6
「香坂新次郎殿か?」
背後から、野太い声がした。
高ぶりのない、落ち着いた
新次郎は、ゆっくりと振り返った。
「そうだが。何か御用かの?」
「悪いが、その首、貰い受ける」
丸顔に、ぼさぼさに伸びた
一見して尾羽打ち枯らした浪人体である。
だが、眼光は鋭かった。
「ほう、このわしの首を、か」
「そうだ」
「誰かに、頼まれたかの?」
「貴殿に、恨みはないが、まあ、諦めてくれ」
新次郎は、顔をしかめた。
「まあ、頼み人の想像はつくが、いくらで頼まれた?」
「十両だ」
「なに、十両とな?」
「そうだ」
「ちと、安すぎんかの? も少し、高くても・・・」」
「それは、頼み人に、言ってくれ」
男は、静かに刀を抜いた。
「安いが、俺にはどうしても必要な金なのだ」
そう言うと、剣を高々と大上段に構えた。
通常の上段よりさらに高い、天を突くような構えだった。
(これは・・・柳生流の
柳生新陰流に、「上段雷刀」という構えがあるという。
新陰流では、構えとは言わずに
三代目宗家・柳生兵庫が考案したという雷刀は、
その名の通り、天から落ちる
敵の頭蓋を打ち砕く必殺の位であった。
(いや、雷刀とは、ちょっと違うな・・・)
新次郎は、抜刀せずに、腰を深めに落とした。
いわゆる、
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