7
「ほう、貴公、居合を遣うか」
男が、口角を僅かに上げて、言った。
自身の上段からの斬り落としに、絶対の自信を持っているかのようだ。
新次郎は刀の
右手の甲を
テレビ時代劇のように、最初から柄を握り締めたりはしない。
本物の抜刀術は、刀を抜く瞬間に掌を反転させて柄を握るのだ。
男の身体全体から、闘気が膨れ上がった。
(真向唐竹割りで来るか・・いや、違う!)
斬り合う、まさにその寸前、新次郎は男の闘気が自分の足元に
流れ込んでいるのを、痺れるような感覚で悟った。
(こやつ、「
だが、もう構え直す暇はなかった。
と、その時、背後から物音がした。
武家屋敷の白壁の潜り戸が開き、奉公人とおぼしき男が、
顔を出したのだ。
その物音に触発されたように、上段に構えた男の剣が、
同時に、新次郎の腰から、銀色の光が伸びる。
ギインッ!!
二人の刀身が、互いを弾き合った。
男の剣は大きく後ろに流されたように見えたが、
(当たりが弱い!)
新次郎が思う間もなく、男の姿が、新次郎の視界から消えた。
新次郎は、躊躇なく、跳躍した。
その瞬間、新次郎の足元を、烈風が襲った。
男が瞬時に身を
僅かでも新次郎の跳躍が遅れていれば、新次郎の両脛は
切断されていただろう。
宙に飛び上がった新次郎は、落下の勢いに任せて、
男の首筋目掛けて、剣を振り下ろす。
が、驚いたことに、男は脛切りが失敗した剣先を、
流れるように斬り上げてきた。
上段から脛斬り、さらに斬り上げと、
見事なまでの三段攻撃である。
新次郎の剣が、男の首筋へ。
男の剣が、新次郎の胴へ。
「ゴッ!!」
鈍い音が響き、ひと呼吸おいて、人の倒れる音がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます