10
「さて、わしは、もう行くでの」
新次郎は、そう言って立ち上がった。
「香坂どの、俺を斬らんのか?」
大膳が、柳の幹にもたれたまま、新次郎を見上げた。
「斬るつもりなら、最初から峰に返したりはせんよ」
「・・・俺を、許してくれるのか」
「許すも許さぬも、奥方のためにしたのであろう?」
「うむ」
「なら、それで良いではないか」
新次郎は
大膳に背を向け、永代橋の方へ歩き出した。
「待て、待ってくれ!」
背後から、大膳が呼び止めた。
「何かの?」
新次郎が、振り向いた。
「香坂どの、頼みがある」
「・・・何であろう?」
「俺と・・・友達になってくれんか」
そう言って大膳は、ペコリと頭を下げた。
「俺は、江戸に来たばかりで、一人の知り合いも居らんのだ。
斬りかかっておいてなんだが、貴公とはなぜか、
ウマが合うような気がするのだ」
ちょっと
「うむ。実はわしも、浪人に成りたてで、よくわからん事だらけでの。
お主とは、なぜだか仲良くなれそうな気がするのも、一緒だ」
そう言って新次郎は、屈託のない顔で笑うのだった。
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