二段斬りというわけか)
新次郎は、顔見知りの道場生に目配せをして、木刀を数本、持って来させた。
そして、その内の一本を選ぶと、大膳を下がらせた。
「次は、わしが出よう。雪江どの——」
新次郎は、正座したまま見上げる雪江に、ニコリと笑って言った。
「大丈夫、心配はいらぬ!」
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