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「まあまあ、雪江どの、ここは下がっておられよ」
新次郎が
雪江は、相手の打撃こそ受けていないものの、小さく肩で息をしており、劣勢は明らかだった。
「おいおい、何を勝手に決めておる。俺はまだ、その小娘と試合中だぞ」
痩せた浪人が、抗議の声を上げた。
「そこに
「なるほど。女子供に勝って、看板をな」
「なにっ!」
相手に一理有りと見た新次郎が、軽く挑発に出ると、多少
「どうであろう、そこもとら三名と、わしら二人で勝負して、勝てば看板と十両のカネを差し上げる。これで、どうじゃな?」
「なに、十両とな?」
「さよう、如何かな?」
痩せた浪人が、背後を振り向いた。
武者窓の下で壁板に寄り掛かって胡座をかいている男たち。
一人はガッチリとした体付きで、鷲鼻男。
もう一人は、背は低めだが、武芸者にしてはかなり太っていた。
両人とも、大刀は床に置いていたが、太った方は、懐に何か呑んでいるように見えた。
その、太った浪人が言った。
「十両とは豪勢だが、お主に持ち合わせがあるのか? そうは見えんがな」
「わしにか? まあ、十文がやっとかの」
と、新次郎。
「だが、もし負けたら、ここの大師匠に掛け合って、わしが必ず十両出させよう。それで、どうじゃな?」
「きっとだな?」
「武士に、二言は無い」
雪江が、驚いたように新次郎を見たが、新次郎が目でそれを制して、
「下がっておられよ、雪江どの」
静かにそう言うと、雪江は唇を噛んで、壁際に下がろうとした。
そこへ、今度は鷲鼻の浪人から、声が掛かった。
「待て、まだ承知したとは言っておらんぞ、ほとんど、こちらの勝ちだったのだからな」
「この上、何か望みがあるのかの?」
と、新次郎。
「ふむ・・・」
鷲鼻の男は、ニヤリと笑った。
「そうさな。俺たちが勝ったら、先ほどの条件のほかに、その小娘も頂こうではないか」
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